「football fukuoka」中倉一志

アウェイの旅2015 千葉編(その1)

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アウェイ旅の楽しみは、対戦相手のスタジアムに着くまでの間にいくつも散りばめられている。いつもは乗らない路線に乗り込み、いつもとは違う景色を見ながら、あるいは空港から飛行機に乗り、翼の下に広がる雲海を眺めながら目的地へと向かう。多くの場合は経費をいかに安く抑えるかが最優先。必ずしも最短距離でも、最短時間でもないが、それはそれで楽しい。同じ行程で移動する顔見知りのサポーターを見つけた時には、心強さとともに、ほっとした気分にもなるものだ。

対戦相手のスタジアムの最寄駅からは、基本的には徒歩で移動する。相手のホームタウンの空気に触れたいからだ。スマホのナビ機能を頼りにスタジアムへの道を確認して歩き出す。あちこちに張られている試合告知のポスターに敵地にやってきたことを実感し、絶対に勝つという闘志がわいてくる。同時に、この町にも、自分たちと同じようにサッカーに熱狂する人たちがいて、今日の試合を待ちわびている人たちがいることを感じる。敵でありながら、同じサッカーを愛する仲間たち。全国津々浦々にそういう仲間がいることが嬉しい。

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今回の旅は千葉県千葉市中央区蘇我町への旅。改めて思い出せば、初めて、蘇我駅に降り立ったのは2006年3月18日。改札口の柱が黄色と緑で塗られていることに感心したことを思い出す。その駅の模様は、来るたびにジェフユナイテッド千葉色が強くなっているように感じる。もちろん、JR東日本がオフィシャルパートナーとして名を連ねているということもあるだろうが、おらが町のクラブを精一杯支えようという気持ちが伝わってくる。私の記憶では、これほどまでに地元クラブの色で装飾されている駅はJ2の中では見たことがない。

黄色と緑で装飾された駅コンコースを抜け、改札を出て西口へ進むと、千葉のマスコットであるジェフティ(左・背番号2)とユニティ(右・背番号9)が出迎えてくれる。ちょっとうらやましくも感じる。そして、マスコットを右に見ながら、足下に描かれているスタジアムへの案内板にしたがって駅前の道をまっすぐに進めば、5分ほどでフクダ電子アリーナが見えてくる。収容人数19,781人のサッカー専用スタジアム。スタジアム前に広がる広場も含めて、素晴らしい空間だ。

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さて、フクアリに着いたら、まずは腹ごしらえ。「ソーセージ盛り」(600円)で有名な「喜作」の屋台へと向かう。今では、アウェイサポーターにもすっかりお馴染みになったが、容器持参で行けば、料金はそのままに大盛りにしてくれる、とてもありがたいお店だ。店の前にはアビスパサポーターが、スタジアム前の100均で購入したと思われるタッパーウェアを持って長い列を作っている(笑)。その大盛り具合は、諸物価高騰の折、初めてフクアリに行った時ほどの衝撃はなくなったが、それでも十分にお得感がある。

実は、喜作は「唐揚げ」(400円)も販売しているのだが、千葉サポーターは、どちらかといえばそちらに列を作って、やはり容器持参で並んでいた。未確認ではあるが、7個400円であるはずの唐揚げを、私の前に並んでいた千葉サポーターの容器に、少なくとも10個以上は入れていた。どうやら、「唐揚げ」にも「容器持参者には大盛りサービス」というルールが適用されているらしい。次にフクアリに足を運んだ時には真偽を確かめてみたいと思う。

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腹ごしらえをしたら応援モード。いつものようにゴール裏スタンドに顔を出す。そこには、記者席からでは見ることができない光景、感じることが出来ない空気があるからだ。ファン、サポーター、そして「おらが町のクラブ」に関わる全ての人たちは、ピッチの上の90分間だけを見ているのではない。福岡に住む人も、いまは事情があって福岡から離れている人も、みんな、サッカーがある日常を丸ごと楽しみ、そして生まれ育った故郷の町への思いをクラブに託す。その空気を少しでも感じたいと思うからだ。

試合は、立ち上がり早々に2点を失う苦しい展開。しかし、選手たちは、そこから攻め続けた。その選手たちの背中を、ゴール裏に集まったファン、サポーターがありったけの声援で後押しした。スタジアムは黄色で埋め尽くされていたが、その熱気は決して千葉には負けていない。そして試合は2-2のドロー。勝てなかった悔しさはもちろん残るが、この日、スタジアムに来られなかった人も含めて、福岡に関わる全ての人たちで手に入れた勝点1。大きな意味を持つ勝点だった。(続く)

【中倉一志=取材・文・写真】
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