石井紘人のFootball Referee Journal

UEFAチャンピオンズリーグ2012ラウンド162ndleg マンチェスターユナイテッド×レアルマドリード ジュネイト・チャクル審判団評:4

■主審:ジュネイト・チャクル(トルコ)

 採点:4

 

UEFAチャンピオンズリーグ2011準決勝2ndleg バルセロナ×チェルシー戦でジョン・テリーにレッドカードを出したように、厳格で厳正なジュネイト・チャクル主審。この試合でも、その“いつも通り”貫徹した基準でレフェリングしていく。

 

20秒、ハンドをしっかりとる。2分にも、足を引っ掛ける格好になったギグスのファウルとったように、いつも通り見極める。

 

10分には選手が痛んだため、試合を止める。18分には、もつれた所で、相手のコースもふさいだエブラに警告。19分には、CK前のポジション争いに対し、早めに介入する。笑顔でのマネジメントから落ち着きも感じられる。32分にもセルヒオ・ラモスの競り合い時の腕をしっかりとる。36分のラファエルが倒れたシーンは、貰いにいった感がありノーファウル。

38分、ボールを奪われた所を足にチャレンジして止めたアルベロアに警告。40分のワンタッチも、最高クラスのポジショニングから見極める。

 

 

妥当な判定で迎えた57分。

ナニが足裏をみせた飛び蹴りのような格好でアルベロアにチャレンジしてしまう。多くの観戦者がイエローだと思ったであろうが、チャクル主審が掲げたのはレッド。

 

おそらく、ナニがボールにチャレンジする前に、一瞬、前を見ている。この事からアルベロアが近くにいるのを、ナニは感じていたと審判団は判断し、【相手競技者の安全を脅かす】プレーとしたのだろう。

この判定は「“オレンジ”といわれるもので、レッドでもイエローでも、主審に委ねられる裁量内」(国際審判員たち)だと思う。つまり、いわゆる“八百長”やミスといわれるものではない。

 

 

が、このチャクル主審の判定に、敗れたマンチェスターユナイテッド側は怒り心頭。

アシスタントコーチのマイク・フェラン氏は、
「我々は非常に失望している。ドレッシングルームでは全員が取り乱しており、監督も取り乱している。そのため、私がこの場に来た」

 

とファーガソン監督の代わりに会見で語り、

「我々は0ー0のときも順調だったと思う。それは我々が望んでいたことだ。そして、ゴールを決めることができた。試合をコントロールしていたよ。何度かのチャンスをつくった。だが、(退場で)試合が変わったんだ。判定には驚いた。しかし、我々は続けなければいけなかったよ。11人のレアル・マドリーと対戦するのはとても難しい。この試合の世界的な注目度を考えると、我々が10人で終了を迎えたことは非常に残念だ」。

 

 

チャクル主審が試合の質を落としたと暗にほのめかす。これに解説者のリネカー氏や、現役の選手たちもツイッターにて同調している。

 

 

確かに、シャビ・アロンソがいうように「難しいジャッジだった」し、「(レアルは)退場者が出た後で最高の時間帯を迎えた」。

 

 

ナニの退場は、試合を左右した。

 

 

が、それはチャクル主審が主となったわけではない。

 

 

「みんなこのことで気が動転しているし、ユナイテッドの敗退は少し不運でもあったけど、あれは危険なプレーだった。意図的であったかどうかは関係ない。危険なプレーで、レッドカードだった」

 

というロイ・キーンの言葉が全てを物語っている。

 

 

 

そして、その後、試合はしっかりとコントロールされているのも忘れてはいけない。

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