「football fukuoka」中倉一志

J2第24節 福岡-大宮レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第24節
日時:2015年7月18日(土)18:04
会場:レベルファイブスタジアム/8,179人
結果:アビスパ福岡1-3大宮アルディージャ
得点:[大宮]播戸(28分、37分、39分)、[福岡]金森(43分)

アビスパ福岡は18日、ホーム・レベルファイブスタジアムで大宮アルディージャと対戦。GK神山竜一を体調不良で、イ グァンソンと濱田水輝を怪我で欠く福岡は、低く構えてカウンターを狙う戦術で対抗。立ち上がりは狙い通りに試合を進めていたかと思われた。しかし、28分に播戸竜二に先制点を許すと、そこから11分で3失点。43分に金森健志が1点を返し、後半も攻め続けたがゴールは奪えず。1-3で敗れた。福岡は次節(7/22)、アウェイ・西京極総合運動公園陸上競技場で京都サンガと対戦する。

全てが決まった11分間
「少し戦術を変えて臨んだ」(井原正巳監督)。スクランブル体制で臨む福岡は、ブロックの位置を低めに設定。大宮の攻撃に備え、前向きにボールを奪ってカウンターを仕掛けることが狙いだった。前回対戦時の敗因のひとつが、前から行かずに低く構えてしまったことにあることを考えると意外な選択のようにも思えたが、低く構えながらも、要所でボールホルダーにプレッシャーをかける戦い方は、大宮にチャンスを与えず、その一方で攻め上がる場面も作り出し、機能しているように見えた。

しかし28分。ひとつのゴールで流れが変わる。パスワークに翻弄されたわけでもなければ、崩されたわけでも、押し込まれていたわけでもない。しかし、右SB渡部大輔がアーリークロスを送ると、ファーサイドに走りこんだ播戸竜二に、あっさりと頭で合わされた。ボールホルダーのマークが曖昧になって完全フリーにし、さらにはゴール前に走り込む播戸を誰も捕まえていないことが原因だった。まるで、シュート練習のようなゴール。この一発で、福岡から前へ出る意識が消えた。

人数を揃えていても、誰もボールに行かずに立っているだけなら、大宮の攻撃を制限できるはずもない。試合は、前回対戦時のリプレイを見ているような展開になっていく。そして37分。カルリーニョスの1本のパスで右サイドの裏を取られ、そこに走りこんだ家長昭博のクロスを播戸に合わされて2失点目。さらに、その2分後には、人数が密集するど真ん中をやすやすと突破されて、またもや播戸にゴールを許した。大宮のプレーの精度は高かった。しかし、いずれも自分たちの問題で失ったゴール。福岡は、あまりにも無抵抗のままに3つのゴールを失った。

後半の反撃も及ばず
それでも、金森武志のゴールが可能性をつなぐ。43分、鬼気迫る勢いで中央をドリブル突破した末吉隼也からのパスをペナルティエリア手前で受けると、そのまま金森の背後を抜けてオーバーラップする末吉の動きに、対峙するディフェンダーが引きつけられて出来た僅かなスペースに向かって右足を振り抜いた。「コースは見えていた。狙い通りのゴール」(金森)。ボールは鮮やかなカーブを描いて右ポストを巻くようにしてゴールを捕えた。GK加藤順大は一歩も動けず。そして、レベルファイブスタジアムに大歓声が沸き上がる。

金森のゴールで、福岡に前への意識が蘇る。そして後半に入ると、中盤を末吉、鈴木惇、城後寿の3ボランチに、前線を金森と中原貴之の2トップにして反撃に出る。「ファーストディフェンダーが明確になったので、後ろも、思い切ってチャレンジ出来る場面が増えた」(末吉)。その言葉通り、まずは高い位置から大宮のプレーを制限し、その動きに連動してパスの受け手に対して激しくチャージ。そして、奪ったボールを縦に素早く運んでゴールを目指す。いつもの福岡のサッカーだ。

だが、ゴールは遠かった。
「相手が前へパワーをかけてきたり、ウェリントン選手が入ってきたりというところで、タフな戦いになるのは分かっていた。選手たちも、それをしっかりと心構えして、相手のパワーをしっかりと受け止めてくれた」(渋谷洋樹監督)。
J2で最少失点を誇る大宮の守備は堅固。ゴール前まではボールを運んでも、ラストサードでのアイデアや、ラストパスの精度に課題を残す福岡は、決定機を作るまでには至らない。そして試合終了のホイッスルがレベルファイブスタジアムに鳴り響いた。

課題は守備の安定化
試合後の記者会見で、井原監督は悔しさを口にしながらも、最後まで諦めずに勝利を目指した選手たちの姿勢を讃えた。確かに選手たちは最後まで気持ちを見せた。しかし、2点のリードを奪った大宮がセーフティに戦ったという側面があったことも否めない。やはり、この試合の最大の問題点は先制点を失ってからの11分間の守備。ボールホルダーにアタックすることなく、ただ低い位置にいるだけの守備で3つのゴールを失った福岡に対し、サッカーの神様が救いの手を差し伸べるはずはなかった。

6試合を1クールと捉えて戦う福岡の目標は、各クールごとに最大で11、最低で9の勝点を積み重ねること。そういう意味では、24節を終えて37の勝点はギリギリ及第点。しかし、その内容は楽観視できない。一番の課題は守備。この試合で喫した3失点のように、あまりにもあっさりと、しかも自分たちの問題で失点する試合が続いている。そして、それは過去3年間の失速時と酷似しているもので、言い換えれば、福岡が新しい歴史を刻むために乗り越えなければならない壁でもある。はたして、どのように修正するのか。チームとしての真価が問われている。

【中倉一志=取材・文・写真】
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