「football fukuoka」中倉一志

J2第7節 大分-福岡プレビュー

150410_03

2015明治安田生命J2リーグ第7節
対戦:大分トリニータvsアビスパ福岡
日時:4月11日(土)16:00キックオフ
会場:大分銀行ドーム

3連敗のあとの3戦負けなし。福岡は、少しずつ、少しずつ、チーム状況を上げている。システムの変更、戦術の徹底等々により、チームとしてやることが明確になり、自分たちのリズムで戦える時間帯が増えてきた。まだ課題はある。やらなければいけないこともある。それでも、少しずつ、チームに変化が訪れていることは間違いない。そして11日、福岡は大分銀行ドームに乗りこんで、大分トリニータとバトル オブ 九州を戦う。いまの変化を力に変えるために、勝たなければいけない試合だ。

歴史を変える1戦に
福岡にとって、大分とのバトル オブ九州の歴史は屈辱以外の何物でもない。初対戦は2002年のJ2開幕戦。2年目を迎える小林伸二監督の下でJ1昇格を目指す大分と、クラブ史上初のJ2降格となった福岡との対戦というシチュエーションだったが、互いのチーム状況を反映するような試合は1-2で敗戦。その後も勝てない対戦が続き、ここまで12回戦って1勝4分7敗。アウェイでの戦いに限れば3分3敗と一度も勝利がない。しかも、大分銀行ドームで記録した得点はわずかに1だ。

そもそも、ダービーマッチは、互いの意地と誇りをかけた試合。それはチームだけではなく、それぞれのホームタウンの誇りさえかかっている。そんな試合は、互いの順位や実力、あるいはチーム状況に拘わらず、勝たない限り意味がない。まして、この屈辱的な成績を前にすれば、たとえアウェイの戦いであろうと、勝点3以外に必要とするものはない。クラブ創設20周年を迎え、新生アビスパとして新たなスタートを切った今シーズン、大分との屈辱の歴史にも幕を下ろさなければいけない。

もちろん、簡単な試合になるわけもない。意地と誇りがかかっているのは大分も同じこと。まして、自分たちのホームで敗れることは彼らにとっては許されないこと。現在1勝1分4敗の21位と低迷しているが、その時点の成績やチーム状況が、ダービーマッチにおいては何も意味しないのは過去の歴史が物語っている。この試合にすべてをかけて臨んでくることは明らかだ。おそらく、過去の対戦以上に、気持ちと気持ちが激しくぶつかり合う試合となるだろうが、それも望むところだ。

球際の戦いが勝敗を分ける
「今シーズンのスタートは我々と一緒で、かなり苦戦しているが、内容自体は悪くない。タレントもいるし力のあるチーム」(井原監督)
その言葉通り、大分の個の能力は高い。開幕後、急きょC大阪から獲得した永井龍を始め、エヴァンドロ、風間宏矢、更にはダニエル、岡本英也ら、特に攻撃陣には豊富なタレントが揃う。それをコントロールするのは千葉から移籍してきた兵働昭弘。そして、両サイドには、松本怜、西弘則と、前への推進力に優れたアタッカーが構える。特長は奪ってから縦に速い攻撃。それにいかに対応するかは大きなポイントだ。

だが、井原監督は真っ向勝負を示唆する。
「引いて守るのではなく、アグレッシブに守っていかないと逆に失点してしまう」
やり方は変えない。ラインの高いコンパクトなブロックを形成し、FWのチェイシングを合図に中盤、最終ラインが連動して、アグレッシブにボールを奪いに行く。そして、奪ったボールをシンプルに前線に供給。そのセカンドボールに坂田大輔、城後寿、あるいは末吉隼也、鈴木惇のボランチがからんでゴールを目指す。

ビルドアップに課題を抱える福岡の現状を考えれば、攻撃面では、いつものようにシンプルにボールを前に送る戦いになることは間違いないだろう。その中では、セカンドボールにどれだけ絡むことが出来るのか、そして、1対1の球際で優位に立てるのかが勝敗の鍵を握っている。そして、ここまで綿密な分析と、それに基づいた周到な対策を施してきた井原監督が、どのような対策を立てているかも、極めて重要な要素になりそうだ。

末吉の意地 城後の想い
注目したいのは昨シーズン、大分の主力選手としてプレーした末吉隼也だ。本人も「J1で試合に出られなくて、悔しくて、自分のプレーを取り戻そうと、大分で1年間頑張ったつもり。一緒に戦ったメンバーも多く残っているので、そのメンバーには負けたくない気持ちがある」と話す。中盤の攻守の要として井原監督に請われて、今シーズンから福岡に戻ることを決めたが、大分戦は、チームの期待に応えるには絶好の舞台。どんなプレーで気持ちを表現するのか楽しみだ。

そして城後寿。ゴールだけが攻撃陣の仕事ではないが、ここまでのプレーは、必ずしも城後本人の力を発揮できているとは言い難い部分もある。「チームの事を考え過ぎるあまりに、自分の個性をなかなか活かせていないと思う。エゴイストになってもいいのではないか」と城後自身も自らを振り返る。キャプテンとしての重責を担いながらプレーすることは簡単ではない。しかし、その中で自身のベストパフォーマンスを発揮することに、さらなる成長があり、井原監督をはじめ、首脳陣も、その部分を期待している。大銀ドームのピッチの上で躍動する姿を見てみたい。

【中倉一志=取材・文・写真】
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ