サッカー番長 杉山茂樹が行く

選手交代5人制の時代に重宝する、左右両サイドでプレー可能なカンセロ的SB

写真:Shigeki SUGIYAMA
 現在プレミアリーグで首位に立ち、チャンピオンズリーグ(CL)でも、ブックメーカー各社から優勝候補の本命に推されているマンチェスター・シティ。好調を維持するチームにあって、出場時間が最も長い選手はGKエデルソンになる。CLグループステージ最終週とリーグカップの2試合こそ、先発をアメリカ代表の正GKザック・ステッフェンに譲ったが、その他の試合(21試合)は出ずっぱり。最後尾を固める役を果たしている。
 
 そして、その次に多い選手、すなわちフィールドプレイヤーで、最も出場機会が多い選手は誰かといえば、ポルトガル代表のサイドバック(SB)、ジョアン・カンセロとなる。2018年ロシアW杯以降、世界で最も活躍が際立っているSBとは筆者の印象だが、左SBのみならず、右SBでもプレーできる点も出場時間が伸びる理由だ。
 
 マンチェスター・シティの左SBにはもう1人、オレクサンドル・ジンチェンコというウクライナ代表の好選手がいる。カンセロが右利きなのに対してこちらは左利き。左サイド専門の選手なので、彼が左SBとして先発でした場合、カンセロは右に回る。右SBのカイル・ウォーカーも右しかできない右利きなので、カンセロが右に回った場合はベンチに下がる。両サイドでプレーできるカンセロは、潤滑油としての役割も担っている。
 
 左右両サイドをこなす多機能型選手は、SBより一段高い位置で構えるウイングの方が多くいる。縦に出るプレーの他に、ウイングには切れ込んでシュートという選択肢がある。サイドアタッカーというスペシャリストとしての色はSBの方が、大外に張って構えることが多い分だけ鮮明になる。
 
 カンセロのようなSBはかつて、存在しないに等しかった。フィリップ・ラームやジャンルカ・ザンブロッタらが現れるまで、世界の檜舞台でも見かけることはまずなかったのだ。
 いまから15年、20年前の話になるが、日本代表クラスでは駒野友一がはしりだった。右利きにもかかわらず、左右両サイドから、両足を使って精度の高いキックを蹴ることができた。とはいえ、左SBでプレーするときも、右利きであることが一目瞭然になったので、動きそのものには違和感を覚えた。無理矢理感を抱いたものだが、駒野と入れ替わるように現れた酒井高徳(ヴィッセル神戸)は左右どちらでも滑らかにプレーすることができるSBだった。

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