川本梅花 フットボールタクティクス

【レビュー】水戸は秋田の先制点を防げたか?【無料記事】J2第29節 #水戸ホーリーホック 0-3 #ブラウブリッツ秋田

水戸に逆転のチャンスはあったのか?

水戸に逆転のチャンスがあったのか。その答えも「あった」です。具体的には18分と31分の場面が挙げられます。

18分、FW安藤 瑞季が右サイドの敵陣深くからバイタルエリア内にマイナス方向からのパスを送ると、右SB村田 航一が右足を合わせてシュートを放ちますが、ボールは枠の左に外れてしまいます。

31分、右サイドにいたFW安藤から左サイドのゴールライン近くまで進入している大崎に大きくボールが振られます。大崎はマイナス方向からグラウンダーのパスをペナルティエリアにいるSH奥田 晃也に送ります。フリーでもらった奥田は、シュートを決められませんでした。

この両方のチャンスには、共通した点があります。パスを出した選手の位置とシュートを打った選手の位置です。パッサー(大崎)は、サイドスペースのゴールライン付近からマイナスの方向にパスを出し、シューター(村田・奥田)はハーフスペースに進入しています。村田の場合、後方からインナーラップしてペナルティエリアのハーフスペースに入りました。

秋田はセンタースペースを固めて守っているものの、サイドのゴールラインまでボールを運ばれたら、誰かがペナルティエリア外に出てケアしなければなりません。結果、ペナルティエリア内から1人、釣りだされることになります。またマイナス方向からパスだと、DFはマークする選手とボールを同時に視界へ入れられず、守備が難しくなります。さらにセンタースペースよりハーフスペースに入ってこられたら、ボールを追いかけたDFによる対応も難しくなります。

左サイドでゴールラインまでボールを運ばれた場合、左CBの斜め右の肩口はブラインドとなる。そのためハーフスペースに入ってきた村田も奥田も、フリーでシュートを打てたのです。

これは秋葉監督に聞いてみないと分からないのですが、トレーニングでハーフスペースを攻略して攻撃するやり方を反復していたのではないでしょうか。おそらく秋葉監督がやりたかったことは、ピッチの中ではできたと思います。しかし選手がフリーであってもボールをゴールに入れられなかった。ギリギリのところで得点を決めたり守り切ったりできないと、試合で勝ったり負けたりの繰り返しになって、上位へ行くことが難しくなります。ほんの小さな差ですが、埋めようとしてもなかなか埋められないことなのでしょう。

後半に入って一気に選手を3人替えするなど、ホームでの勝利に執着している姿は十分に伝わりました。やっているサッカーも「モダン」と呼べる要素がたくさんありました。しかし、ここまでチームを積み上げても突き抜けるように勝てないのは、選手の移籍や入れ替えなどで生じた「質」のバランスの問題もあるのでしょうが、監督のマネジメント力の限界でもあるのかもしれない、と思わせた一戦でした。

川本梅花

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