石井紘人のFootball Referee Journal

FIFAコンフェデレーションズカップ2013 ブラジル×スペイン ビヨルン・クイペルス審判団評:3

■主審:ビヨルン・クイペルス

 採点:3

 

誰もが待ち望んだ対戦カードではないだろうか。

 

少なくとも私は、南アフリカW杯で、この対戦カードを翹望していた。2008年から続いたスペイン代表の無敵艦隊ぶりは、当たり前だがバルセロナがそのまま引き継ぐ。70%近いポゼッションを毎試合誇るバルセロナは、「バルセロナに勝てるチームはどこか?」というテーマをサッカー界に与えた。その議論の中心の筆頭候補がモウリーニョだった訳だが、「真っ向勝負で」という前提を置くと、沈黙が生まれてしまう。バルセロナは“それくらい”の高みにあるチームで、「ブラジルを倒すために、多くの戦術を欧州のチームは生み出してきた」という言葉の主語が“スペイン”そして“バルセロナ”に塗り替えられた。

 

そんなバルセロナ、そしてスペインを倒せるチームとして、私が主張していたのが、「ブラジル代表」である。

 

だが、そんな私の持論は、バルセロナにあっけなく打ち砕かれる。

W杯の翌年に行われた2011FIFAクラブW杯。決勝で実現したブラジル代表の面々を揃えるサントス×バルセロナ。結果は、ブラジルの典型的な10番だったライー氏に「バルセロナはわれわれに、サッカーの仕方をレクチャーしてくれた」といわしめさせた。

私の持論は、総合格闘技で「大相撲最強論」を唱えていた人たちのような滑稽なものになってしまった

 

だからこそ、今大会でブラジルのフル代表がスペインと戦う所を見てみたかった。

コンフェデレーションズカップというW杯のプレ大会ではあるが、通常より重みのある試合だと私は感じていた。

それはFIFAも同じかもしれない。

 

というのも、この日の主審が西村雄一ではなく、カイペルスに委ねられたことから考察できる。

南米×欧州という対戦カードならば、W杯は別として、クラブW杯やコンフェデでは、別大陸のレフェリーを割り当てられることが多い。今回の西村のパフォーマンスから考えても、西村が順当かに思えた。

西村とカイペルスの判定力に差がある訳ではないからだ。

しかし、カイペルスには顔があった。

EUROUEFAチャンピオンズリーグで主審を務めており、両チームには顔なじみの選手も多い。チーム西村よりも、英語も堪能で、コミュニケーション力にアドバンテージもある。

FIFAがこの日の審判団に求めたのは、判定の○×以上に、スムーズなゲームコントロールなのだろうな、なんて推測するのも面白くないですか?

そういった視点で見ると、クイペルス主審も、それを理解したかのようなレフェリングを選択したように感じるから不思議である。

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