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【試合分析】#青木翔大 の先制点…その過程を分析【無料記事】J2第33節 #水戸ホーリーホック 2-1 #ザスパクサツ群馬

【試合分析】青木翔大 の先制点…その過程を分析

目次

前節・J2第32節終了時点の順位
青木翔大の先制点
思い切りの良い松崎快のプレー

明治安田生命J2リーグ第33節 水戸ホーリーホック 2-1 ザスパクサツ群馬

前節・J2第32節終了時点の順位

明治安田生命J2リーグ第33節、水戸ホーリーホック対ザスパクサツ群馬が10月10日にケーズデンキスタジアム水戸で行われた。水戸は前節・SC相模原戦で後半アディショナルタイムに失点を喫し、4-4の引き分け。J2第32節終了時点の順位は勝点45(13勝6分け13敗)で9位となっている。一方の群馬は前節・ギラヴァンツ北九州戦、後半アディショナルタイムに追いついて2-2。同順位は勝点33(8勝9分け15敗)で16位となっている。降格圏の19位は勝点31。群馬は残留争いのさなかにある。

青木翔大の先制点

両チームのフォーメーションは、「4-4-2」のミラーゲームとなった。


省略記号一覧

対戦する両チームが同じシステムを採用する場合、攻撃側は意図的にミスマッチを演出しなければならない。こうした生じた“ズレ”から生まれたのが3分、群馬FW青木 翔大の得点だった。

2トップにすることで守備時、前線から相手ディフェンスへプレッシャーをかけやすい。これが「4-4-2」のメリットの1つだ。2トップの配置は縦か横の2択となるが、群馬が採用したのは縦並び。青木をトップに、大前 元紀を少し下りめの位置に配した。この結果、ミスマッチが生じる。青木は水戸の両CB、鈴木 喜丈とタビナス ジェファーソンの間にポジショニング。2対2のはずが2対1となったことで、水戸の守備陣は困惑する。こうして青木は、鈴木とタビナスの間に立ってゴールに身体を向けた。

「目線」と「立ち位置」はFW、とりわけストライカーにとって重要なポイントとなる。目線とは、ゴールを向いてプレーすること。たとえ、相手DFを背にしてボールを受けたとしても、反転してゴールに身体を向けてゴールと対面しなければならない。この結果、DFは常にボールを見る必要があるため、ボールが蹴られるまで半身での対応を余儀なくされる。もし一瞬でも目測を誤れば、DFは背後を取られることとなる。これはFWにとって有利な「立ち位置」だ。

ただ青木にボールが渡る前にも、水戸にはまずい対応があった。それは群馬の右SB藤井 悠太がフリーで前を向き、ロングフィードを蹴れたことだ。水戸の左SH森 勇人は、群馬の右SH田中 稔也を「見る」ポジショニングをしているため、藤井には、水戸FW中山 仁斗がもっと寄せてプレッシャーをかける必要があった。しかし中山仁は右斜め後ろにいる群馬CH岩上 祐三も視界に入っており、藤井にボールが渡るまで動くという判断は難しい。そのため、中山仁が藤井にプレッシャーをかけるには、中山仁の後ろにいて、より状況を把握している水戸CH新里 涼が「行け!」とコーチングしなければならなかったのだ。

藤井が右サイドでボールを持ち、ロングボールを蹴る体勢に入った瞬間、青木はタビナスの背後に立ち位置を取る。この時タビナスはボールを見るため、視界から青木が消える。両者とも蹴られたボールに反応するが、タビナスの背後でゴールを向いていた青木の方が先に、ボールに触れてゴールを決める。

DFがボールを注視したら、FWはDFの背後に入る。この一連の動きは、FWにとって普遍的なやり方である。このわずかな駆け引きが失点につながる。若いタビナスは経験を通じ、FWの目線や立ち位置を熟知していくしかない。

思い切りの良い松崎快のプレー

1-1で迎えた84分、水戸CB鈴木がハーフウェーライン近くから松崎 快にスルーパスを出す。途中出場の松崎はFWで起用されており、ボールを受けるとドリブルでペナルティエリアに進入して、そのままゴールを決める。この時間帯、前がかりになっていた群馬はディフェンスラインがバラバラになっており、この結果、松崎はフリーとなっていた。

「4-4-2」システムの安定感が増してきた水戸。これまで中山仁(27試合出場10得点)を軸に、6得点の奥田 晃也(28試合出場)、5得点の安藤 瑞季(26試合出場)、藤尾 翔太(14試合出場)ほか、山根 永遠(26試合出場2得点)、伊藤 涼太郎(11試合出場1得点)をFWとして起用している。

松崎(32試合6得点)は主にSHとして起用されているが、彼のプレーを見るに、最初から2トップの一角として起用すべきではないか。彼の思い切りの良さは、水戸にとって好材料でしかない。

川本梅花

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