石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事/審判批評ルール解説vol.12】なぜCL決勝でセルヒオ・ラモスは退場にならなかったのか  

スタディオ・サン・シーロで28日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ2015-2016決勝のアトレティコマドリード×レアルマドリード戦。1-1PK戦に突入した試合は、レアルマドリードが制したが、その試合の分岐点として90+3分のジャッジがあげられている。

79分に追いつかれてしまったレアルは、アディショナルタイムに獲得したFKでアトレティコを沈めようと両センターバックを前線に上げた。が、このFKのこぼれ球をアトレティコに拾われてしまい、伝家の宝刀であるカウンターを受けることになる。そして、ハーフウェーラインをこえた所でセルヒオ・ラモスがカラスコのドリブルをファウルで止める。当然、ファウルの笛が鳴り、アトレティコ側は【得点の機会阻止】での退場をアピールする。が、イングランドの若手トップレフェリーであるマーク・クラッテンバーグ主審は、警告を掲出。さらに、レッドを主張するガビにも【異議】ですぐさま警告を与えた。

なぜ【得点の機会阻止】が適用されなかったのか。

【得点の機会阻止】は『反則とゴールとの距離』『ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性』『プレーの方向』『守備側競技者の位置と数』の状況全てが揃って初めて適用される。

このシーンでいえば、『ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性』『プレーの方向』は当てはまる。だが、『反則とゴールとの距離』は遠く、さらに『守備側競技者の位置と数』では、カバーにダニーロが残っていた。

それに対し、「ダニーロがいようと、ファウルがなければ、アトレティコの選手も来ていたから21になる。そこでカラスコがパスを出せば、GK11だよ」という反論があるだろう。

しかし、Laws of the gameの得点の機会阻止に主観となる予測は含まれていない。あくまでも“今持っているボールホルダーが、GK11でシュートを打てるかどうか”がポイントである。ある意味では、昨季の2015J112節のガンバ大阪×川崎フロンターレ戦の岩下敬輔のファウルと同じで、ファウルを受けた側は納得できなくとも、審判団の判定自体は妥当である。

その他のオフサイドなど微妙な判定FBRJで批評したい

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