石井紘人のFootball Referee Journal

2014ブラジルW杯アジア予選 ヨルダン×日本 ファガニ審判団評:3

■主審:ファガニ(イラク)

 採点:3

 

ロンドン五輪アジア予選のバーレーン×日本戦の主審を務め、山田直輝の顔を踏みつけたバーレーン選手に迷わずレッドカードを与えたように、厳格で厳正なレフェリングをするファガニ主審。この試合でも、同様の基準をみせる。

 

1分の長谷部へのチャージはボールにプレーできている正当なチャージということでノーファウル。5分の今野のチャージは、相手の背中を押す格好になったためファウルに。9分の岡崎が倒れたシーンは、自分からコースに入ったということでノーファウル。10分の吉田のチャージもフィフティという判定。

 

ファガニ主審は、しっかりと争点に入り、かつコミュニケーションをとりながらレフェリングする。28分の両手両足を揃えて倒れたシーンも、毅然とプレーを続けさせる。29分の内田のフットボールコンタクトも基準通りノーファウル。安心できるジャッジだ。34分の香川が倒れたシーンも同様で、「クリーンにボールを奪ったという判断」(名波浩氏)。

38分の岡崎のファウルは、ボールにプレーできる範囲外ということだろう。40分にも同様に岡崎へのファウルをとる。

 

手や遅れたチャレンジには厳しく、一方で簡単にはファウルをとらないタフな基準が出来上がり、後半に入ると試合はエキサイティングに。

 

迎えた73分。議論できる判定がおとずれる。

内田篤人に裏をとられたサイドバックのアブダラー・ディーブが、スライディングタックルで足をひっかけたということでPKに、警告が与えられる。

内田が「足はかかっていないですけど、笛を吹いてくれればラッキーだなと思っていました」と語ったように、ギリギリでノーファウルかと思ったが、ディーブの足が遅れてしまったことと、左足の出し方が悪かった。現象として、「あのタイミングでエリア内でスライディングしてきたから、PKだとは思います」(内田)。

 

74分には珍しいシーンが起こる。

ヨルダンGKアメル・シャフィが、何の接触もなく痛んで倒れる。これに対し、ファガニ主審は警告を与える。今年のJFA Media Conference on Refereeing2013でも説明があったが、「肩と肩の接触なのに、顔を抑えて、相手に警告を与えようとする。このような怪我を装うシミュレーションへの懲戒罰は日本では類を見なかったが、今後はしっかりと対応していく」という【怪我を装うシミュレーション】を適用したのかもしれない。映像では見切れていたが、82分のムスタファも同様だろうか(もしくは【遅延行為】か)。

 

どちらを適用したかは現地取材に行っていないため、手元に公式記録がないので不明だが、この二つの警告は、試合をストレスなく見ることができた一つのポイントだと思う。

一方で、75分の清武へのチャレンジは、ロールバックして欲しかった。

79分のPA内に進入した岡崎へのチャージは、ボールにプレーできる範囲内というジャッジ。今日の基準通りだ。87分のブロックは、腕は体にしっかりついており、ハンドはなし。901分、バセム・ファティに【遅延行為】で警告か。

 

 

日本は敗戦を喫したが、ファガニ主審の厳格で厳正なレフェリングは、試合をフェアな結果で終わらせたと思う。試合後、選手たちが口にしなかったように、もはや“中東の笛”は死語となりつつある。

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