見えてきた?今年のJ2勢力地図(J論)

「ファジラボ」寺田弘幸

【無料】有馬賢二監督インタビュー〈前編〉『トライしておかないと来年以降への積み上げが減ってしまうと思ってやってきた』

最終節の翌日。政田サッカー場での解散式が終わった後に、有馬賢二監督に2020年を総括してもらって2021年を展望していただきました。

〈前編〉は主に2020年を振り返ってもらっていますが、本当に我慢強く指揮を執ってきたことが伝わってくる内容になっています。

今年に有馬監督が蒔いてきた種が、いつ実るのか、どんな実をつけるのか。それはまだわかりません。ただ、芽を出し、育ち、実をつけ、いつか収穫のシーズンが来たとき、僕らは2020年を思い出すことでしょう。

・2020年を振り返って
・得点数が少なくなった要因
・イ・ヨンジェについて
・守備面の評価
・ケガが多かった要因
・恥骨結合炎とは

(取材日:12月21日)


 

■ 有馬賢二監督

――2020シーズンは『継続と進化』を掲げてスタートしました。振り返っていかがですか?

「トライできたシーズンだったと思ってますし、最後のゲーム(第42節・甲府戦)が一つの答えなのかなっていうことは選手たちにも伝えました。縦に速い攻撃をしながら、相手が引けば自分たちがボールを持っていくという形が。僕らはずっとボールを持って、持って崩せるチームじゃない。それは十分にわかっているし、元々のファジアーノの良さは堅守速攻というか、速くボールを運んで(相手の守備が)整う前にゴールを奪うところにあって、去年は速く攻めることを継続しながらやった中で、今年はより自分たちでボールを保持することにも取り組んできた。

ボールをつないで崩し切るというよりも、勝っているときにボールを保持できないといけないし、相手が引いたときにもある程度は遅攻で崩せるようにならないといけないんで、速い攻撃と遅攻の二つの引き出しを持てるようにトライしてきた中で、まだまだ完成形には程遠いけど、甲府戦はそれが垣間見れた試合になったと思います。後半を2-0で迎えられた中で、今までだったら蹴ってロストして押し込まれるっていう形が多くなったと思うけど、しっかりと奪った後に前へつないでいくことができた部分があったし、前半も速い攻撃と相手が引いたら自分たちで(ボールを)動かしていく攻撃の両方ができていた。

その状況、状況で選手一人ひとりがどういうことをしないといけないか。そういうところを今年はずっと種を植えるようにアプローチしてきて、少し甲府戦で芽が出てきたのかなと感じています。こっちが『これだけをやれ』って言った方が選手は楽なんです。『取ったら前へ蹴れ』って言った方が、もしかしたら今年の過密日程を考えればその方が良かったのかもしれない。けど、しっかりと積み上げていくためには今年も種を植えておくことが大事だと思ってやってきた。来年になって『やれ』って言っても無理だし、選手たちも速い攻撃と自分たちがビルドアップする二つの引き出しを持つために何が必要かがわかったシーズンになったと思います。特に、残りの10節はトライをしながら戦ってきた中で、今のチームの立ち位置と選手一人ひとりの立ち位置をしっかりと見ることができたんで良かったなと思います」

――得点数が少なくなった要因についてはどう考えていますか?

「今話したところとつながる部分があるんですけど、去年のベースは速く攻めることにあって、今年もその選択肢は持った上で、できないときは遅攻に切り替えていくという優先順位だったんだけど、新しいことの方に針が振れてしまった部分はあったなと思います。前に入れられるチャンスがあるのに、それを選択しないでつなぐことを選択してしまうと当然、遅攻が多くなる。遅攻が多くなれば当然、崩すのは簡単じゃなくなる。逆に今までなかったようなゴールが増えたことも事実で、ジュビロ戦のように自分たちで崩して奪ったゴールもあったんだけど、こう言っちゃうとこっちに言っちゃうし、ああ言っちゃうとあっちに言っちゃうっていう中で、どこに針を持っていくかという調整を練習しながらやれればいいんだけど、なかなかそれもできなくて遅攻が増えたのかなと思っています。

あと、やっぱり[4-4-2]でやっている以上はサイドが重要になる。今シーズンは右サイドに和樹が入るまで右サイドで優位性をほとんど出せなかったし、あとは選手が試合ごとに入れ替わる中でコンビネーションのズレも起き、ミスもすごく多かった。もっと全体の質を上げて高いレベルの中で競争をしていかないといけないと思います。良い形で奪うことはできていてもミスが多すぎたというのがあったんで、そこはクラブとも話をしているところ。もちろん今いる選手一人ひとりの質を上げていく作業もしっかりとしていくんだけど、補強をしていくことも必要になると思っています」

――イ・ヨンジェは苦しいシーズンを過ごしました。彼個人の評価については?

「ヨンジェが良ければチームとしてもヨンジェの良さを出す工夫をしていくし、もちろん知樹が良ければ知樹の良さをどうやって生かしていくかを考えて微調整していく中で、ヨンジェは今年ケガも多くて良さを出し切れなかったなと思います。コンディションを整えることが難しいシーズンだった中で、ウチの選手たちは本当に良くやってくれたけど、うまく自分を出し切れた選手もいれば難しかった選手もいて、ヨンジェ自身も良さを出し切れたとは思っていないと思うけど、だからヨンジェが悪いって言うわけじゃない。

ヨンジェが良いコンディションが整わないときには、若い選手が出てきて自分の良さを出していかないといけない。そういう状況になっていればヨンジェもしっかりとコンディションを整えられたかもしれないし、それがチーム力でありクラブ力なんだけど、そこがまだまだ足りないと思う。そうやって若い選手が出てきていれば、チームとして進化することにトライしながらも、もうちょっと勝負にこだわって戦うこともできたかもしれないと思うけど、後悔はしていないです。生みの苦しみじゃないけど、トライしておかないと来年以降への積み上げが減ってしまうと思ってやってきたんで」

――失点数は『49』になりました。守備面はどう評価していますか?

「最後の15試合、10試合くらいで少し増えたと思うけど、それはもう若い選手を使ったからでもあるし、今言ってきたようなトライをしたからでもある。ノーリスクでハーフウェイを超えていくようなロングボールを入れていけばもっと失点も減らせたと思うけど、そうすると自分たちが積み上げたいことができなくなっていたと思う。ただ、そうは言っても最後のところで身体を張って守らないといけない場面はあったし、個人戦術のところで足りないところはあったと思うけど、最後の10試合がすべて悪いわけではなかった。北九州や福岡とやったゲームは、失点もしたけど自分たちのやろうとしたことが出せた部分もあった。山形や群馬でのゲームも自分たちの質がもうちょっとあれば十分に防げた失点だったと思うし、失点は守備だけの問題じゃなく攻撃の問題も含めて考えていかないといけない。

甲府戦で先制した後、1点リードで試合が推移してしまうと余裕をなかなか持てなくなるんで、ベンチからも『前半のうちにもう1点を取らないといけない』って話をしていたんだけど、今年ウチは取れそうで取れなかったシーンが本当に多かった。その理由はいろいろあるんで、そこはしっかりと検証しないといけないんですけど、甲府戦が前半にリードして勝った初めての試合になったのは、前半の最後にもう1点を取って余裕を持てたから。余裕があったから最後に5バックにしたときも安心感のある中で戦えていて変なロストがなかったじゃないですか。攻撃と守備は必ずくっついているんで、どっちかっていう考え方をするのは難しいんですけど、守備面をトータルで振り返ると我慢強く戦ってくれたと思っていますし、来年は細かいことの一個一個を詰めていきたいと思います」

――コンディション調整の難しいシーズンでしたが、ケガ人が多かったことについてはどういった要因があったと考えていますか?

「そこは開幕から本当に困ってきたところ。レギュラーとして考えていたSBの二人がシーズンを通して1試合しか出場できなかったっていうのは危機的なことだし、今年は補強することもできなかったわけだから。ドクターとも話はしていて、先日に『選手たちに予防についての話をしていいか』と聞かれたんで、『ぜひやってください』と。まず一人ひとりが意識を持ってやらないといけないし、チームとしてどうやったら防いでいけるのかも考えていかないといけない。

クラブ、スタッフ、選手みんなでやっていかないと、自分たちで自分たちの首を絞めることになるんで、まずは選手に予防をしっかりとしてもらいたいし、こっちはどういう状態になれば休ませた方がいいかを見極めていかないといけないし、リハビリをすることになったらどうやったら早く戻ってこれるかをやっていかないといけない。今年はそういうところがうまく噛み合っていなかったから、そうなったんだと思います」

――恥骨結合炎を患う選手が多いですが、どういったことが要因で起きるケガなんでしょうか?

「いろいろな要因があるんです。たとえば、どこかを傷めていて、そこをかばいながらプレーすることで恥骨に負担が大きくなったり、身体の前面だけの筋肉がすごく強くて、筋肉だけでプレーしようとしているから股関節に負担がきたり。個人個人によって要因は違って、だから難しいケガでもあるんですけど、疲労を溜めないこと、しっかりとケアをすること、自分の身体の仕組みを理解すること、トレーナーが治していくトレーニングメニューを考えること。そういうことをしっかりとやっていかないといけないし、そこもクラブとドクターと何回も話しています。

ケガをしてしまったらどうやって早く戻ってこれるようにするかも大事なことだから、『こうだって決めつけないで、やれることをやろう』と。自分たちの知識だけだったら、自分たちの知識の範囲内でのことしかできないから、セカンドオピニオンもサードオピニオンも受けて、いろんな方々の協力を得てやれることは全部やり尽くしていこうと。そういう部分でもどんどんトライしていこうって話しています。今年は本当にケガに苦しんだ部分があったけど、それを繰り返してはいけないんで、しっかりと検証した上で、そうならないためにどんなトライができるか話し合っていきたいと思います」

〈 続 〉

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック