「football fukuoka」中倉一志

J2第22節 福岡-北九州レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第22節
日時:2015年7月8日(水)19:34
会場:レベルファイブスタジアム/7,082人
結果:アビスパ福岡4-2ギラヴァンツ北九州
得点:[福岡]金森(7分)、城後(19分)[北九州]井上(23分)、[福岡]鈴木(47分、53分)、[北九州]小手川(60分)

アビスパ福岡は8日、ホーム・レベルファイブスタジアムでギラヴァンツ北九州と対戦。7分の金森健志、19分の城後寿のゴールで早々と2点のリードを奪ったアビスパは、その後も優位に試合を展開。一時はギラヴァンツに1点差に迫られたが、鈴木惇のふたつの直接FKからのゴールでリードを広げると、最後は落ち着いてを試合をコントロール。ギラヴァンツの追撃を60分の1点に抑えて、約1か月ぶりとなる勝利を手にするとともに、順位を5位に上げた。アビスパは次節(7/12)、アウェイ・ケーズデンキスタジアム水戸で、水戸ホーリーホックと対戦する。

目指す形を見せた前半
「ギラヴァンツだけには負けてはいけないというアビスパ全体としての想いがある。それは強く持っていた」。鈴木惇の言葉に代表されるように、クラブ、ファン、サポーター、そしてアビスパの関わる全ての人たちの想いは、この日、スタジアムに足を運んだ入場者数に表れていた。その数は7,082人。平日のナイトゲームに7000人を超える入場者数を数えるのは、2007年第47節草津(現ザスパクサツ群馬)戦以来、8年ぶりのことだ。その声援を受けて、アビスパイレブンはピッチの上で躍動した。

ラインを高く設定した守備ブロック。高い位置からのアグレッシブなプレス。ボールを奪うと「守」から「攻」への切り替えを速くして、シンプルにゴールを目指す。目指すサッカーをキックオフと同時に披露するアビスパが、立ち上がりからギラヴァンツを押し込む展開が続く。そして、その勢いのままにゴールが生まれた。時間は7分。堤俊輔が送ったロングスローのクリアボールを再び堤がゴール前へ送る。待っていたのはペナルティエリア内で完全フリーになっていた金森。頭で捉えたボールがゴール右隅に決まる。

その後も、ギラヴァンツをゴール前に釘付けにするアビスパ。そして19分に追加点が生まれる。先制点と、ほぼ同じ位置から送った堤のロングスローをイ グァンソンが頭で後方に送ると、ファーサイドで待っていた城後がマークに付く風間宏希よりも頭ふたつ高くジャンプ。ヘディングシュートでゴールネットを揺らす。その4分後にギラヴァンツに反撃のゴールを許したが、その後も攻め続けるのはアビスパ。試合の主導権を渡さないまま前半を折り返した。

鈴木惇の2発と試合の終わらせ方
「守りに入るのではなく、もう一度前に出ろ」。ハーフタイムの井原監督の指示を受けて、アビスパは再び前へ出る。そして、その想いを鈴木が形にする。「あのコースに蹴るというのは何度も練習していた」(鈴木)。右サイドで得た直接FKに左足を振り抜くと、ボールはGKとディフェンスラインの間の絶妙な位置へ。そして、ボールはそのままゴールへと吸い込まれる。さらに53分。亀川諒史の突破で得た直接FKを蹴るのは再び鈴木。鮮やかな弧を描いたボールがゴール右上を捕えた。GK鈴木彩貴にはノーチャンスだった。

これで試合の大勢は決まったかに思われたが、そこは福岡ダービー。ギラヴァンツも意地を見せる。55分に小松塁に代えて原一樹を投入すると、ギラヴァンツ本来の特徴であるショートパスがリズミカルに回るようになっていく。そして60分に小手川宏基が1点を返すすと、その直後に大島秀夫をピッチに送り込んでさらにゴールを目指す。この試合で、アビスパにとっては初めての苦しい時間帯。前節の東京V戦で浮き彫りになった「試合の終わらせ方」という言葉が頭をよぎる。

だが、ここからアビスパは東京V戦と違った姿を見せる。79分に酒井宣福に代えて坂田を投入。同じく途中出場の中原貴之の2人が中心となって、アビスパは高い位置でボールをキープして、攻め急がず、決して下がらず、ボールをゆったりとつなぎながら時間を使う。そして、試合を終わらせに入ったアビスパの前に、ギラヴァンツの前への推進力が消えていく。やがて、提示された4分間のアディショナルタイムが経過。レベルファイブスタジアムにアビスパの勝利を告げるホイッスルが鳴った。

後半戦に向けて好スタート
さて、3連敗で始まった2015シーズンは、その後の11戦負けなし、そして15節から21節まで1勝3分3敗と、山もあれば、谷にもある前半戦だった。そんな中で迎えた後半戦の初戦は、福岡ダービーということも手伝って、高い集中力と、勝利の対する強い意欲を表現し続けた好ゲーム。2失点は反省点として残るが、「失点がなければパーフェクトだった」と亀川諒史は振り返ったように、J1昇格に向けて、ひとつ、ひとつの試合の重みが増してくる後半戦を、アビスパは、いい形でスタートさせた。

だが、前半戦がそうだったように、後半戦も簡単な試合はひとつもない。これからも、自分たちのサッカーを表現できる試合もあれば、そうでない試合もある。その中で、いかにコンスタントに結果を残せるかかが、昇格争いのサバイバルレースを勝ち抜く鍵になる。そして、最初の壁は、過去3年間、いずれも大きく崩れた後半戦の序盤をいかに乗り切るかということ。その壁をクリアしてこそ、次への道が開けてくる。次節は中3日で迎えるアウェイ水戸戦。アビスパは勝ち点3を目指して水戸に乗り込む。

【中倉一志=取材・文・写真】
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