「football fukuoka」中倉一志

J2第14節 福岡-岡山レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第14節
日時:2015年5月17日(日)13:03
会場:レベルファイブスタジアム/5,018人
結果:アビスパ福岡1-0ファジアーノ岡山
得点:[福岡]濱田(66分)

アビスパ福岡は17日、ホーム・レベルファイブスタジアムでファジアーノ岡山と対戦。堅固な守備をベースに戦う岡山に対し自分たちの形を作れない福岡だったが、後半に入って中盤のポジションを修正。これで試合の流れを引き寄せると、井原監督の「今日はセットプレーが勝敗の分かれ目になると思っていた」という言葉通り、66分にセットプレーの流れから濱田水輝のゴールで先制。その後は前への姿勢を強める岡山の攻撃を凌ぎ切って完封勝利を飾った。福岡は次節(5/24)、ホーム・レベルファイブスタジアムでカマタマーレ讃岐と対戦する。

ミラーゲームは我慢比べの戦い
3-4-2-1の布陣。粘り強い守備。高い位置からの連動したプレス。そしてハードワーク。共通点をいくつも持つ福岡と岡山の対戦は、戦前から完全なミラーゲームと見られていた。そんなゲームは局面の激しいバトルで幕を開ける。10人のフィールドプレーヤーがマッチアップする戦いでは、チームとして戦う前に、目の前の相手に負けないことが大前提。ひとつのボールを争って、ピッチのあちこちで選手がぶつかり合う。ここから先は譲らない。そんな想いが、ひとつ、ひとつのプレーから伝わってくる。

そして、立ち上がりのせめぎ合いを経て、最初にボールを握ったのは福岡。岡山陣内でのプレーが続く。しかし、岡山の守備網は予想した通りに堅い。高い位置からの連動したプレスは、確実に福岡から自由を奪い、やや低い位置に作るブロックには全く隙がない。岩政大樹とのマッチアップを避けてボールを呼ぶ中原貴之には、久木田紳吾、田所諒が激しくチャージ。ハイボールの競り合いで生まれるセカンドボールは、中盤の出足も鋭く回収して、福岡の二次攻撃を許さない。

そして、20分を過ぎたあたりから、岡山がじわじわと試合の主導権を奪う。2シャドーの押谷祐樹と、U-21日本代表の矢島慎也が、巧みなポジショニングでバイタルエリアに入り込んで縦パスを受け、自由に中盤を動き回って攻撃を活性化させる。しかし、福岡はバランスを崩しかけながらも1対1の局面は譲らず。岡山も、そこから先の手立てが見つけられない。そして0-0のまま前半が終了。福岡が2本、岡山が1本というシュート数が、膠着した前半の戦いを物語る。

狙い通りの勝利
しかし、思うような時間を過ごせなかった前半にも、福岡の選手たちは慌てるそぶりを見せない。「苦しい展開になっても、前半を耐えれば絶対に後半にチャンスが来るということは、今までの積み重ねで分かっていた」と話すのは濱田。そして、井原監督は中盤の布陣を、アンカーに末吉隼也、その前に城後寿と鈴木惇が並ぶ形に変更する。バイタルエリアをカバーするとともに、末吉をプレッシャーから解放して攻撃を活性化させることが狙いだ。

これが奏功する。意図的にロングボールを放り込んでくる岡山の攻撃に冷静に対応すると、じわじわと主導権を奪回していく。そして66分、福岡のストロングポイントであるセットプレーからゴールが生まれる。一度はクリアされたボールを拾って右サイドへ展開。鈴木のラストパスは押谷に当たってコースが変わったが、そこで濱田がフリーで待っていた。次の瞬間、右足インサイドで合わせたボールがゴールネットに突き刺さる。「後半はショートコーナーも含めて、少しボールを動かして相手を動かしておいてから、相手のセカンドアクションへの対応を待とうということだった」(井原監督)。その狙い通りに奪ったゴールだった。

ここからはいつものパターン。1点を追って前への姿勢を強くする岡山に対して粘り強く対応。ラインを下げてしまうという課題も残ったが、危ない場面では体を張ってシュートを弾き返した。最後は、途中出場の酒井宣福、坂田大輔が前へボールを引き出す姿勢を見せて試合を終わらせた。「岡山は堅い守備をするというイメージがあったので、90分間で1点取れればいいかなという考えだった。我慢比べの試合になったが、自分たちの強みであるセットプレーからの二次攻撃で点を決めることが出来て良かった」と、末吉は胸を張った。

我々は、まだ何も勝ち得ていない
これで福岡は11戦無敗。チームには簡単にはやられないという雰囲気が漂い始めた。課題は多い。やるべきことも、まだまだ多く残されている。しかし、どのようにして目の前の試合を勝つかという点において、チームの共通理解が醸成され、それぞれの役割が明確にされている。それを支えているのが、監督、ならびにスタッフによる対戦相手の緻密な分析と対策。我慢比べのギリギリの試合ではあったが、それも想定通り。言いかえれば、狙い通りの勝利だった。

しかし、チームに浮かれる様子は少しも感じられない。ミックスゾーンに現れる選手たちの表情は緩むことはなく、勝利を必要以上に喜ぶ姿もない。それは、磐田、C大阪に勝利した時も変わらず、常に自分たちを冷静に振り返る選手がいる。「監督からは『勝てているけれども、上に行かなければ、この勝利は何の意味もない』といつも言われているし、まだ何も勝ち取っていないと、常にみんなで話している」(城後)。そして、変わらぬ姿勢で、次節は讃岐を迎え撃つ。昇格を目指すチームには勝利しか見えていない。

【中倉一志=取材・文・写真】
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