川本梅花 フットボールタクティクス

【レビュー】後半の選手交代から崩れたバランス【無料記事】J3第22節 #ヴァンラーレ八戸 0-5 #ロアッソ熊本

【レビュー】後半の選手交代から崩れたバランス

明治安田生命J3リーグ第22節 ヴァンラーレ八戸 0-5 ロアッソ熊本

目次

狙い通りの不協和音も…
後半の選手交代から崩れたバランス

明治安田生命J3リーグ第22節、ヴァンラーレ八戸対ロアッソ熊本が10月10日にプライフーズスタジアムで行われた。八戸は前節(J3第19節)カターレ富山戦で0-1の黒星を喫し、7勝5分け7敗(勝点26)の9位。熊本は11勝6分け2敗(勝点39)の首位で、前節はMYFC藤枝に3-2の勝利を収めている。両チームのフォーメーションは予想通り。八戸は前節・富山戦に続いてミラーゲームを選び、いつもの「3-6-1」ではなく熊本の「3-5-2」に合わせた。


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狙い通りの不協和音も…

熊本は最終ラインを高く設定。ハーフウェーラインでDFがボールを回し、ボールポゼッションしながらゴールを目指す。プレビューのおさらいとなるが、ボールポゼッションをしながらゴールに向かうやり方では、以下の3つが大切になる。

  1. 選手間の距離
  2. パスを出すタイミング
  3. パスの精度

「選手間の距離」とは、選手同士が離れすぎないこと。選手同士が離れれば離れるほどパスの精度は低くなる。次の「パスを出すタイミング」は、タイミングがズレるとミスが生じる。だから、1タッチや2タッチでボールを回す必要がある。最後の「パスの精度」は、正確性に加え、パスのスピードも重要となる。

ただし、この3つを継続することは難しく、試合中いずれかのタイミングで不協和音が生じることになる。そのため守備側のチームは、相手に7割以上ボールを支配されたとしても、この不協和音を狙えば勝利を収めることが可能となる。プレビューではCHとCB、熊本のSW菅田 真啓とCH河原 創がボールを持ってビルドアップする時にボール奪取を狙えば、不協和音の生じる確率が上がると指摘した。

その不協和音は36分に訪れる。ボールを受け取った菅田は最初、右SP黒木 晃平にパスを出そうとする。しかし「パスを出すタイミング」を逸し、ボールを3タッチして右足に置き換える。この時、八戸FW岡 佳樹がボールを奪って熊本のゴールに迫る。しかし岡のシュートは全速力で追いつきカバーに入った黒木の足に当たり、GK佐藤 優也にキャッチされる。この試合、八戸にとって最大のチャンスだった。

FWの得点力不足は、八戸が低迷している原因の1つだ。岡は17試合に出場して1得点で、FW上形 洋介も18試合に出場して4得点にとどまっている。

引いて守る戦い方を選択する八戸は、そもそも得点のチャンスが少ない。1試合に10本以上、サイドからクロスを上げるといった戦い方はしておらず、得点チャンスは1試合に1~2回。FWには過酷な条件と言える。しかし数少ないチャンスを決め切らなければ、チームが浮上することはない。前節・富山戦でも試合終了間際、丸岡 悟からのマイナスのクロスを、フリーの上形が外す場面があった。FWには奮起が求められる。

後半の選手交代から崩れたバランス

八戸は右WB相田 勇樹が起点となり、攻撃を活性化させていた。対する熊本は、トップ下のFWターレスを相田とマッチアップさせる。相田は高い位置を取るターレスをケアする必要が生じ、前線に駆け上がる回数を減らしていく。そこで八戸は左サイドにボールを配給。左WB丹羽 一陽が熊本SBの裏に出されたパスに走り込み、クロスを上げる場面などを見せた。丹羽は自分の武器、得意のドリブルでもっとチャレンジしてもいいだろう。

0-0で迎えたハーフタイム。前半は辛うじて熊本の攻撃をしのいでいた八戸だったが、後半開始から選手交代を行う。DF廣瀬 智行→DF赤松 秀哉、MF佐藤 和樹→MF丸岡 悟の2枚替えに「クズさん(葛野 昌弘監督)は相当焦っているな」と感じた。

廣瀬は26分にイエローカードをもらっていたため、リスク回避として交代させたのだろう。佐藤はIHとしての働きに納得しなかったのかもしれない。監督から直接話を聞いていないため、これらはあくまでも筆者の想像だが、いずれにせよ後半は選手の連係がうまく行かず、熊本のプレッシャーに屈することとなる。後半だけで5失点。このスコアはそのまま八戸と熊本の力の差だと言える。

打開策はどこにあるのか。やはり選手選考の見直しだろう。DFの板倉 洸、伊勢 渉、CHとして前田 柊、原山 海里、FWの秋吉 泰佑、野瀬 龍世を先発起用する手はどうか。もちろんコンディションやチーム事情を考慮する必要はあるものの、停滞を打破するため劇薬が必要な時もある。その時は「いま」ではないか。そのほかシステムを4バックに変更する方法もあるが、在籍する選手の適正ポジションを考えれば最適解。選手を大幅に入れ替える以外に、チームを立て直すことは困難に見える。

川本梅花

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