川本梅花 フットボールタクティクス

【コラム】中村憲剛は浦和レッズのサッカーをこのように語った【無料記事】「footballista J」(2021年8月増刊号)

【コラム】中村憲剛は浦和レッズのサッカーをこのように語った「footballista J」(2021年8月増刊号)

海外サッカー情報誌の「フットボリスタ」が、Jリーグに特化した雑誌を作りました。雑誌の構成は、次のようになっています。

  • 第1章「川崎フロンターレを超えていけ」
  • 第2章「Jの育成現場」
  • 第3章「日本サッカーと世界のサッカーは別物か?」

第1章では、サッカー解説者として注目を浴びている中村 憲剛氏のロングインタビューが記載されています。中村氏の発言の中で、興味深い内容をピックアップしていきます。この増刊号自体、興味深い内容が載せられていますので、購読する価値があります。中村氏は「サッカーの言語化」について話しています。

「ポジショナルプレー、5レーン、ハーフスペース、即時奪回、ニアゾーン、中間ポジション……。(中略)サッカーの新しい言葉がここ数年でどんどん出てきていますよね。例えば、ハーフスペースでボールを受けるプレーにしても昔からやっている選手はやっていたんです。(中略)相手にとってつかまえづらい、ファジーな場所でボールをもらうことは、僕も感覚的にやっていたけれども、具体的な言葉がなかったから伝えづらかった」

「サッカーの言語化」とは、「抽象的表現」を「具体的表現」に変える言語操作を指します。例えば、ポジショナルプレーに従って5レーンで味方と重ならないようなポジショニングをしていることを「気の利いたプレー」と言うのか、「適切な場所に立っていた」と言うのでは、伝わり方が全く違います。中村氏の「具体的な言葉がなかったから伝えづらかった」という発言はとても重要です。抽象的な言葉しかなかったため、チームメイトと共通認識を作ることが難しかったと言っているのです。

中村氏は、浦和レッズのリカルド ロドリゲス監督についても言及します。徳島ヴォルティス時代から彼のサッカーを注目していたそうです。

「立ち位置を大事にするチームが増えているなと。例えば、浦和レッズはリカルド ロドリゲス監督になってから明らかにサッカーが変わっています。(中略)3バックと4バックを試合中に使い分ける、いわゆる可変システムをしています。ボールを持っている時とボールを持っていない時で立ち位置を変えて、相手を動かしていくというサッカー。浦和に来て数カ月であそこまで落とし込んでいるのはさすがだと思います」

かつて浦和は、現在北海道コンサドーレ札幌を率いるミハイロ ペトロヴィッチ監督が指揮していた時にも可変システムを採用していました。中村氏は、ミシャ監督時代との違いも指摘します。

「ミシャ監督の場合はボールの動かし方などのはかなりオートマチックというか、自分のパターンを持っている感じでしたが、リカルド ロドリゲス監督の方がパターンを作るというよりも個人戦術眼を伸ばそうとしているのかなと感じます。(中略)基本的には幅を取るのはウイングの役割になっています。サイドの高い位置にポジションを取って、インサイドの選手と連動した攻撃を仕掛けていきます」

中村氏は、なぜ幅を取ろうとするのかに答えます。

「最終ラインの選手を“ピン止め”、つまり固定したいからです。高い位置に相手がいれば、そこに守備側はマークにつかないといけません。自分たちで相手を動かすことで、再現性のあるプレーがしやすくなります」

再現性とは「特定の条件、あるいは特定の手順で、同じ事象を起こせる」という意味です。ウイングでもサイドバックでもいいのですが、その選手が高い位置を取って攻撃をすると、相手は攻撃するために高い位置を取れず、守備に回ることになります。ウイングあるいはサイドバックが誰であっても、あるいは、どの時間帯であっても同じことができる。これが再現性のあるプレーですが、自分たちが相手をコントロールしている状況であれば、再現性のあるプレーがより容易になる。これがミシャ監督とリカルド ロドリゲス監督の違いだと解説しているのです。

最後に中村氏は、どうやって見たら、Jリーグの面白さが広がるかを述べます。

「僕はサッカーは“陣取り合戦”のようなものだと思っています。11対11でやっている中で、どうやって人を効果的に配置できるのか、どうすれば相手が最も嫌がるのかを考えていく。そういう視点でJリーグを見てもらえると、より面白くなるんじゃないかと思います」

筆者が抜粋した箇所以外にも興味深い中村憲剛氏の発言が載せられています。ぜひ購読をしてみてください。

川本梅花

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