川本梅花 フットボールタクティクス

【無料記事】敗戦で突きつけられた課題-「個」の能力で臨んだ日本代表と「組織」の能力で挑んだオマーン代表-【試合分析】

【試合分析】オマーン戦の敗戦で突きつけられた課題

「個」の能力で臨んだ日本代表と「組織」の能力で挑んだオマーン代表の戦いは、0-1で日本の完敗に終わりました。5年前のアジア最終予選初戦・アラブ首長国連邦(UAE)代表戦[1●2]を思い出させます。「個」の能力を見れば、日本の方が上です。オマーンは、特別秀でた選手こそいないものの、11人のレベルがそれなりに高い選手たちの集団でした。それなりのレベルの選手が集まって組織的に戦えば、日本は勝てないという事実を突きつけられた形です。こんな言い方が適切なのか分かりませんが、通常通りに戦って敗れてしまったと言えます。

「個」の能力で臨んだ日本代表と「組織」の能力で挑んだオマーン代表

オマーンが「組織」として戦っていたことは、すぐに分かります。例えばCKの場面。攻撃時は、ゴール前で選手を密集させるやり方やゴールから離れてペナルティエリアの先端からスタートしてゴールを狙うやり方など、いくつものパターンが見られました。守備時はマンツーマンディフェンスで誰が誰に「付く」か、はっきりさせています。

オマーンのシステムは、「4-4-2」のダイヤモンド型を選択しています。自陣に下がってペナルティエリア内で守備をする時には、ダイヤモンドの底にいるセンターハーフ(CH)が最終ラインに入ってきて5バックを敷いて守ります。自陣近くでボールを奪ったなら、2トップにボールを送って日本の2センターバック(CB)のどちらかと競わせます。競り合いに勝ってボールが日本の裏に抜ければFWが走ります。日本にとって何度か危ない場面がありました。競り合いでボールが日本側に落ちたなら、そのルーズボールにオマーンのダイヤモンドの先端にいる選手がセカンドボールを拾います。

「4-4-2」のオマーンは、サイドを捨ててもいいと考えて、中央を固めて守備をします。左サイドの原口 元気選手がボールを持って駆け上がろうとする時に、オマーンの選手は、原口選手に食いつた守備を選択せず、味方がスライドして寄せてくるまでつっかけませんでした。

こうしたやり方をオマーンは90分休むことなく通していました。このような戦い方を「組織」と呼ばずして、なんと呼べばいいのでしょうか。「組織」的な戦い方そのものです。11人の選手全員が同じ方向を向いて戦っていました。それに比べて、日本の選手たちは、選手全員が同じ方向を向いてはいませんでした。同じ方向を向くようにマネジメントすることは、監督の仕事の1つです。

以前にも記しましたが、日本人監督の限界が森保一監督からも見受けられました。

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オマーン戦後、吉田 麻也選手の語った内容が現状の全てを物語っています。

「移動があって、選手も国内組と海外組で分かれているし、正直、ほとんど話す機会がない状況だった。でも、日本から出れば多少緩和されると思うので、移動の時も含めて話していかないと。それは戦術だけじゃなくて、チーム作りとか、いろんなことを話さないといけない」

「どうやって攻撃するのか?」「どうやって守備をするのか?」「どうやって戦うのか?」の基本的で重要な点を、選手たちに任せている。確かに、準備期間がほとんどない代表チームに、監督が自分の考えを落とし込むことは難しいでしょう。しかし「やれることがない」ことはないはずです。

もちろん敗戦は監督だけの責任ではありません。実際にピッチでプレーする選手にも課せられます。しかし一部の選手に舵取り役を託したチームが、FIFAワールドカップ本戦でベスト16を超えられるとは思いません。そこに問題があるのです。

こうした状況でも形に現れる対策を取れる力量のある指導者が必要とされていると、あらためて思わされた試合でした。現地時間9月7日にカタールで行われる次戦・中国代表戦がどのような結果になるか分かりませんが、いまのスタッフのままだと「通常通り戦って負ける」可能性がないとは言えません。3敗すれば、本大会出場のチャンスはほぼなくなるアジア最終予選。日本サッカー協会は早期にリスクマネジメントを図るべきでしょう。

川本梅花

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