川本梅花 フットボールタクティクス

【試合分析】#平野佑一 を経由する浦和の攻撃【無料記事】J1第32節 #浦和レッズ 1-1 #ガンバ大阪

【試合分析】平野 佑一 を経由する浦和の攻撃

目次

ピッチの幅を広く使いたい浦和
平野佑一を経由してボールは前線へ
リカルドロドリゲス監督のプレーモデルと平野佑一のプレースタイル

明治安田生命J1リーグ第32節 浦和レッズ 1-1 ガンバ大阪

明治安田生命J1リーグ第32節、浦和レッズ対ガンバ大阪が10月16日に埼玉スタジアム2002で行われた。浦和は前節(J1第31節)ヴィッセル神戸戦で1-5の大敗。J1第31節終了時点の順位は勝点54(16勝6分け9敗)で5位となっている。一方のG大阪も前節、北海道コンサドーレ札幌に1-5と惨敗。同順位は勝点33(9勝6分け16敗)で14位となっている。降格圏17位・湘南ベルマーレの勝点は27。G大阪は残留争いのさなかにある。

このコラムでは、浦和レッズに視点を置いて記していく。

ピッチの幅を広く使いたい浦和

浦和のフォーメーションは「4-2-3-1」。G大阪は中盤がボックス型の「4-4-2」だった。


省略記号一覧

4バックの浦和はビルドアップの際、2人のCB(岩波 拓也、アレクサンダー ショルツ)が両サイドへと開いていく。そして中央のスペースへは、主にCH平野 佑一が降りてくる。ディフェンスラインを3バックにすることで両SB(山中 亮輔、酒井 宏樹)が高い位置を取って攻撃参加することが可能になる。ボールがハーフウェーラインを越えると前線に5人が並び、相手守備陣にプレッシャーをかける。浦和はピッチの幅を広く使ったサイド攻撃をベースにしている。

平野佑一を経由してボールは前線へ

平野 佑一はリーグ中断期間の8月6日、水戸ホーリーホックから浦和に加入することが発表された。西野 努テクニカルディレクター(TD)は加入記者会見で次のように説明している。

「中盤の真ん中において、守備だけではなくて攻撃の起点にもなる攻撃力に重点を置いていたことが平野選手を獲得した大きな理由です」

https://www.urawa-reds.co.jp/static/ttt/177342.html

G大阪戦を見れば、平野は西野TDの説明通り、ピッチの幅を使った攻撃をしたい、リカルド ロドリゲス監督の求めていた選手であることが分かる。

浦和は13分、2人のCBが両サイドに開くと、CH平野が2人の間のスペースに降りてビルドアップに参加する。バイタルエリア付近でショルツから平野に横パスが渡ると、左SB山中はサイドラインを疾走してアタッキングサードに入る。ボールを受けた平野は迷わず山中にロングパス。山中はクロス気味のミドルシュートを放つ。

平野は14分、敵陣センターサークル近くで受けたボールを胸トラップすると、ダイレクトで右SB酒井にパス。ボールを受けた酒井は、ゴールライン近くまでドリブルしてクロスを上げる。25分には、平野から山中へとサイドを変える大きなパスが出された。このように浦和のボールは、ほぼ平野を経由して前線へと送られる。

平野が水戸に加入した2018年、当時強化部長だった西村 卓朗ゼネラルマネージャーから話を聞いたことがある。国士舘大学サッカー部の後輩でもある平野について「近い将来、水戸の中心選手になれる逸材です。彼がレギュラーで試合に出られるようになれれば、水戸は強くなっていきます」と語っていたことが思い出される。立つピッチは水戸ではなくなってしまったが、浦和に加入して2カ月足らず、平野は中盤の舵取り役として中心選手になりつつある。

リカルドロドリゲス監督のプレーモデルと平野佑一のプレースタイル

「システム」とは何か。その問いに多くの人は「選手たちをピッチに配置した布陣を数字で表したもの」と答えると思うが、おそらくリカルド ロドリゲス監督は「それぞれの選手に与えられるタスク」と答えるはずだ。決められた配置が最初にあるのではなく、配置は守備の局面においてそれぞれの選手に与えられるタスクに基づいて規定されるため、選手の配置は動的、可変的となる。

リカルド ロドリゲス監督は自分の考えるプレーモデルに基づき、選手の資質や能力に合わせたタスクを設定。それをピッチ上のフォーメーションに落とし込み、システムを決定している。システムを機能させるため、必要な能力を持った選手をピッチに送り出しているのだ。システムを機能させるためには、選手個々の能力だけでなく、個々の選手が持つ長所・短所を補完できるかも重要となる。また、試合展開や相手チームへの柔軟な対応も選考基準となる。

ピッチ中央でボールを大きく左右に正確に振り分けられること。これが平野の資質、特徴となる。その平野に対してリカルド ロドリゲス監督が与えたタスクは、ボールを受けたらシンプルにピッチの幅を使って左右にパスを出すこと。このタスクを確実に実行し、チームのバランスを保証している平野がレギュラーとして起用されることは当然と言える。

川本梅花

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