石井紘人のFootball Referee Journal

【石井紘人コラム】ビデオ判定について議論する  

今年3月、国際サッカー評議会(IFAB)は、ビデオ判定の試験導入を行うことを決定した。これを受け、来季からイタリアのセリエAが試験導入すると発表し、日本サッカー協会(JFA)も、Jリーグの導入に前向きな姿勢を示したという。フットボール史上最も大きなテクノロジーの導入となるビデオ判定だが、日本では思いのほか議論されていない。

ちなみにビデオ判定を行うことで、平均で811秒の空白が生まれると分析されているという。2013J111節の浦和レッズ×鹿島アントラーズ戦のような“試合が止まっている”ケースのビデオ判定であれば、空白の時間が生まれても問題ない。

しかし、2016J1 1st8節の鹿島アントラーズ×柏レイソル戦のように、微妙な判定があり、そこからのカウンターでゴールが生まれた“試合が進んでしまった”ケースでの空白の時間は取り戻すことが出来ない。

さらに、この微妙な判定が「オフサイドかどうか」「ゴールラインを割っているかどうか」という明確なラインがあるものならば白黒がつくが、このケースのように、「ファウルかどうか」になると、収拾がつかない可能性がある。足をぶつけたくないDFと、コースに入っていくFW。ここでの接触はグレーな要素が多分にあり、「多くの決定は主観的な(Laws of the game)解釈による。ビデオ判定を見た状況であったとしても、ファウルの取り扱いや罰則の程度に関しては違って解釈される」(ピエルルイジ・コッリーナ氏/Corriere della Seraより)。しかし、リプレイを見て、「足はかかっているが、不用意ではない」と説明を受けても、引き下がれないだろう。ファウルが認められれば、PKを貰えるだけでなく、失点もチャラになる。簡単に審判員の判定を受け入れる訳にはいかない。そうなれば、両チームだけでなく、スタジアムを巻き込んだ大騒動になるのが目に見える。

とは言え、このケースを恐れ、ペナルティーエリアでコンタクトがある度に試合を止めてはフットボールの醍醐味が失われてしまう。では、ビデオ判定をどのように導入すべきなのか?導入により、審判界にどのような問題が生じるのか?

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