【無料】【サッカーライターへの道】vol.14『愛媛戦の攻撃とホームアドバンテージ』
サッカーライターを目指す大学生の難波拓未が寺田弘幸に質問していくシンプルな企画『サッカーライターへの道』。
試合のポイントや戦術等の細かいこともOK。選手のプレーについても寺田の見解を述べます。寺田にわからないことは監督と選手に直接聞いてきます。
もし皆さまも寺田に聞きたいことがありましたら、下記のフォームにご入力ください。
vol.14『愛媛戦の攻撃とホームアドバンテージ』
寺田 「愛媛戦の振り返りからやっていこう。デュークがいない中でFWの選手にどんなボールが入っているかをメモしながら見てもらったけど、どういう数字になったんだろう?」
難波 「FWでプレーした川本選手、齊藤選手、山本選手を集計しました。手元の計算になりますが、結果は以下の通りです」
川本選手(スタメン、62分間プレー)
胸より上
・競り合うボール…3回
・スペースに流れるボール…3回
腰より下
・足元につけるボール…10回
・スペースに流れるボール…0回
齊藤選手(62分に出場、32分間プレー)
胸より上
・競り合うボール…5回
・スペースに流れるボール…0回
腰より下
・足元につけるボール…11回
・スペースに流れるボール…2回
山本選手(81分に出場、13分間プレー)
胸より上
・競り合うボール…2回
・スペースに流れるボール…0回
腰より下
・足元につけるボール…5回
・スペースに流れるボール…3回
*成功の有無にかかわらず、その選手を狙ったボールを集計しています*
難波 「クロスも注意深く見ていましたが、FWがターゲットになるようなものはほとんどなかったです。試合終盤に山本選手を狙ったクロスが両SBから1本ずつ上がったくらいでしょうか。クロスの本数自体も少なかったですし、サイドの深いところに入り込んだときも後ろから飛び出してくる選手へのマイナスのクロスが多かったです」
寺田 「確かに。クロスを上げてヘディングでゴールを狙うシーンはなかったよね。そこはデュークが不在の中でチームとして意識していた部分だったんだろうね。他にどんな印象を持った?」
難波 「前節と比較してみると、CBからFWへのロングボールがほとんどなかった印象です。川本選手へは足元のショートパスが多かったですし、齊藤選手が入ってきてからはFWを競らせるボールが増えましたが、齊藤選手はFWのときはサイドに流れるボール、SHのときは足元で受けるボールがメインでした。山本選手には2本の競り合うボールがあって、以前のお話にもあった山本選手の空中戦で相手よりも先にボールに触れる強みが生きていたと思いますし、山本選手はサイドに流れてボールを受けることが多かったです」
寺田 「なるほどね。一番プレー時間が長かった川本君にボールが入った回数が多くないことからも、前半はFWにボールが入る回数が少なかったことがわかる。前半の大きなチャンスは上門君のパスを受けてカウンター気味で徳元君が抜け出して打ったシュートシーンと、川本君が相手のミスからボールを奪ってシュートまで持っていったシーンだったよね」
難波 「そうでした」
寺田 「パスをつなぎながら危険な場所に入っていく、という部分はなかなか見られない前半になったと思うし、FWにどんなボールを入れていくのかも曖昧だった印象はぬぐえない。川本君のボールの引き出し方が良くなかったのかもしれないし、チームとして狙うスペースを共有しきれなかったのかもしれない。前半の攻撃からは停滞感を感じたよね」
難波 「僕はSHが内側に入る動きをして相手の視線を中央に集めて、空いたサイドに展開するところはスムーズにできていたように感じました。クロスを入れる前の作業はチームとして成熟度が増してきたのかなと思いますけど、愛媛のゴール前にはヘディングの強い栗山選手がいて、人数も揃っていた。単純なクロスでは決定的なチャンスを作れないと判断したからこそ、本数も少なかったんだと思います」
寺田 「それにしても、2試合連続無得点は歯がゆいね」
難波 「はい。すっごく。ドリブル突破だったり自分でこじ開けるようなプレーがもっと増えても面白いんじゃないかなと思います。木村選手が入ってからは『何とかしてやる!』って気迫を感じましたけど」
寺田 「ドリブル突破の他にも、局面を打開するシーンを増やしていってほしいね。たとえば、右サイドに人数を集めて速いテンポでパスをつないで崩すとか。ドリブルで1人、2人をはがせられたらいいけど、そう簡単にはやらせてくれない。グループでどう局面を打開していくかもすごく大事になると思う」
難波 「では、読者の方からいただいた質問に移りましょう。『ホームアドバンテージを最大限にするためにはというテーマでお話を聞きたいです。今シーズン、ホームではたったの4勝。サッカーはホームチームに有利なスポーツなのになぜでしょうか? また、県が運営するホームスタジアムは、ファジアーノのサッカーに適した芝の長さにしているのでしょうか? 対戦相手によって水を撒く時間を変えられるのでしょうか?』という質問をいただきました」
寺田 「ホームゲームは応援してくれる人がいるし、慣れたピッチでプレーできるから、ホームチームに有利なことは間違いない。ただ、『勝てていないのはなぜでしょうか?』という問いに対する明確な答えを見つけるのは難しいよね。今年に限っては、試合終了間際に失点することが多かった」
難波 「水戸戦や東京V戦、群馬戦もそうでした。しかし、ホームで勝てていないのはファジアーノだけではなく、愛媛もホームでは1勝しかできていません。コロナ禍による影響はあるのでしょうか?」
寺田 「それはあると思う。入場制限があるのでお客さんは少ないし、手拍子でしか応援できない。なかなか選手たちの後押しをする雰囲気を作りにくい現状ではあるよね。選手とファン、サポーターが一緒に戦っている臨場感がすごくあるところがサッカーの魅力で、言葉では表せないような押せ押せムードになる瞬間があるんだけど、やっぱり今年は雰囲気が作りにくいから、ホームチームのアドバンテージを少なくなってしまう」
難波 「サポーターの力は大きいですよね」
寺田 「もちろん。雰囲気って僕はすごく大切だと思っているし、雰囲気って選手やファン、サポーターの方々だけでなく、運営するスタッフも含めて全員で作り上げるもので、これまでの積み重ねによって生まれるものでもあると思う。明日いきなり良い雰囲気を作ろうと思って、それはできないし、積み重ねてきたものを大事に育んでいかないと薄まっていくものでもあると思うから、これからもみんなで積み重ねていって、相手の選手がCスタに入った瞬間にやりにくさを感じるような、ファジアーノの選手がスタジアムに着いたときに『今日も勝てる』って思えるような、そんな雰囲気になっていったらいいなと思う」
難波 「芝の長さや水撒きはどうでしょうか?」
寺田 「有馬監督が指揮を執りはじめたシーズンから、スタジアムを運営している方々も本格的に協力してくれるようになっている。芝の長さは練習している政田のピッチと同じくらいの長さにしてもらっていると聞いているし、試合前とハーフタイムには水を撒いてくれるようになった。本当に多くの方々に協力してもらえているからこそ、ホームゲームでは何としてでも勝ちたいよね」
〈 了 〉
次回は磐田戦後を予定しています。
皆さまからの質問もお待ちしています!
難波拓未
岡山市に生まれて小1のときにサッカーを始めた少年は、岡山市の小中高に進学してボールを蹴り続けた。ファジアーノの選手たちのプレーを真似しながらプロサッカー選手を夢見て青春時代を過ごした難波くんは今、大学生になってサッカーライターになることを目指して活動を続けている。
note 『たくみ/大学生サッカーライター』
Twitter @Soccer_Writer