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奇跡的に歯車が噛み合った全緑の男たち。支配力で勝る愛媛FCを集団性と決定力で凌駕し、貴重な3ポイント奪取に成功【J2第37節「FC岐阜vs.愛媛FC」特大レポート】

 

ゴール裏でサポーターに向け、言葉を贈る當間建文。

 cinema staffによるFC岐阜オフィシャルサポートソング『HYPER CHANT』が流れ、感動を噛み締めるかのような空気のなか、ゴール裏のサポーターに促されてトラメガを手に取った當間建文は訥々(とつとつ)と語り始めた。

「えー、あまりこういうスポットライトが当たるタイプではないので、ちょっとやりづらいですけど。えーと、これでやっとスタートを切れた状態だと思うんですね。やっぱりサポーターのみなさんと一丸となって、選手も一丸とならないといけないと思うので。地道に勝点3を積み上げて残留に向けて全力でやりたいと思っているので、いっしょにがんばりましょう。よろしくお願いします」

 そして、囲み取材の場にやってきた當間に対してこの様子を持ち出し、サポーターの信頼についてどう思うかと訊ねると、こう答えられた。

「(他人からの)信頼は自分で判断するものではないから難しいですけど。すっごい前(スタンドの最前)で『お願い、お願い』と(サポーターに)言われて出たので──あまり喋ったことはないですけど、あまり得意ではなかったけど(苦笑)、そうですね……。でも、前回(山形で)ああいう試合をしたときに、罵声を浴びせられても仕方がないなという試合であっても、ぼくらの、選手寄りの気持ちになって喋ってくれるサポーターのみなさん、声を嗄(か)らして言ってくれているものに対して、情けないと思いますし、現状はひとつになって戦わないといけないと思うので。今日だけですけど、そういう面では今回はよかったのかなと思います」

當間のひとヘディング、ひと蹴りが勝利を引き寄せた。

先制点が決まり、喜び合う。

 台風19号襲来のため、11日から14日まで留め置かれた山形で、FC岐阜はシュート0という完敗を喫した。試合後には、あまりの惨状に、さらに奮起するようサポーターが必死に訴えたが、その想いは無駄にはならなかった。少なくとも愛媛FC戦におけるただ1勝に向けて、クラブとチームは動き、選手もやらなければいけないことを感じ取った。10月20日のJ2第37節は、試合中も試合後も、あちらこちらで選手同士が話し合う姿が見られた。風向きが変わった。この風を捉え、あと2試合、突き進まなければならないだろう。

◆愛媛に敗戦をもたらした岐阜の泥臭さ

 10月20日、FC岐阜は岐阜メモリアルセンター長良川競技場でJ2第37節に臨み、愛媛FCと対戦。2-0の勝利を収め、勝点を29に伸ばした。この結果、21位の栃木SCに勝点1差、20位の鹿児島ユナイテッドFCに勝点3差と迫っている。なお岐阜は得失点差で鹿児島を上回っていて、鹿児島と勝点で並ぶと岐阜のほうが上の順位になる。

 前半は愛媛が圧倒的にボールを握ったが、後半は岐阜が攻勢に転じた。後半20分、川西翔太の蹴った右コーナーキックを甲斐健太郎が頭で折り返し、當間がさらにヘディング。このこぼれ球を當間自身が慌てず正確にゴール枠内へと流し、岐阜が先制した。
 残り25分間は守りに徹するには長い時間。アグレッシブな姿勢で戦いつづけ、失点を回避し、2点目を狙いつづけた。
 そして後半33分、川西のロングパスめがけて走り込んだ柳澤亘が倒され、PKを獲得。これを川西がゆっくりとした動作で蹴り込み、点差を2点に拡げた。
 パスをつなぐことはできるが決めることができない愛媛は勢いを失う。闘気を前面に押し出した岐阜イレブンはしぶとくゴールを守り、2点差を維持したままタイムアップの笛を迎えた。
 球際に厳しく、ゴール前で力強く。泥臭い戦いぶりが愛媛を敗北に誘導した一戦だった。

川西翔太、PKの瞬間。

ベンチへと駆け寄る川西、そして藤谷匠。FC岐阜はひとつのチームになっていた。

 愛媛は確かに巧かった。ボールを岐阜よりも長い時間、支配した。個人では10番の神谷優太が圧巻の技術を誇っていた。ボールを奪おうと食いつくとかわされてしまうため岐阜の選手たちはうかつに接近できず、モーゼの眼前で海が割れるがごとく通路が空き、ボールを危険な位置まで運ばれた。一見、危険だった。しかし肝心要のゴール前での決定力が、彼らには不足していた。その反対に、岐阜はゴール前での攻防だけは負けなかった。
 後半33分、神谷OUT。岐阜の戦略的な勝利を意味する交替のように映った。

 愛媛の川井健太監督は敗因をこう語った。
「チャンスは特に前半、たくさんつくれたと思います。ただ前節もそうなんですけれども、チャンスをつくれてはいても入ってはいない、そのことにシステムは関係ないことが証明されたのかなと思います。そこの部分はもうひとつ、我々が力をつけないといけないんじゃないかと思っています」

◆愛媛の長所と短所を認識していた北野監督

 軽装というか私服の理由は──と問うと、北野誠監督は

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