「football fukuoka」中倉一志

J2第36節 福岡-千葉プレビュー

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2015明治安田生命J2リーグ第36節
対戦:アビスパ福岡vsジェフユナイテッド千葉
日時:10月10日(土)16:00キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム

リーグ再開後5戦負けなしと好調を維持する福岡。前節ではC大阪を破って3位に浮上。2位磐田との勝点差を4に縮め、自動昇格の可能性を大きく引き寄せた。その福岡が迎えるのは、やはり、昇格争いのライバルであるジェフユナイテッド千葉。福岡は自動昇格の可能性をより高めるために、千葉はプレーオフ進出を確実にするために、それぞれの当面の目標は異なるが、J1昇格を果たすために、ともに勝たなければいけない1戦を迎える。激戦必至の試合は、10日(土)16:00にレベルファイブスタジアムでキックオフされる。

侮れない千葉の実力
毎年のようにJ1昇格の有力候補に上げられる千葉が、今年も苦しんでいる。現在、14勝11分10敗で5位に付けるが、4位C大阪とは勝点6差、3位の福岡との勝点差は8。勝点を落とすようなことがあれば、同勝点で並ぶ東京V、勝点1差に迫るV.ファーレン長崎、愛媛FCとの混沌とした6位争いに巻き込まれるばかりか、場合によってはプレーオフ進出争いから一歩後退しかねない。言わば千葉にとっては崖っぷちとも言える状況で、アウェイとは言え、勝利することが求められている。

しかしながら、その実力は侮れない。45得点35失点の成績は、福岡の42得点34失点と、ほとんど変わりはなく、個の能力の高い選手も多い。思うように勝点を積み重ねられない原因は、これまでの試合の7割弱に当たる23試合で先制点を奪いながら、13試合しか勝利に結びつけられないという課題を抱えていることだが、元々は実力のあるチーム。何かがきっかけになれば、一気に勢いに乗る可能性も十分にある。死に物狂いでぶつかってくるであろう千葉は、福岡にとっては難しい相手だと言える。

最終ラインで存在感を示すのは、対人プレーに強さを見せるキム・ヒョヌン。左SBの中村太亮は、高い位置取りから、最大の武器である正確な左足でチャンスを演出する。チームを操るのはボランチのパウリーニョ。そして、佐藤健太郎が低い位置で全体のバランスを整える。攻撃面では、ベテランの域に達した水野晃樹が中盤を自由に動き回ってチャンスを演出。FWはW杯予選出場のために帰国したベチュニクは欠場が予想されるが、8月に期限付き移籍で加入した松田力や、森本貴幸ら能力の高い選手が揃う。

鍵を握る両サイドの攻防
流動的な動きを身上とする攻撃や、サイドアタックに特長を持つチームという点では、過去2戦で戦った東京V、C大阪らとの共通点は多く、「イメージはしやすい」と井原正巳監督は話す。そして、勝負を左右する鍵は、やはり両サイドの攻防を、どちらが抑えるのかということになりそうだ。右サイドの水野はポジションにこだわらず、中盤を自由に動き回り、空いたスペースに大岩一貴が上がってくる。この大岩との攻防を亀川諒史が制すれば、水野はサイドから離れられなくなり、千葉の攻撃力は半減する。

そして、最も重要な攻防が相手の左サイドだ。左SBの中村太亮は千葉の攻撃の起点。井原監督も「質は非常に高い」と警戒する。その正確な左足は、これまでにいくつものゴールを演出しており、フリーにさせないことはもちろん、いかに前へ出させないかが鍵を握る。これまでの福岡は、守備意識の高まりに伴って城後寿がポジションを下げてしまう傾向にあるが、受けに回って防げる相手ではない。前節のC大阪戦の前半のように、城後がゴールを意識して前へ出て行くことで相手を制限することが不可欠だろう。

井原采配ということで言えば、注目したいのは最終ラインの位置と、プレスのかけどころ。福岡が最も強みを発揮するのは、ブロックをセットした上で、高い位置から連動したプレスをかけることだが、夏場を乗り切るために、第24節大宮戦以降、ラインを下げて待ち受ける守備に変えた。ただし、涼しくなってきたことで、戦い方に変更を加える可能性があることを井原監督は示唆しており、実際、前節のC大阪戦では高い位置からボールを追わせた。千葉戦でどう出るか、非常に興味深い。

注目は城後寿、そして金森健志
さて、過去を振り返る時、様々な節目で千葉と対戦してきた記憶が蘇る。そして、千葉との対戦結果が、その後のシーズンの行方に影響を与えて来た。最も記憶に残るのが5年前の9月12日の対戦。雨中の試合となった試合は1点を先制される苦しい戦いになったが、残り10分を切ったところから逆転勝利。J1昇格を大きく引き寄せた。雷とともに放った城後の決勝ゴールは、アビスパのファン、サポーターの記憶に強く焼きつけられている。

前述のように、今回の対戦でも城後は重要な役割を担う。あれから様々な経験をして、城後はチームのために献身的に守ることが多くなっているが、やはり城後の最大のストロングポイントは前への推進力。そして、彼のゴールは、誰のゴールよりもスタジアムを沸かせ、チームに力を与える。城後の守備がチームを救っていることは理解しつつも、今回の対戦では、彼の攻撃面に注目したい。

そして、もう1人の注目選手として金森健志を挙げたい。まだ21歳とはいえ「若きストライカー」という言葉は不要になるほど、チームの中心プレーヤーとしての地位を確立した感がある。この3年間で、いくつもの貴重なゴールを叩き出してきたが、昇格争いの最終局面という状況の中で、チームを勝利に導くゴールを挙げることは、選手としてさらなる成長につながる。第31節の讃岐戦以降、ゴールから遠ざかってはいるが、コンディションはいい。城後のゴールとともに、チームを勝利に導いてくれることを期待したい。

【中倉一志=取材・文・写真】
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