「ファジラボ」寺田弘幸

【無料】『理想を持ちつつもリアリスト』【2022 J2第12節 秋田戦 レビュー】

2022年の目的は『J1へ昇格すること』なので、今節の目標は『何が何でも勝利すること』でした。そのためファジアーノは一致団結して現実的に戦い、引き分けのトンネルを脱出してみせました。

(寺田弘幸)

思い出した原強化部長の言葉

空中戦の競り合い。セカンドボールの争い。この2点が秋田戦のポイントになることは分かっていた。しかも、この日は強い風が上空を待っていて、想像を上回る激しいバトルが展開されることになった。

秋田の選手たちはとても屈強だ。試合間隔が短く中2日だったが、前節から先発7選手を変更してパワーを発揮してくる。立ち上がりは秋田が押し、20分を過ぎるとファジアーノが押し返していったが、いずれにしても激しい肉弾戦が繰り広げられた

そんな試合の勝負を分けるのは、やはりセットプレーである。前半終了間際にCKから柳育崇の移籍後初得点が生まれて先制に成功したファジアーノは、後半から阿部海大を投入してディフェンスラインを厚くして秋田の攻撃を跳ね返していった。

後半の45分間をファジアーノの選手たちは集中して守った。途中から入ってきた選手もそれぞれの役割を全うし、GKの金山隼樹がまさに最後の砦となってシュートを弾き出してくれた。

セットプレーで奪った虎の子の1点を守り切って勝った秋田戦は、決して木山隆之監督が表現しようとしているサッカーをできた試合ではなかったと言っていいだろう。形振り構わず勝つことだけに徹したような試合だったと思うけど、この秋田戦の勝ち方も木山監督らしい勝ち方だと言ってもいいだろう。

ホッとして眠りにつこうとしていたら、僕の脳裏に原靖強化部長の言葉が浮かんできた。1月8日に行われた新加入会見の席上で、原強化部長は木山監督を招聘した理由をこう語っている。

「1日1日、1年1年、常にファイティングポーズを取り続けて選手や市場へ訴求していき、地方のうねりを巻き起こす。木山さんはそういうことを実践してきた監督さんなので、声をかけさせていただきました。

その他には、より勝点を積み上げるということで、理想を持ちつつもリアリストであること。あと、プランAがうまくいかないときにプランBを平気でこなしてしまう柔軟性。そして、彼が過去に在籍したチームからは随分若い選手が出てきています。ベテランと若手を分け隔てなく起用して、山形でも愛媛でもその後にJ1で活躍する選手が排出されています。そういったところをクラブで話しまして、木山さんを招聘することになりました」

原靖強化部長『木山さんは理想を持ちつつもリアリスト』【2022 新加入会見】より

木山監督は、その状況によって柔軟に戦い方を変えられる監督だ。今のチームの状態、対戦相手の特徴、ピッチコンディションや天候、などなど。あらゆることを想定しながら監督は勝つためのゲームプランを考えていくが、木山監督は様々な経験を積んできたため引き出しの数がとても多い。

今節は原強化部長の言う「リアリスト」の引き出しを開けて手繰り寄せた勝利だったと言ってもいいだろう。

果たして、引き分けのトンネルを抜け出したチームを、これから木山監督はどう導いていくのだろうか。東京V戦まで準備期間は短いが、今度は違う引き出しを開けて連勝を目指していくに違いない。

アタッカーの力を存分に引き出すことを念頭に置き、攻守にアグレッシブなサッカーを志向してスタートした今シーズンのファジアーノは、指揮官が試合ごとに修正を図りながら、攻守の適切なバランスを模索しながら、立ち止まることなく前へ歩みを進めている。

ここまでの道が平たんではなかったように、きっとこれからも障壁は何度となく現れるのだろう。山もあれば、谷もあるんだろう。それでも経験豊富な木山監督が率いるファジアーノは、目的を達成するために前へ前へと進んでいく。

〈 了 〉

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ