大分トリニータ気鋭の「頭脳」が語るJ1再開と展望(J論)

「ファジラボ」寺田弘幸

【あけましておめでとうございます!】『2019年のテーマを考える』

 

年末年始はうれしいニュースもあれば悲しいニュースもあるのが常だが、今オフは昨オフほどの激動はなく選手の契約が発表されている。

最もグサッときたニュースはJ1へ昇格した松本にまた選手を引き抜かれたことだったが、塚川孝輝の移籍は、昨オフに片山瑛一や篠原弘次郎が移籍を決断したことも含めて考えると、選手の成長がクラブの成長を追い越す現象が起きていると捉えていいだろう。

高校、大学を卒業して入団した選手たちがプロの荒波にもまれ、もがき、あがき、一つひとつ壁を乗り越えていく姿を目の当たりにできることはこのうえない喜びで、その結果として選手がJ1クラブ、あるいは規模の大きなクラブからオファーを受けることは、とても喜ばしいことだ。

しかし、だがしかし、ステップアップを遂げる選手を見送ることが年末年始の恒例行事になってしまっては、あまりにも切ない。切なすぎる。

致し方ないのかもしれない。ファジアーノのようなJ2中堅のクラブ規模では受け入れざるを得ないのかもしれない。去る者がいれば来る者がいる。それがプロの世界だが、毎年のようにファジアーノで育った選手がチームを離れていけば、J1昇格に向けて継続性をもってチーム力を向上させていくは至難になる。なかなか明るい未来を描けない・・・。

 

近年のクラブの強化方針を見てみると、新卒をはじめ国内外から若いタレントを次々と獲得している。生え抜き選手を育てていく方針があることは間違いないだろう。

2017年には塚川、武田将平、下口稚葉が入団(石川隆汰は引退)し、2018年には武田拓真、松本健太郎、阿部海大、福元友哉、デューク・カルロス、チェ・ジョンウォンが入団した。2019年にも松木駿之介、ユ・ヨンヒョン、ハディ・ファイヤッドの入団が発表されている。

みんな磨けば光る原石たちだ。クラブは近い将来に彼らがチームの中核を担う青写真を描いているだろうし、有馬賢二新監督を迎えて新たなスタートを切る新シーズンは、ブラジル人MFのデネル・ピニェイロも23歳と若く、25歳以下の選手がチーム全体の1/3以上を占める若いチーム構成となる。ヤングパワーの台頭とチームの躍進が密接に関係してくることは間違いなく、若い選手たちの躍動する姿が今から楽しみでならない。

ただ、若い才能がピッチで輝きを放てば放つほど、他クラブの目に留まる。『DAZNマネー』の影響もあってJ1クラブの資金力が増加傾向にある中、若い選手たちと長期契約を結んでプロテクトしたとしても、契約違約金を支払って獲得に動かれれば、クラブ側ができることはほとんどない。若い選手が躍動すればするほど移籍してしまうのではないかという不安が沸き起こることになる。

もっとも、これは決してファジアーノだけが直面している問題ではなく、そういうリーグに変化してきているのだ。

 

ここで少しファジアーノの歴史をさかのぼってみよう。

Jに参入する前後の頃は、他クラブからオファーはなくても真面目でひたむきな大卒の選手をリクルートし、Jクラブで出場機会をつかめなかった選手たちに声を掛け、彼らを鍛えることでチーム力を高めていった。特に第1期の初期にはJ3への降格制度がなかったこともあり、練習環境は整っていなくても構わない!という雑草魂をもった選手たちを腰を据えて強化を図ることができた。

この手塚・影山体制を第1期とするならば、岩政大樹、加地亮らビッグネームを獲得し、矢島慎也、豊川雄太、石毛秀樹らを若いタレントを期限付き移籍で獲得し、一気にチームの競争力を引き上げた長澤体制が第2期と言えるだろう。練習環境が整ったことで有力選手にも関心をもってもらえるようになり、チーム人件費も年々上昇してきたことでJ1で名を成してきた選手も加わるようになった。リーグの変化に伴いながらハード面の整備と資金力のアップを図り、クラブとしても着実にステップアップしてきたように思う。

そして、これからは第3期へ突入すると考えていいだろう。2017年のオフに大鉈を振るったときから次期へ突入する準備が始まり、2019年シーズンから本格的に第3期のスタートだ。生え抜きの若い選手たちが切磋琢磨する環境が整い、適材適所にベテランと外国人選手が配されているチーム構成は、その方向性もバランスも悪くないと思う。ただ、来年も再来年も“塚川”が現れてしまっては、第3期は停滞期になりかねない。クラブも第3期への移行に伴いステップアップを遂げていかないといけない、ということだ。

 

あくなき向上心をもつ選手と共に上を目指していけるクラブになっていくため、重要なことの一つは順位だろう。常にプレーオフ圏以上にランクすれば選手たちも身近にJ1を感じられる。『自分の力でこのクラブをJ1に上げたい!』というモチベーションも維持しやすい。もう一つは資金力だ。やはり高額の給与を提示できるクラブには魅力がある。そしてもう一つは、サッカーの志向ではないか。僕はこのサッカーの志向こそが最重要になると思う。

順位を保証できるものは何もなく、資金力が一気に増大することも考えにくいが、魅力的なサッカーを志向していくことはできる。魅力的なサッカーとは何か―。その定義は難しいが、クラブが指針を示して選手たちが『このチームなら自分は成長できる』『チームもきっと成長していく』というイメージを描けるサッカーを展開していけば、能力の高いタレントが集まり留まるようになるはずだ。

チームを取り巻く環境の面で言えば、やはり集客力にかかっている。練習施設はJ1クラブと比較してもそん色ない。集客力はJ2で上位だが、さらにスタジアムの熱狂度を高めることで選手たちを魅了することができるはずだ。集客力は資金力とも密接に関係してくる。もし毎試合スタジアムが満員になって熱狂に包まれれば、スポンサードする企業のメリットも大きくなる。大口スポンサーが現れる可能性も生まれてくるだろう。

もちろんJ1昇格に勝る魅力はないが、昇格という高い高いハードルを乗り越える力を備えるため、魅力的なサッカーを展開してJ1に肉薄すること、そして熱狂したスタジアムを作り上げていくことが、第3期に突入するファジアーノの大きなテーマになるはずだ。

若きタレントの台頭。有馬新監督の下で目指していくサッカーの志向。1試合平均1万を目標に掲げるクラブの取り組みとサポーターが生み出す熱狂。ここにテーマを置いて『ファジラボ』は2019年を追い掛けていこうと思う。

 

ということで、本年もどうぞ宜しくお願い致します。

また、新年の更新はひとまずチームが始動するまでお休みとさせていただきます。新体制のスタートから全力疾走するため、少し英気を養おうと思います。

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