「football fukuoka」中倉一志

J2第20節 長崎-福岡レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第20節
日時:2015年6月28日(日)18:03
会場:長崎県立総合運動公園陸上競技場/5,193人
結果:V.ファーレン長崎0-0アビスパ福岡

アビスパ福岡は28日、アウェイ・長崎県立総合運動公園陸上競技場でV.ファーレン長崎と対戦。金沢戦の反省から「ひたむきさ」を求めて戦う福岡は、球際、セカンドボールの奪い合い、1対1の局面でアグレッシブさを発揮。チャンスらしいチャンスを与えずに長崎を無得点に抑えた。しかしながら、その守備を攻撃に結びつけることが出来ずに無得点。試合はスコアレスドローで終わった。福岡は次節(7/4)、アウェイ・味の素スタジアムで、東京ヴェルディと戦う。

守備に復活の兆し
自分たちの原点を取り戻す。それが、この日の福岡のテーマだった。「彼ら(金沢)のひたむきな姿勢に、俺達は負けているんじゃないの?」。そんな井原正巳監督の問いかけで始まった今週のトレーニングで強調されていたのは、最後まで走り切ること、1対1の争いで負けないこと、セカンドボールや球際の争いで激しく行くこと等、ハードワークに徹するというもの。23日に行われた紅白戦では仲間を激しく鼓舞する声が雁の巣球技場に響き渡り、互いに激しくぶつかり合う姿が見えた。

そして迎えた第20節長崎戦。試合は長崎の攻勢を受ける形で始まった。長崎のファーストチョイスは前線へのロングボール。3試合ぶりに先発に復帰したイ ヨンジェを起点にして福岡ゴールを目指す。一方の福岡は、その長崎の勢いに自陣に押し込まれた。ボールを奪っても、簡単に取り返されて連続攻撃を受ける苦しい時間が続く。しかし、その中でも、1対1の局面では激しくチャージ。イ ヨンジェに対しては、イ グァンソン、濱田水輝が激しくコンタクトしてシュートチャンスを与えない。

そして、最初の15分を凌ぎきったことで、試合の流れが福岡へと傾いて行く。流れを引き寄せたのは、試合前に確認していた豊富な運動量と、球際の強さ、セカンドボールに対する出足の速さだった。「それを、この1週間で意識付けさせられた。その点に、金沢との差があったと言われていたので、みんな意識出来ていた」と話すのは鈴木惇。そして、その姿勢こそが11戦負けなしを支えた力だった。40分に訪れた決定機に放った金森のシュートは惜しくもゴールを外れたが、時間の経過とともに福岡が試合を支配していく。

ゴールは遠く 攻撃に課題
後半も、球際とセカンドボールの奪い合いで強さを発揮する福岡がゲームの主導権を握る。終盤はパワープレー気味に出る長崎に押し込まれたが、全員体を張ってゴールを許さなかった。3試合ぶりの無失点ゲームに、「いい時だった頃の守備を、もう一度思い出そうということで臨んだ試合。ディフェンスラインの距離感であったり、中盤とのコンパクトな陣形の中から、アグレッシブに守備をしていくところ、ポジションの修正等は、ある程度やれた」と井原監督は手応えを口にする。

しかし、その一方で攻撃には課題が残った。試合展開そのものは、粘り強く守り、いい守備からのいい攻撃を活かすという福岡の戦い方そのものだったが、この日は、失点数がJ2で5位(16失点)の長崎が相手ということもあり好機を活かせず。決定機に放った40分の金森、57分の城後寿のシュートもゴールを捉えることが出来なかった。しかしながら、11戦勝ちなしの時との比較で言えば、特別に悪かったと言うことではない。これまでも少ないチャンスを確実に決めてきたのが福岡。この日も過去と同じように、いい守備から攻撃は作ったが、それを決め切ることが出来なかったということだ。

攻撃の部分は1年をかけての修正課題と話している井原監督は、セットプレーや、中原貴之をターゲットにしたシンプルな攻撃で得点を重ねたきたが、気になるのは、11戦負けなしという結果を残したことで、福岡の攻撃のストロングポイントが研究されて来ていること。この日の長崎は、中原貴を徹底マーク。激しいコンタクトで攻撃の起点を作らせてくれなかった。今後、他チームからも同じような対策を施されることは確実で、ウェリントンの起用も含めて、井原監督がどのような手を打つのかが注目されるところだ。

進化が問われる東京V戦
試合後のミックスゾーンでは、自分たちの展開に持ち込みながら勝利を得られなかったことで、選手たちは一様に悔しい表情を見せた。しかし、この日の最大のテーマは、負けなかった頃の福岡の戦い方を獲り戻すこと。そういう観点で言えば、球際、セカンドボールでの粘り強さを発揮することが出来たのは、一歩前進と捉えていいだろう。もちろん、勝点3が欲しかった試合だが、アウェイでの勝点1は決して悪くはない結果。これまでのように、結果を正面から受け入れて、自分たちを整理することから次の一歩が始まる。

そして、鈴木惇は次のように語る。
「東京V戦の結果によって、今日が良かったのか、あるいは、まだ足りないのかが分かる」
金沢戦の反省を活かして、自分たちのサッカーを再び表現したのが長崎との試合。それは正念場に追い込まれた危機感が為せる技だった。しかし、長いリーグ戦で生き残るためには、どんな状況にあっても、コンスタントに自分たちのサッカーを表現することが何よりも求められる。この日の内容が一過性のものなのか。それとも、自分たちの戦い方を取り戻した結果の内容なのか。それは、次節、東京V戦によって証明されることになる。

【中倉一志=取材・文・写真】
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