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吉田達磨監督の試合後会見から読み解くヴァンフォーレ甲府の現状【試合分析】明治安田生命J2リーグ 第6節 2022年3月26日 ヴァンフォーレ甲府 1-2 横浜FC【無料記事】

目次
J2第6節のフォーメーションとスタメン
両チームのフォーメーションを組み合わせた図
試合後の監督会見から読み解く甲府の現状
明治安田生命J2リーグ第6節 ヴァンフォーレ甲府 1-2 横浜FC

省略記号一覧

J2第6節のフォーメーションとスタメン

前節のアルビレックス新潟戦(0●2)からCFのウィリアン リラに三平 和司、ST鳥海 芳樹に替えて宮崎 純真、CH松本 凪生を野澤 英之、WB関口 正大から荒木 翔、LB新井 涼平を山本 英臣に変更している。5人の選手変更が行われた横浜FC戦だった。

両チームのフォーメーションを組み合わせた図

甲府のフォーメーションは変わらず「3-4-2-1」で、攻撃時に3バックの真ん中がリベロのようにCHのポジションまで上がって行き、最終ラインは2バックになる。守備時は、前線からのプレスを軸に、WBが最終ラインに降りて来て「5-4-1」になる。横浜FCも同じシステムを組んできたので、同じシステムによるミラーゲームになっている。

試合後の監督会見から読み解く甲府の現状

荒木が前半10分にケガでベンチに下がった。甲府にとってキーマンの荒木がピッチから消えたのは大きい。予定していたゲームプラン自体は変更がないのだが、荒木不在のゲーム展開は攻撃において痛手である。前節から5人のメンバー変更が行われている中で、CFの三平が前半でウィリアン リラにチェンジされている。後半を迎えるにあたって、2点差のビハインドを挽回するために、攻撃力があるウィリアン リラに変えたのだろう。後半になって甲府が攻め上がるチャンスが増えたのは、甲府が追いつくためにアグレッシブに攻めただけではない。横浜FCが、2点差のゆえに最終ラインをそんなに高くしないで守っていたからである。

試合後の吉田 達磨監督の会見内容に今置かれているチーム事情が語られている。記者の質問に対する監督の答えを一部分見てみよう。

横浜FC戦後の監督会見
<blockquote記者:後半、パワーのある戦いぶりを見せただけに、前半からこういうパワーを出せないということは、どのように捉えていますか?

監督:やはり失点をすることはその後のゲームプラン、ゲームを進めて行くエネルギーに影響すると思います。立ち上がりの早い時間で失点をするというサイクルが抜け切れていないことが、今日の大きな要因です。相手も力がありますし、今日はお互いの良さを潰しに行く試合になると思いました。失点から違ったエネルギーや重荷を背負っていかなければならなくなり、その中で潰しに来られた時に、前にボールを付けていくことや選手が前に出ていかなければならないことができなくなってしまったと思います。90分の試合ですから、相手も先制したことで守りに入ることは無意識に働くことだと思いますけど、それでも後半にパワーがあることは見せられたので、持っているものを最初から出すためには、無失点の時間を長くすることが必要ですし、そうしないと余分に大きなパワーを使ってしまうと思います。

ここからは、監督への質問に対する答えを引用しながら解説する。

やはり失点をすることはその後のゲームプラン、ゲームを進めて行くエネルギーに影響すると思います。立ち上がりの早い時間で失点をするというサイクルが抜け切れていないことが、今日の大きな要因です。

吉田監督のプランとしては、前半を0-0のイーブンで、もしくは1-0のように先制点を甲府が奪って後半に入りたかったようだ。この考えは当然のことで、現在の甲府の力からすれば、相手に先制されて逆転する試合運びは難しいと考えるからである。プラン通り前半をもちこたえれば、後半になってチャンスが訪れると読んでのことだ。そうした意味合いがあって、守備のタスクを忠実に実行する三平をスタメン起用したのだろう。もし、0-0で前半を終えたら、後半頭からではなく少し時間が経ってからウィリアン リラにチェンジする予定だったのだろう。しかし現実は、前半で0-2とビハインドを背負ったので、前半で三平をベンチに下げた。最初のプランからの変更での選手交代だったのだが、前節同様に、前半で選手を替える必要があったのかどうか疑問が残る。なぜならば、三平の前線からの守備と失点は無関係だからである。失点は、甲府の選手のミスから生まれたものである。

今日はお互いの良さを潰しに行く試合になると思いました。失点から違ったエネルギーや重荷を背負っていかなければならなくなり、その中で潰しに来られた時に、前にボールを付けていくことや選手が前に出ていかなければならないことができなくなってしまったと思います。

「お互いの良さを潰しに行く試合」とは、同じフォーメーションでの戦いになるミラーゲームだからの話だ。先手を取って攻め上がっていったのが横浜FCだった。したがって、攻撃の基軸なるWBが上がることができずに、思うような攻撃ができなかった。横浜FCは、先制点を奪ったことで、甲府が最終ラインを上げて攻めてくると予想して、DFラインの裏にロングボールを入れて、甲府を揺さぶってきた。甲府は、GKからビルドアップをしていく中で、横浜FCは相手のボールを回す隙を狙って守備体制を整えていた。横浜FCにとっては、プラン通りにゲームを進めた結果の勝利になった。甲府は、監督の発言にもあるように、プラン通りにゲームを進められなかった結果の敗北であった。

90分の試合ですから、相手も先制したことで守りに入ることは無意識に働くことだと思いますけど、それでも後半にパワーがあることは見せられたので、持っているものを最初から出すためには、無失点の時間を長くすることが必要ですし、そうしないと余分に大きなパワーを使ってしまうと思います。

「相手も先制したことで守りに入ることは無意識に働くこと」とは、横浜FCが先制したので前半ほど攻撃に圧力を掛けてこずに、比較的最終ラインを上げないで守ってきたので、甲府がボールを支配できてパワーがかけられた。しかし、前半の失点が大きく、後半になって得点を奪うまでのパワーが残っていなかった。これが、吉田監督の発言内容である。甲府の現状が語られた内容になっているのだが、監督は「ゲームプラン」をどうやって現実化するのかに、今後の甲府の戦い方がかかっている。つまり、第一の目標は、前半に失点をしないことである。

次の試合になるJ2第7節・ブラウブリッツ秋田戦の注目ポイントは、ただ一つだと言っても過言ではない。前半に失点をしないで後半勝負にもちこめるのかである。この一点に注目して試合をみれば、監督の采配が読めてくる。6試合が終わって1勝3敗2分との結果は、スタートダッシュに成功したとは言えない。使えるコマが少ない中で、どうやってやりくりをしていくのかも、監督の腕の見せ所である。監督も選手も、気持ちを新たにして秋田戦に臨んでほしい。

川本梅花

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