石井紘人のFootball Referee Journal

【石井紘人コラム】罵詈雑言ではなく、西村雄一主審のレフェリングを語ろう

2014FIFAワールドカップ開幕戦 ブラジル×クロアチア 西村雄一審判団評:2

 

「接触は本当にわずかだった。レフェリーの位置も悪く、良い角度に入ろうとしていなかったね。」

2014FIFAワールドカップの開幕戦となったブラジル×クロアチア戦。試合直後から「誤審だ」と批判が相次いでいるのが、西村雄一主審の69分のフレッジへのPKの判定だ。

 

これについて、日韓大会で、韓国×ドイツという組み合わせになった準決勝を公明正大なレフェリングで終わらせたウルス・マイヤー氏が、上述したように語ったとGoal.comは報じている。

 

私もマイヤー氏と同様で、PKという判定は厳しいものだと思う。ただ、その一方で、ロブレンの腕がかかっていたのも事実である。マイヤー氏は、その腕がフレッジには影響しておらず、フレッジのシミュレーションをとるべきだと主張するが、主審を務めた西村主審は影響したとしてPKをとった。

 

これを誤審の一言で片づけては、審判文化の成熟はない。

議論すべきは、影響していたのかどうか。そして、影響していなかったのならば、なぜ、西村主審は影響したと判断したのかがポイントになる。

 

個人的には、西村主審のポジションが串刺しになっており、フレッジがロブレンに体を預けたのが見えなかったのだと思っている。そのため、ロブレンの手が、かなり影響したように見えたのではないだろうか。

もちろん、それは私の見解であり、ロブレンのプレーをPKとする主審もいると思う。カルロス・バトレス氏をはじめ、FIFAにはこういったプレーをPKとする厳しい基準の審判員もいた。

誤審というのは、あきらかなミスに使われる。たとえば、実際に起こったものとまったく違うものが見えていたりすることだ。分かりやすい例でいえば、ゴールやオフサイドを巡る判定だろう。

確かに、チーム西村のレフェリングはベストではなかった。クロアチアのコバチ監督の「あれがPKなら、我々はサッカーをする必要がない。代わりにバスケットボールをしよう。残念だよ」という気持ちも分からなくもない。また、オフサイドの判定をはじめ、いくつか微妙なシーンもあった。

一方で、試合は素晴らしい内容だった。そこに西村雄一主審、名木利幸副審、相樂亨副審が貢献したというのも、加味すべきではないだろうか。

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