石井紘人のFootball Referee Journal

【無料記事/モフセン・トーキー審判批評】W杯アジア予選サッカー日本代表×タイ:中東の笛はあったのか?  

UAE戦後とうってかわって、タイ戦後には日本代表のハリルホジッチ監督も、審判団への不満を語らなかったようだ。ということで、中東イランのトルキ主審のレフェリングをオンタイムで振り返ってみたい。

6分、香川をひっかけたファウル。10分にも長谷部への体に影響したため。12分のティーラトンが痛んだシーンは、互いに腕を出しており、フィフティというジャッジは妥当である。14分の原口や16分の吉田の守備も、ボールへの意図をしっかりと見極めた。トーキー主審にしては寛容で、良い基準とも言える。22分の長谷部への手もしっかりと見極める。

そんな中で迎えた28分、インプレー中に森重がボールの空気圧をアピールし、トーキー主審に試合を止めるように要求する。【Laws of the game2条:ボール】【欠陥が生じたボールの交換】には、【試合中、ボールは主審の承認を得ずに交換できない】とあるため、トーキー主審はボールを強くおすことを二回繰り返し、さらにバウンドも確認する。しかし、ボールに問題がなかったため、森重に警告を与えた。【主審を騙そうとする】でのシミュレーションか。いずれにしろ、【反スポーツ的行為】ではあるようだ。

その懲戒罰は理解できるが、39分の森重へのチャレンジは、最低でも厳しい注意が必要だったように思う。28分の流れで、森重には自作自演のイメージがついてしまったか。予測でしかないが、やはりレフェリーを懐柔するようなコントロールは必要である(【連載:Jリーグ紀行第6回】ノヴァコヴィッチの巧みなレフェリーコントロール)。

後半に入っても48分にも酒井の腕を見極めるなど基準を貫徹していく。54分の浅野のシュートがタイ選手の腕に当たったシーンは、予期していないボールであり、腕は不必要な位置にあるとはいえない。ハンドリングとしなかったのは、受け入れられない判定ではない。

83分、ペナルティエリア外でコーナーフラッグ方向へのこぼれたボールを西川がクリアしに行くが、タイ選手に奪われそうになった所で引っかけてしまい警告に。【プレーの方向】がゴールではなかったため、【得点の機会阻止】は適用せず、警告で収める。このジャッジからカードへのコントロールに切り替えたのか、85分には原口にかわされた所でキッキングしてしまったプラキット・ディープロムに警告。さらに89分にもディープロムは、あきらかに香川の足にキッキングしてしまい二枚目の警告で退場に。試合前の予測よりも思った以上に寛容なジャッジでレフェリングしたトーキー主審だが、緩い審判とまではいかない。基準を貫徹した懲戒罰で、退場する選手も生まれた。33分など分かり辛いジャッジもあったが、30分の酒井のチャージもタイ選手が自らコースに入ったということでノーファウルとしたように、日本人のいう“中東の笛”的なジャッジはなかったという意見で一致すると思う。そういった意味では、採点:3は与えられる。

 

~採点基準~

5:彼なしに試合はありえなかった

4:普通に試合を終わらせた

3:ミスにも見えるシーンがあったが、試合に影響はなかった

2:カード・得点に対する受け入れられない微妙な判定があった

1:ミスから試合に影響を与えてしまった

0:試合を壊してしまった

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