石井紘人のFootball Referee Journal

2013J1第13節 柏×浦和 村上伸次審判団評:3

■主審:村上伸次

 採点:3

 

「この試合にかける意気込みはありますよ。あれだけ報道された誤審があったんですから。」

 

 

 

沢木耕太郎氏の本を読むと、羨ましくなる。

沢木氏は、陽の当たらない、というよりは当たらなくなった人物を、取材したいように取材する。一見、友人のような関係に見えるが、対象者とは議論をしている。そして、批評し、批判もする。ほとんどのメディアが、「うん。うん」と話を訊く方が多いサッカー界にはない健全さがある。

 

だが、審判員の取材ではそれはできない。

基本的に日本サッカー協会を介した取材しかできないし、なにより部や広報が原稿をチェックする。

 

おそらく、審判の心の声は届いていない。

というより、表には出せない。なぜならば、審判員をスポーツとして捉えている人たちは稀有であり、「審判員がそんなこと言うなんてけしからん」という論調になりかねない。

 

だから、いつか有料という枠のあるこの場で、そういった試みをやりたいと思っている。試合前の審判員のコメントを届け、スポーツとして審判員を感じてほしい。リテラシーのある読者が多いFBRJだからこそできる企画であり、審判界に寄与するものにもなっていく。というのは大袈裟だが。それでも、

 

 

 

「審判員って面白いじゃん」「そんなこと考えているんだ」

 

 

というポジティヴな興味を引くことはできるはず。

 

 

おそらく、この試合前に村上主審に取材していれば、冒頭のようなコメントが返ってきたと思う。というのも、以前、「国際審判員ではない僕は、国内でベストなパフォーマンスを見せて、国内における審判のイメージをよくしたい」と力強く語っていたからである。

 

 

そういった思いを知って試合を見ると、違う世界が見えてくる。

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