「football fukuoka」中倉一志

アウェイの旅2015 札幌編(その1)

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3月20日。新千歳空港に降り立ち、ひんやりとした空気に身を包まれると、北海道にやって来たんだなという実感がわいてくる。気温は3度。しかし「寒さ」は感じない。感じるのは「冷たさ」。これこそが北海道の空気だ。そして、新千歳空港から札幌に向かう車窓から見える景色も、明らかに私たちが見慣れている風景とは違う。まだ雪が残るせいだけではない。広がる野原と生い茂る針葉樹林は、ここが大自然に囲まれた北の大地であることを意識させられる。「日本は広いな」。思わず、そんな言葉が口を付く。

そして札幌に降り立つと、複雑な気持ちが湧いてくる。福岡は香椎御幸町生まれの私だが、札幌は中学校から大学までの10年間と、社会人になってか最初の赴任地として4年間の、最も多感な時期を過ごした町。福岡が「産みの親」ならば、札幌は「育ての親」にあたる。できることなら、福岡の勝利はもちろん、札幌にも勝ってほしい、そんな気持ちが渦巻く。しかし、勝負の世界には勝者と敗者しか存在しない。そういう意味では、私にとっては一番戦いたくない相手とも言える。

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だが、センチメンタリズムに浸るのは勝負の世界に生きる者としては失格だ(別に私が勝負の世界に生きているわけではないのだが・・・汗)。21日、気持ちを切り替えて札幌ドームへと向かう。そして、まずは札幌ドーム前に店を構える「福八」の暖簾をくぐる。「敵に勝つには、まず敵を食べろ」ということで、この日の昼食は札幌ラーメンに決めていた。もちろん、札幌と言えば味噌ラーメン。ほどなく大きなどんぶりが運ばれてくる。博多ラーメンに慣れ親しんだ者にとっては大盛り過ぎる。

具は、札幌ラーメンには欠かせないもやしと、大振りのチャーシュー、そしてしなちく。七味唐辛子を振り入れて、まずはスープを飲む。濃厚さが特長の味噌ラーメンだが、ここのスープは、やや酸味がかったあっさりした味。しかし、それでいてコクがある。そして麺は、これも札幌ラーメンの特長である黄色い縮れ麺。それにスープが絡んで札幌ラーメンの味を作り出す。一杯800円のラーメンは、福岡県民、市民にとっては高すぎるが、納得の味だ。気がつけばスープも残さずに完食。これで、札幌にも勝てるはずだった。

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札幌はナザリト、都倉に対するロングボールが攻撃の始まり。それを考えれば、前から行って蹴られ、セカンドを拾われるのが一番怖いのは分かっていた。反面、札幌の守備は、ブロックをセットするものの、福岡同様にプレスのかけどころが曖昧で、相手を自由にしてしまうという課題を抱えている。セカンドボールの奪い合いに勝てれば、試合を支配できる可能性は高い。守備重視で低く構えるのか。それとも、ある程度のリスクを背負ってセカンドボールの奪い合いを挑んでゲームの支配権を奪いに行くのか。私は後者で行くのではないかと考えていた。

井原監督の決断は、低く構えるというもの。正直、私には意外な選択だった。結果は1-2の敗戦。どちらの決断が正しいのかは分からない。そもそも、サッカーは結果論で何でも語れるスポーツであり、結果を見てからどうこう言うのは後出しジャンケンのようなものだ。また、勝負の世界に「たられば」はないが、最後の笠川のミスがなければ勝点1を持って帰れた可能性は高い。でも、福岡が前に出た後半に逆転の流れを作ったことを考えれば、先手を打った方が良かったのではないかとの思いは消せない。

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それでも、試合が終わってしまえば切り替えて次に向かうしかない。「3連敗は変えられない。気持ちを切り替えて、ある意味、開き直って、結果にこだわってやりたい」。そんな末吉隼也の言葉がうなづきながら、札幌ドームを後にする。そして、切り替えるために北の大繁華街すすきのへ。今日は高校時代の仲間がオーナーを務める「なむら」で同窓会だ。みんな、少し(だいぶ?)ふくよかになった以外は、あの頃と変わらない。乾杯が済めば、その瞬間に40年前に逆戻りだ。

そして、北海道に来たからには海鮮料理。甘エビをはじめ、新鮮な刺身の甘さに舌鼓を打ち、上品な味付けの桜鯛の煮付けに、ほっとした気持ちになる。そして海鮮鍋。ホタテ、甘エビ、つぶ貝、ジャガイモ、かぼちゃ、玉ねぎ等々の北海道の味覚を丸ごと蒸し焼きにしたものだ。特にお勧めはつぶ貝。臭みは全くなく、甘味が強く感じられるのは、それだけ新鮮な証拠だ。締めは「うにの土鍋ご飯」。ビールと美味いもので腹が満たされた頃には、敗戦の悔しさは、どこかに消えていた。

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(その2「B級グルメ編」に続く)

【中倉一志=取材・文・写真】
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