川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】県民共済 Presents #AOMORIスーパーカップ @AOMORISUPERCUP-3チームによる45分の総当たり戦を制したのは?- #ラインメール青森 #ヴァンラーレ八戸 #ブランデュー弘前 【コラム】

【コラム】県民共済 Presents AOMORIスーパーカップ2021-3チームによる45分の総当たり戦を制したのは?-

2021年8月14日(土)、プライフーズスタジアムにおいて3つのクラブによる総当たり戦が行われた。3つのクラブとは、明治安田生命J3リーグのヴァンラーレ八戸FC、JFL(日本フットボールリーグ)のラインメール青森FC、東北社会人サッカーリーグ1部のブランデュー弘前FCである。こうした企画が実現したことは青森県のサッカー界にとって、とても大きなことだ。実現に向けて助力された1人に、八戸の取締役事業統括本部長・菅原康平氏がいる。


試合は45分1本勝負で行われた。第1試合は八戸 1-1 弘前、第2試合は青森 1-0 弘前、第3試合は八戸 0-0 青森の順で進行された。

第1試合:八戸 1-1 弘前

八戸は「3-6-1」を採用した。これは八戸の基本フォーメーションである。一方の弘前は、「4-4-2」のフォーメーションで構える。先制点は21分、弘前MF小野 敬輔がゴール右側にシュートを決めた。八戸のバイタルエリア付近でボールを受けたMF浅利 航大が右サイドを走るFW前原 大樹にミドルパスを出す。前原は、ドリブルでサイドを駆け上がりペナルティエリア中央に走り込む小野にボールを送る。小野は落ち着いてゴール右隅にシュートを打ち込む。ここでは、小野のランニングが注目される。浅利が前原にボールを出すとすぐにペナルティエリア目掛けて疾走する。八戸のDFが近寄ってくる前に落ち着いてシュートを決めた。

32分になって八戸が追いつく。右サイドにいたDF廣瀬 智行がFW岡 佳樹にクサビのパスを入れる。岡は自分の左横に入ってきたMF丸岡 悟にボールを渡す。丸岡は、左足を振り抜いてゴールを決めた。このシーンには、ある出来事が関係している。試合開始からポストプレーをする岡に、弘前のセンターバック(CB)は激しく当たりに行っていた。したがって、岡にボールが入らず、こぼれ球の多くが弘前に支配されていた。丸岡のゴールが決まる前、30分にこんなプレーがあった。丸岡からMF丹羽 一陽にパスが出された後、岡が弘前のCBから2、3歩前に出て両手を上げてボールを要求する。その時、丹羽は岡にパスを出さなかった。岡は、背後からの弘前CBによる圧力を避けるために、相手を背負ってボールを受けるのではなく、タイミングよく前進して相手のプレッシャーを外していた。廣瀬は、岡のポジショニングを見てパスを出したのだろう。廣瀬の判断が同点弾をもたらしたと言ってもいい。

第2試合:青森 1-0 弘前

第2試合は、「4-4-2」のミラーゲームとなった。左サイドでボールを受けたFW坂東 篤がゴールラインまで侵入して、FW津久井 匠海にクロスを上げる。津久井は弘前DF陣よりも頭ひとつ高く構えて決勝点を決める。センターハーフ(CH)の差波 優人を中心にボールを回す青森。青森は公式戦の控え組が中心だったが、次の八戸戦と比較すれば分かることだが、誰がピッチに出ても戦い方は変わっていない。これは監督の意図するサッカーを、チーム全員が共有していることの証しだ。弘前は、第1試合の八戸戦が公式戦のメンバー構成だったため、異なるメンバーで臨んだ青森戦は組織的に守れていない場面が散見された。

第3試合:青森 0-0 八戸

第3試合は青森対八戸。福島ユナイテッドFC(J3)から完全移籍で復帰した八戸DF佐藤 和樹が16分に見せた大きなサイドチェンジは、佐藤の特徴を表すキックでチームにとっても大きな武器になる。FW黒石 貴哉が水戸ホーリーホック(J2)に移籍したため、佐藤の活躍が期待される。また、この大会では出場していないが、佐藤と同じように完全移籍でガイナーレ鳥取から復帰するMF小牧 成亘のプレーも楽しみの1つだ。

現時点で八戸よりも青森の方が、チームの完成度が高いように見えた。それは当然のことで、JFLで試合を行っている青森と、Jリーグの試合が中断されている八戸では、選手のコンディションも違うのだろう。青森はMF後藤 京介が中心のチームと言える。八戸が前澤 甲気の1トップだったため、青森は2人のCBで守備をして、後藤が左サイドバック(SB)とCBの間に降りて3バックを作ることをしなかった。第2試合の弘前戦では、2トップの弘前に対して、差波がディフェンスラインに降りて3バックになってビルドアップを始めていた。決定的なチャンスは青森の方があった。お互いのGKのファインセーブに救われる場面が何度かあった。48分のシーンでは、青森GK廣末 陸の好プレーが八戸の得点を阻んだ。どのチームにも、それぞれ課題が見えた貴重な機会だった。

初代チャンピオンは青森となった。願わくは毎年この大会を行ってほしいし、行われることを期待している。すばらしい企画だし、大会開催を実現した関係者には頭が下がる思いである。

川本梅花

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