石井紘人のFootball Referee Journal

【審判批評無料コラム:レフェリーブリーフィング後編①】新潟×FC東京戦大久保へのPK、仙台×鹿島アントラーズ戦のクリスランの警告は曽ヶ端の演技?

今回の隔週レポートコラム(参考記事:コラムインタビュー)は先日開催された日本サッカー協会(JFA)審判委員会による『2017  JFA レフェリーブリーフィング』(参考記事:前編はこちら)の後編をレポートする。

 

上川徹JFA審判委員会副委員長「次は(J18節柏レイソル×横浜Fマリノス戦の23分、左サイドからのクロスボールを金井貢史が腕に当ててしまったシーン)ですが、ハンドリングですね。なぜハンドリングと考えるか。腕はそれほどあがっていません。左サイドからボールが蹴られて、(ハンドリングが起きる争点までの)距離も長いです。(争点の前に)遮るような選手もいません。ボールの軌道も分かる。トラップしようとして手に当たったのかもしれませんが、それは技術の問題であって、軌道を予測できる時間が充分にある中で、手がボールに触れる。ボールが手に来たわけではない。PKと考えます。あとは警告するかどうか。ハンドリングがなかったときに黄色の選手が前を向いて受けられる、その受けるのを妨げたのであれば、警告が必要です。ただ、このシーンではボールは後ろ側に出ており、そんなに大きなチャンスになるシーンではないかなと。なので、手の位置だけではなくて、ボールがどこから来るのか、どれくらいの距離があるのか、予測できるボールなのか、そういった点を見ながらハンドリングか適用を考えます。

次です。この(J25節ロアッソ熊本×大分トリニータ戦の14分、シュートが竹内彬が上げた手に当たったように見えるシーン)映像を見て去年のゼロックス(参考記事:富士ゼロックススーパーカップ2016サンフレッチェ広島×ガンバ大阪飯田淳平審判団批評)を思い出しました。(守備側の)手の位置が嫌ですよね。去年のカンファレンスで西村(雄一)君が『手をあげて守備をするとハンドリングをとられるリスクがあると考えてプレーして頂けると』(参考記事:家本政明と西村がハンドリングを語る)と言っていましたが、このシーンもそうです。ですが、ボールが腕に当たっているという確認がとれないと、ハンドリングはとれない。我々はこのシーンは顔に当たっていると考えます。手に当たっていればハンドリングです。ボールのコースが変わるのは、顔付近を通った時です。ボールもスピードがあるので、腕ではなく、顔などの固いところに当たってコースが変わったように見えます。」

 

―確かに腕に当たったらボールは下に落ちそうですし、腕もブレそう。

 

上川「そうですよね。左手には当たっていないのは確認できる。ただ、難しいです。去年のゼロックスの後にレフェリーに『腕に当たったかハッキリわからなかったらノーファウルにしてください』と伝えました。腕が上がっているだけで反則としない。それは逃げではなく、本当にわからない難しいシーンはノーファウルとすると。ただ、このシーンでは、レフェリーは顔に当たっていると見極めました。終わった後の意見交換もしましたけど、映像で見てもはっきりしませんでしたが、『顔に当たっているのではないでしょうか。ただ、腕に当たっていればPKですよね』とも伝えました。」

 

―この後に選手が『腕に当たっちゃった』といった感じで地面に伏せていたと思うのですが。

 

上川「痛くて伏せていたのではないのでしょうか(笑)」

 

―レフェリーは本人に腕に当たったか聞かないのですか?ドイツでは結構ありますよ。テレビに映って、見えてしまうから選手も嘘をつけないと。清武も『自分に当たったのでゴールキックです』とレフェリーに伝えて、『フェアプレーだ』と褒められたことがありました。

 

上川「そうなると助かりますよね。」

 

―(審判が選手に聞くように審判側から)やってみたらどうですか?

 

小川佳実JFA審判委員長「(ボールアウトなどで選手が申告してくれるのはうれしいが、判定全体に取り入れると難しい部分もあるのが)レフェリーがPKの判定を(正しく見極めて)して、攻撃側のチームの選手が『些細な接触だった』とPKの判定が微妙とするコメントすることもあります。」

 

―レフェリーは選手のコメントを反映させない?

 

小川「試合中に反映させるのは難しいです。たとえば手にボールが当たったらハンドリングという訳ではないですよね。その解釈もあります。もちろん、ゼロックスの丹羽選手の時のように当たっていなかった時、当たっていないというコメントを信じて判定を変えられれば(ベストだとは思うのですが)。では最後、原さんいらっしゃられているので、お願い致します。」

 

原博実Jリーグ副理事長「この間のクラシコでもオフサイドが議論になりました。番組でオフサイドかどうかだけではなく、セルヒオラモスへのジャッジも議論して、それぞれ意見も違う訳です。審判団はそれを一瞬で判断しなければいけない。僕、たまたまアシスタントレフェリーの裏で見ていたのですが、スアレスやクリスティアーノロナウドがビューンと抜け出すと、オフサイドかどうか分からない。その前の日にはビジャレアルの試合を見たのですが、最後の得点が相手チームは『ハンドだ』と。得点を決めた選手も、喜びつつもどこか微妙という表情で(笑)それも次の日、映像で見ると腕に当たっているのが分かる。本当に難しいなと。我々と審判委員会も、ここでやったようなことを(パブリックな)チャンネルでやって、(ファンの)皆さんの意識をあげていければと。」

 

小川「今日はありがとうございました。やはり良い判定は、レフェリーもアシスタントレフェリーも良いポジションにいます。良いポジションをとるために必要なこと、アシスタントレフェリーはスピード、角度です。レフェリーは読む力です。100m10秒台で走れても、読む力がないと良いポジションはとれません。ゲームを読む力は本当に必要だと思いました。見て頂いた15の事象も良い判定は近いポジションにいて、近さだけでなく、角度も良い。そういったトレーニングを上川さんを中心に行っています。ミスジャッジがあれば、フィードバックして、トレーニングに活かしていきます。今回のブリーフィングも、皆さんを通していろいろな情報が伝わっていけばと思いますし、JFAとしてHPでも情報を出していければと思います。それを続けることで、ミスジャッジに不満があっても、判定の合っている、合っていないだけでなく、状況を見て(レフェリーも難しい判定だったことを)受け入れてもらえるように。ただ、それを(ミスが)レフェリーが怠っていることで生まれたのであれば、批判されても仕方ない。それと昨日の夜、IFABサイトに競技規則の英文が出ました。JFAも和訳は終わっていて、本に写す作業をしています。昨年、大改訂があって、今回で一段落です。改定のキーワードは、競技規則を通じて、競技のイメージを上げる。サッカーを発展させる。その中に2022年までの戦略があるのですが、『プレーフェア』、『フェアプレー』を逆にして『プレーフェア』とされている。競技規則は審判だけのものではなくて、サッカーのものということですよね。本日はありがとうございました。」

 

ヴィッセル神戸×柏レイソル戦の岩波への二枚目の警告、アルビレックス新潟×FC東京戦のホニのシミュレーションと大久保へのPKは?)、ベガルタ仙台×鹿島アントラーズ戦のクリスランの警告はこちらを (文中敬称略)

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