川本梅花 フットボールタクティクス

ラインメール青森FC 柴田峡監督「どうすれば観客と元気を共有できるか逆算」【無料記事】成績だけではないJ3昇格のハードル

新しくなったメンバーでJ3昇格を果たすチーム作りが求められるラインメール青森FCの指揮官には、今季より柴田 峡氏が就任した。第24回日本フットボールリーグ(JFL)における青森の成績は5月6日時点で3勝1分け2敗の8位。4位から8位までが勝点10で並ぶ中、無敗のFCマルヤス岡崎が勝点19と頭ひとつ出ている。4月16日に行われたJFL第6節・東京武蔵野ユナイテッドFC戦後、柴田監督に話を聞いた。

柴田峡プロフィール

日本サッカー協会公認S級ライセンス。1965年12月8日生まれ、東京都出身。

選手歴

東京都立石神井高校ー東京学芸大学ー全日空サッカークラブー東京ガスサッカー部

指導歴

1993年 東京ペレFCクラブスクールコーチ
1994年~1996年 東京ペレ八王子ジュニアユース監督
1997年~1998年 東京ガスFCジュニアユース監督
1990年~2002年 FC東京U-18監督
2003年~2004年 FC東京強化部
2005年~2008年 東京ヴェルディユース監督
2009年 東京ヴェルディ コーチ
2010年 流通経済大学サッカー部 コーチ
2011年~2015年 松本山雅FC コーチ
2016年~2017年6月 松本山雅FCユースアンバサダー兼松本山雅FCジュニアユースU-15監督
2017年6月~11月 ブリオベッカ浦安(JFL)監督
2017年12月~2020年9月 松本山雅FCチーム統括部編成部部長
2020年9月~2021年6月 松本山雅FC監督

目指すサッカー、選手はモデルを求めるが

――武蔵野戦[1〇0]では、右サイドからの攻撃が多かった。何か意図はあったのですか?

柴田 左サイドで起用した選手が試合に出たり入ったりして、この試合で初めて公式戦スタメンだったんです。それから左サイドの利き足が右足だったことと、ボランチの選手も右利きだったので、どうしても右に右にボールが動く傾向があったんです。右サイドからの攻撃を奨励しているわけではありません。右サイドの選手の方が5試合目の起用になりますし、岸田 翔平と佐久間 駿希はずっと右サイドをやっていますから。岸田は推進力があって前に押し出せる。

――左サイドの青木 義孝が攻撃参加できなかった理由は?

柴田 本人も左足だとという考えがあると思いますし、不慣れなポジションだったので。左利きの選手が軒並みケガをしていて、あのポジションに関して台所事情が苦しいのが現実です。

――試合終了近くに差波 優人と津久井 匠海をピッチに出して、ゲームを終わらせようとしました。

柴田 差波と和田 響稀は2人とも走れない。響稀も差波もどちらも攻撃力がある。響稀が調子が悪い時には差波を。その逆もあります。2人とも攻撃の感覚は良いものを持っていますから、2人を併用できれば違ったアイデアも出てきますが、こうした暑い日だと併用してもなかなか機能しないですね。

――小幡 純平も併用して使っていくことになりますか?

柴田 小幡はトップ下はあまり機能しないので、矢印向けてディフェンスしていく時の小幡は迫力あるので、最年長ですし、まだ老け込む年齢ではないと思いますけど、もう少しコンディションが上がってくれば、いろいろとやりたいサッカーができると思います。彼らの体力に合わせながら、ごまかしごまかし……というところですね。

――昨季よりもディフェンス陣は安定しているように見えます。

柴田 後ろは3枚(3バックシステム)でやっているので、木下 高彰はまだまだですが、浦田 延尚は経験値が高いので。岸田はもともとあのポジションではない(サイドバックの選手だがストッパーとして起用)ですが、経験と技術でカバーできる。もうちょっとセンターバックがしっかりすれば、岸田をもう1つ前でプレー(ウイングバックとして起用)させてあげられる。

――監督の目指すサッカーは?

柴田 攻守に渡ってアグレッシブにプレーする。見にきてくれた方が「いやー、こんなにみんな頑張るんだ」と思ってもらえるようなサッカー。「見にきてくれた方と元気を共有できる」と言っているのですが、スタジアムに足を運んでいただくためには、何かこう、ピッチから放たれるエネルギーみたいなものが必要です。そういうものをスタジアムで共有できるような、エネルギーがほとばしるような。それが運動量に現れるのか、球際に現れるのか、またはゴール前の迫力なのか。見にきていただいた方に何か感動してもらえるものを求めていくためには、何が必要なのか逆算して考えています。

――松本にいらしたので、冬に関しては大丈夫だと思いますが……。

柴田 青森は雪が深いですよ。いまの時期、松本では桜が咲いていますが、青森はまだ咲いていない。全体的に松本よりも寒いことは寒い。人口も松本よりも多いですし、サッカーに関してもポテンシャルはある。サッカーでは松本の方が一歩先に行っていますけど、青森は伸びしろしかないという感覚。弘前にも週に2回練習で行って、八戸にも練習で行っているので、仕事でだいぶあちこち行って、本当に青森はいいですよ。人もあったかいですし。最初はね、「青森かー」という気持ちもあったのですが、それは僕の偏見でした。

――観客動員とか昇格に向けて難しい局面があると思います。

柴田 勝つことで皆さまと共有していくこと。また勝つとか負けるとは関係なく皆さまと共有していけること。そのために何をすればいいのか。地域と繋がっていくクラブを作っていくことに関して、僕は松本で十何年そのことに携わって向き合ってきた課題なので、それを発展させようとしたら、青森はいろいろな施設があるんですよ。そうした施設を活用していくのも大切なことだと思います。

――最後に、ラインメールにどんなサッカーを植え付けたいですか?

柴田 いまは、選手たちがものすごく「モデル」を望んでいる時代だと思います。全てを分かった選手が判断を速くするために「モデル」を求めているのならいいのですが、全て「指示待ち」になってしまうのはどうかなと。自立した姿がピッチの中で見られる。自分たちで方向付けられる、判断をしっかり自分たちでできるように、持っていきたいと考えています。

川本梅花

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