石井紘人のFootball Referee Journal

無料コラム審判批評:なぜFIFAワールドカップのレフェリーも務めたナワフ・シュクララ主審が不可解なゴール取り消しを?アジアチャンピオンズリーグAFCのVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の問題点【ヴィッセル神戸×蔚山現代】

やはり異常だったAFC U-23選手権のビデオアシスタントレフェリー(VAR)本来の役目は「ベストの判定ではなく、9割がミスと思うジャッジのみ介入」【審判批評コラム】

 AFC U-23選手権で露呈したアジアのレフェリーの経験のなさ。

アジアチャンピオンズリーグ準決勝ヴィッセル神戸×蔚山現代戦はその一言に尽きる。

【石井紘人コラム】飯田淳平

ナワフ・シュクララ主審は決して三流の審判員ではない。

2007年に国際審判員になると、2011年には登竜門であるFIFA U-17ワールドカップで割り当てを受け、この年にはアジアの歴史的な一戦、北朝鮮代表×日本代表の主審も務めた。

さらにFIFAワールドカップ2014ブラジル大会でオーストラリア×スペイン戦とポルトガル×ガーナ戦、FIFAワールドカップ2018ロシア大会でポーランド×セネガル戦とパナマ×チュニジア戦の割り当ても受けている。グループリーグのビッグマッチや決勝トーナメントの割り当てを受けられなかったため、一流とは言えないかもしれないが、アジアにおいては信頼できるレフェリーであった(Nawaf Abdullah Ghayyath Shukralla審判批評)。

そんなシュクララ主審が、なぜ“あんな”ビデオアシスタントレフェリー(VAR)からのオンフィールドレビュー(OFR)で判定を変えてしまったのか。

一つは、コンタクトプレーは何度も見るとファウルに見えてしまうから。もう一つは、VAR、自分と同じレフェリーの目がビデオレビューでファウルだと言っていることから、“ファウルを探しにいってしまった”のだろう。

そもそもでシュクララ主審は、最初のジャッジでは安井のカットをフットボールコンタクトとしている。蔚山現代選手たちも特にアピールしていない。

そんな中で、VARはトリッピングを進言した。VAR担当からすると、“何で気付けなかったんだ”と後々言われたくないため、気になる点は主審に委ねてしまったのだろう。本来は「確実かつ明白な誤審」もしくは「重大な見逃し」の疑いがある場合だけなのに。

JリーグのVARビデオアシスタントレフェリーは2名で画面の数と運用は?「VARはベストの判定ではなく、9割がミスと思うジャッジのみ介入」【レフェリーブリーフィング前編:審判批評】

AFC U-23選手権のVARについて、扇谷健司JFA(日本サッカー協会)審判委員会トップレフェリーグループマネジャーが「常に正しいジャッジを求めようとした結果が、色々な場面での介入になったのかもしれません」(参照リンク)と評していたのが、言い得て妙だと思う。

世界のVAR元年、多くの欧州リーグでVARが介入し過ぎて、ファウルを取りすぎる事象が多発した。AFCでも同じ現象が起き、かつUEFAとのレベルの差が75分のゴール取り消しとなってしまった。

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