石井紘人のFootball Referee Journal

【無料/連載⑥種をまく指導者:坂本康博のN-S式トレーニング】1-0慶應義塾大学「ヘディングの高さを出すのは筋トレではない」

「まず一つは駆け引きを覚えさせたい。ヘディングはほとんど負けないんだけども、ヘディングに行くタイミング、前には強いけど下がりながらのヘディング、あるいはスタンディングでのヘディング。この三つを特訓している。それをだいぶ意識し始めたので、気持ちが強い分、前に前に行くんだけど、下がりながらのヘディングもディフェンスには必要です。入ってきたボールに対して、ちょっと引いてから出るとか、(N-S式トレーニングでは)ヘディングにも技術がある。ただ、当てるだけじゃなくて、その三種類を覚えないといけない。一つ目の前に出るヘディングは合格です。二つ目のお互いが競りながらのスタンディングでのジャンプ、三つ目の下がりながらのジャンプを身につけさせないといけない。」

 

―足元に対しての守備は如何ですか?

 

「アイツは高校時代から、スライディングばっかりやっていたので、練習中はスライディングを禁止にしています。スライディングをして、「俺はスライディングで仕事をしている」ってなりがちなんです。でも、スライディングをしなくても、しっかりと体を寄せて抑えることが大事で、そのトレーニングを徹底している。スライディングって、一か八かで危険なんです。スライディングをしないでボールを奪える(N-S式トレーニングの)技術を求めている。」

 

石井:あれだけ個人能力の高い慶應を無失点に抑えられた要因はどのように分析されますか?

 

「ある意味ね、焦ったんだと思いますよ。もう少し、繋いでくるチームだと思ったんだけど、前半からボンボン蹴ってくるから、助かりました。力がある子がいっぱいいる相手だったので、ウチの中盤はなかなかゲームメイク出来ないから、あそこで繋がれて、そこから裏に来られたら嫌でした。

あとは、初戦は一年生を使ったところを、今日は変えました。厳しいゲームになった時に、どうしても一年生はひけてしまうところがあるんですよ。前の選手も変えて、竜二の競りの後をと。」

 

石井:その澤上君の今日の評価は?

 

「悪くないですよ。今日は守備で頑張っていたし、何本かシュートを打ったことで、「やっぱりコイツは抑えとかないと」って相手も思ったでしょうし。点を取るのが一番いいんだけど、今日は守備で頑張ってくれた。やろうと思えば、ストッパーも出来ますし、実際に献身的にやってくれた。」

 

石井:立ち上がり指示を与えていたと思うんですけど、どの辺を?

 

「ボンボン蹴ってくるから、そこのカバーの部分を。そこさえ言っておけば、だったので、ある意味助かりました。そのカバーリングをしっかりしないと、繋がってしまうと、向こうは上がりが早いのでね。」

 

―嫌な相手でした、やりやすかったですか?

 

「一緒よ。どこ来ても一緒やね。力はあるチームなので、14番はしっかりと抑えようと。」

 

―二年振りの優勝を期待する出来栄えだったのでは?

 

「そんな甘いもんじゃないから(笑)すべての条件がそろわないと、勝てるもんではないんですよ。レフェリーもそうだし、その他のバックアップ体制も出来て、それで初めてです。力があるからと言って勝てる訳ではないんですよ、インカレは。グラウンドの条件もそうだし、いろんな条件が重なって、回ってくれて、トーナメントは勝てる。ましてや、次が三試合目でしょ。次のゲームが一番疲れる。(大阪から来ているため)金だってなくなる。一泊いくらとかも計算しないといけない。サッカーで売っている大学なら、かなりの予算をつけてくれるだろうけど、そうではないので。でも、負けて帰るよりは、借金してでも勝って帰った方がいい。御殿場の時之栖が食事もよくしてくれるし、温泉で疲れもとれるし、グラウンドもあるし。東京で、ホテルの移動を強いられ、練習場も探さないといけないよりは、ちょっと遠くても、御殿場の方がいいですね。」

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