川本梅花 フットボールタクティクス

【サッカー観戦術/ゲームの流れ】「コンパクトにする」はいつからはじまったのか?

【サッカー観戦術/ゲームの流れ】

「コンパクトにする」はいつからはじまったのか?

ピッチの中にいる選手全体を「コンパクト」にして戦うやり方は、いまでは当たり前になっています。たとえば、前線のFWと最終ラインのDFの距離を間延びさせないで、「コンパクト」にして戦うやり方のことを指します。FWとDFの距離が開いてしまうと、プレスが効かなくなって相手の中盤の選手がフリーでボールを持てる状況になります。前を向いてフリーでボールを持たれたら、パスなりドリブルなどの選択肢が増えて自由にボールを操れるので、ピンチを招いてしまいます。したがって、「コンパクト」にして戦うことが必要とされます。「コンパクト」という概念は、いつから出てきたのでしょうか?

「フォーメーション」と「システム」は別な意味内容を持っているという話をこのコラムでは発言してきました。その中で「システム」は、「戦い方」だと述べました。つまり、「チームのプレースタイル」と言い換えることができます。チームのプレースタイルに革命をもたらした時期があります。それは、1980年代に起こりました。それまでは、「マンツーマン」で守備をしていたのです。だから、ボールを持った1人の選手に相手の守備をする1人の選手が、どこまでも付いて行く守備をします。

イタリアセリエAのACミランでアリゴ サッキ監督が指揮を執っていた時に、「ゾーンディフェンス」と「プレッシング」を組み合わせた守備戦術を作り出したのです。「マンツーマンディフェンス」は「人」に対しての守備でしたので、ピッチ全体が守備範囲でした。しかし、「ゾーンディフェンス」は「人」ではなく「場所」が重要視されるので、「コンパクト」という概念が必要とされたのです。

1人の選手が「守る場所」を決められ、どこまで守るのかという「守備範囲」を限定されたので、全体が「コンパクト」になったのです。FWとDFの距離は40メートルを保つのが理想的だと考えるようになりました。その40メートルの中でプレッシングとカバーリングを行うことで、攻撃側に「時間を制限」させて、「フリースペース」を作らせないようになったのです。

このことは、サッカー史上「システムの革命」と呼ぶことができます。

〈了〉

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