川本梅花 フットボールタクティクス

【連載】吉田 謙(ブラウブリッツ秋田監督)【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

【1日1回読むだけで身につくサッカーの見方の基礎知識】

吉田 謙の談話

どんな経験も、その意味を決めるのは自分たちだと思います。しっかり振り返って、自分たちの糧となって血や肉となる。大切なものにしたいと思います。

Jリーグのクラブの中で、今、最も監督会見での発言が話題になっているのはブラウブリッツ秋田を指揮する吉田謙監督(1970年3月1日生)の談話です。上記の発言は、J2リーグ第24節の松本山雅FCとの対戦の後の監督会見での話です。試合は、4点を先取された秋田が、85分に武 颯の1点で一矢を報いての大敗でした。会見で、記者が「今季最多の4失点をどのように受け止めているか」と質問します。それに対する吉田監督の返答が、上記の談話になりました。

吉田監督は、読売サッカークラブ出身で、ヴァンフォーレ甲府(1994-96年)に所属して1998年に現役を引退します。その後アスルクラロ沼津に指導者として在籍して、2015年からトップチームの監督として2019年まで務めます。2020年から秋田の監督に就任します。

監督会見の出だしの文句は、秋田県民やクラブサポーターへの感謝からはじまります。

秋田の皆さま、選手の気持ちを後押ししていただき、本当にありがとうございます。

必ず、このような秋田という地域に対しての言及があります。この談話は、5月19日に行われた第15節のレノファ山口FC戦(1-1)での監督会見です。山口戦での会見は、秀逸な談話の中に僕たちを誘ってくれました。記者が以下のような質問をします。

勝点1という結果について。

吉田監督の返答が、次のような言葉になって戻ってきます。

試練はありましたけども、そこを乗り越えようとしたことは一歩前進、勝ち点1。
チャンスを掴みきる、もぎ取る、その力をチーム全員でさらにつけて進歩していきたい。
進歩とは反省と努力の厳しさに正比例すると思います。

「進歩とは反省と努力の厳しさに正比例すると思います」。この意味内容を解説すると、反省がXで努力の厳しさがYだとした場合、Xの値が正だとすると、Yの値も正になります。またXの値が負だとすれば、Yの値も負になります。つまり、X反省の値が正になれば、Y努力の厳しさの値も正になります。つまり、反省が高まれば努力の厳しさも同じ比率で高まっていく。したがって「進歩」が現れると述べているのです。

これらの発言と同様に以下の談話が挙げられます。

  • 「球際」ではなく「魂際」。
  • 礼儀正しさは「最高の攻撃力」。 挨拶は先手必勝。
  • 取られたら他人に頼らず、地の果てまで追いかけろ。
  • かっこいい横パスやドリブルはいらない。前に刺せ!
  • 寄せる距離は仲間を裏切らない。
  • 運命が決まるのは決心をした時だと思います。
  • 課題は宝。
  • くじけない、あきらめない、郷土愛!秋田のために戦う。
  • 心のスタミナは切れることはありません。
  • 走り抜く、水が出るまで井戸を掘る。
  • ピラミッドは頂上からつくられない。
  • 信念は理屈を覆す。
  • チャンスは貯蓄できない。
  • 大波のごとくゴールになだれ込む。
  • 足りないものは「気持ち1個分」。
  • 根気!ひたむき!強気!前向き!
  • 奪いに行くこと躊躇しない。それよりも挑戦し思い切りプレーしたほうがいい。知性を上回るのは本能。獲物を捕らえる本能こそ、最高の知性です。
  • 3歩前進、2歩反省、勝点1。
  • 目の前の壁が素晴らしい扉になることもある。
  • 磁石は鉄を引きつける、選手の気持ちは勝利を引きつける。
  • 「ロケットアタック」(守備の戦術)、「魔物を入れるな」。
  • 心の中にあるものをグランドで全て出そう。
  • 確信を勝利に直結させる。
  • 解釈は無限ですので、サッカーに正解はございません。ゴールを入れたものが勝つ。

最後に挙げた「ピラミッドは頂上から作れない」は、同じ山口戦での談話です。基礎や基本を作らないとならない、と言うメッセージが含まれた言葉です。

川本梅花

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