石井紘人のFootball Referee Journal

【無料/連載⑨種をまく指導者:坂本康博のN-S式トレーニング】3-0法政大学「コンタクトプレーは“激しく”ではなく“テクニック”」  

―法政大学をどのように見ていましたか?

 

「テクニックもあるし、早いし、ウチはディフェンスに徹しようと。それが良かったですね。相手の思うような入り方をさせなかった。」

 

石井:おっしゃられたように凄く良い入り方だったと思うのですが、そこで点も入ったことが明暗を分けたのでしょうか?

 

「そういう感じはあるんですけど、関東の大学との試合は最後の最後まで分からないから。」

 

石井:そんな中でのハーフタイムは何を指示されましたか?

 

2-0のゲームが一番危ないから、もう一回じっくりと辛抱して三点目を狙いに行こうと。守備のところから、きちんとプレスをかける。相手が攻めてくれば、こちらにもチャンスが出る。本当に効いた(ゲームを決めた)のは後半の一点ですよね。あれで相手に焦りが出た。三点目獲ってからは、法政大学がもっと回してくるかなと思ったのですが、高さであればウチは自信がある。そこで回すか、早いボールを入れるかで相手が中途半端になってくれた部分はある。相手の技術であれば、もっと回せるようにも思ったけども。ウチとしては、四点目は入れば良いけど、無理はしないで、外には開いていこうと伝えました。」

 

石井:三得点したことよりも、無失点の方が大きいのかなと。

 

「そうですね。けが人も多く、ボロボロの状態でここまで来ているので(苦笑)」

 

石井:今年のチームですが、大阪体育大学の持ち味である接触技術(参考記事:無料/N-S式トレーニングとは)は如何ですか?

 

「インカレのために御殿場に入ってから、新たに考え方を変えて、それを徹底しています。7割くらいは接触プレーに負けないという自信が出てきていると思う。細かいアプローチの方法とヘディングは負けないようになってきている。」

 

―その接触で、今日の試合の15分間を掴んだ。

 

「接触を嫌がるようでは絶対に勝てない。ファウルにならない接触の仕方をやってきているので、それが実り始めているかなと。得点が入ったことで落ち着いたとも思う。ただ、こんなに簡単に点が入るとは思っていなかったので、接戦のゲーム、1-0もしくは2-1と思っていた。ただ、法政は関西のチームとあまり試合をしていないと思うのですが、ウチは関西のチームというよりは独特のやり方をする。関東の大学対策での試合運びもするのでね。他のチームにない独自のことをやっているので、面食らった部分はあるかもしれません。」

 

―関東ばかり見ている僕は、競り合いの強さが違うなと感じました。

 

「競り合いというのは、いかに接触するかなんです。どのようにアプローチして寄せるかという話で、バーンって当たることだけが接触ではないんです。私は『接触は技術』だと解釈しています。その技術を身に付けないと。」

 

石井:そういった意味でも今日の試合では池上丈二君と末吉塁君の両サイドが凄く効いていたように思います。

 

「塁はリーグ戦からずぅっと良い調子を維持しているから、『知らない名前だ』と甘く見ていたらヤラれますよ。秘密兵器です。足速く、小回りもきくので、大きいDFはやり辛いでしょう。」

 

石井:先生が気にされる2トップの距離感や角度も非常に良かったのでは?

 

「はい。まぁ、あとは2トップが点をコンスタントに獲ってくれればね(笑)でも、今日の試合は終わってみれば完勝と言われるかもしれませんが、50年に一回くらいの試合ですよ。」

 

石井:秋山拓也君も凄く良かった。

 

「今日は…が付くかもしれませんが(笑)良かったですね。ただ、スピードはあまりないのと、やはり今日のGKは若いので、リードするような声が欲しかったかな。」

 

石井:菊池流帆君ですが去年はヘディングの競り方(参考記事:ヘディングの高さを出すのは筋トレではない)を指導されていて、今年の課題は何を?

 

「着地ですね。やはり飛んでから後ろ向きになるような着地をしないと、足から膝に負担がかかり、怪我に繋がる。足音でドーンとなると怪我の可能性が高まる。その改善をしているので、怪我は少なくなってきているかな。」

 

―今年のチームには一年生の時にインカレを制覇した選手もいると思うのですが?

 

「あまり関係ないです。というのも、一年生から出場して、確実に四年間試合に出続けるというにはなかなか難しい。『俺は一年からレギュラーだった』『優勝したらJリーガーになれる』という甘い考え方では伸びません。謙虚に練習して、徐々に力をつけようというのが薄いとダメです。」

 

―そういう時は選手をしかるんですか?

 

「叱らないけども、自分のポジションに自分より若い選手が入れば薬になる。」

 

―今年で大阪体育大学での監督生活が最後になります。

 

「死に場所を探しています(笑)まぁ狙ってインカレは制覇できない。色々な条件がそろわないと。力があるからといって勝てる訳ではない。“インカレを獲る”って狙って制覇したのは22年間で二回だけですよ。」

 

―インカレではどのようなサッカーを見せたいですか?

 

「サッカーはボールを奪って、ゴールを奪うスポーツです。ポゼッションやカウンターではなく、まずはボールを奪わなければいけません。」

 

―そのために激しくいくと。

 

「激しくではないんです。ボールを奪うために『激しく行け』とよく言われていますが、激しくいくだけでは意味がないし、ファウルにもなる。いかに相手に寄せて、ノーファウルでボールを奪うか。これは技術です。寄せる技術。そして、コンタクトスポーツなので接触する技術。こういった点を追求しています。」

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