「football fukuoka」中倉一志

J2第37節 福岡-栃木レポート

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2015明治安田生命J2リーグ第37節
日時:2015年10月18日(日)14:05
会場:レベルファイブスタジアム/8,749人
結果:アビスパ福岡4-2栃木SC
得点:[福岡]末吉(22分)、[栃木]中美(47分)、[福岡]城後(52分)、酒井(59分)、鈴木(69分)、[栃木]廣瀬(90+3分)

アビスパ福岡は18日、ホーム・レベルファイブスタジアムで栃木SCと対戦。前半を1-0で折り返しながら、後半立ち上がり早々に同点に追い付かれるという展開の試合も、中村航輔のスーパーセーブ、城後寿のゴールで流れを引き寄せると、その勢いに乗って、酒井宣福、鈴木惇が立て続けにゴール。栃木の反撃をアディショナルタイムの1点に抑えて勝利を収めた。福岡は次節(10/25)、アウェイ・鳴門・大塚スポーツパーク ポカリスエットスタジアムで徳島ヴォルティスと対戦する。

狙い通りの前半
「いま一番やりたくない相手」。戦前、井原監督をはじめ、多くの選手が、この言葉を口にしていた。チーム力で福岡が優っているのは互いの成績が証明している。しかしながら、栃木はJ2残留争いの真っただ中の最下位のチーム。そこから抜け出そうというパワーや気持ちの強さは侮れるものではない。それは、第3節終了時に最下位に沈んだ経験のある福岡が一番知っていることだからだ。そもそもサッカーは何があっても不思議ではないスポーツ。気持ちの強さほど厄介な物はない。

立ち上がりは栃木の狙い通りの展開で進む。福岡は多くの時間を栃木陣内で過ごすが、球際で激しくファイトする栃木は福岡にチャンスを与えない。そして、押し込まれているように見えて、8分、11分と、カウンターからゴールチャンスを作る。ラストの精度に欠いて得点こそ生まれなかったが、いずれもゴールにつながりかねないものだった。前線で起点を作る河本明人、2列目から飛び出してくる中美慶哉、杉本真、松村亮らの動きを福岡は捕まえ切れない。この試合の難しさが伝わってくる立ち上がりだ。

だが福岡も自分たちの強みを活かして先制ゴールを奪う。24分、CKのクリアボールがペナルティエリアの外へこぼれたところへ末吉隼也が飛び込んだ。左足ボレーで捉えたボールは、ゴール前の密集を抜けて右隅に突き刺さる。そして、ここからは福岡のペース。相手の気持ちをはぐらかすかのように、ゆっくりとボールを回し、相手ボールに対しては堅固なブロックをセット。出てくるところを捕まえて、縦に速い攻撃でゴールを脅かす。狙い通りにゲームをしっかりとコントロールして、前半を1点リードで折り返した。

流れを引き寄せた2つのビッグプレー
後半開始早々の47分に、一瞬の隙を突かれて同点に追いつかれ、試合は再び難しくなりかけたが、ふたつのビッグプレーが福岡に勝利を呼び寄せる。ひとつ目は中村航輔のスーパーセーブ。50分、河本からのパスを受けてペナルティエリア内に入ってきた松村との1対1の場面を右手1本で弾き返す。そして、もうひとつは鈴木惇から城後寿へのダイレクトプレー。52分、ハーフウェイラインから鈴木が送ったピンポイントパスを、ディフェンスと競り合いながら裏を取った城後の右足が捉えた。

守備で福岡を支える中村航輔と、チームキャプテンとして福岡を牽引する城後のプレーは、チームに勢いを与える。そして59分、ペナルティエリア内のルーズボールに、難しい体制から酒井が豪快なボレーシュートをたたき込んで3-1。そして69分には、金森健志とのワンツーで抜け出した鈴木が右足を一閃。リードを3点に広げて、事実上の勝負を決めた。「力で持っていかれたような試合。逆転のチャンスを決められなかったのが、ひとつのポイント。相手の2点目が、もうひとつのポイント」と倉田安治監督(栃木)は唇を噛んだ。

アディショナルタイムに1点を許した福岡だが、追加点が取れないという課題を持つ中で、今シーズン最多タイとなる4点を奪っての勝利に、「後半開始早々に失点をしてしまったが、そこで落ち込むことなく我々のサッカーを表現して、2点目、3点目、4点目という形で点を取ることができ、選手たちの成長、チームの勢いというものを感じる結果だった」と話すのは井原監督。城後は「みんなが、何かしなければいけないという気持ちが強いので、こういう結果につながっていると思う。これが僕たちの強みではないのかなと、改めて感じる試合だった」と振り返った。

残り5試合 変わらぬ姿勢で昇格を目指す
この日、磐田が札幌に勝利したために、磐田との勝点差は変わらないままだったが、福岡は、磐田に最後まで喰らい付いていって逆転を待つ立ち場。難しいことが予想された試合で、しっかりと勝点を積み重ねたことは、チームにとっては勢いが付く勝利だったと言える。しかし、試合を終わってミックスゾーンに顔を出した選手たちの表情は冷静そのもの。むしろ、一瞬の隙を突かれて2失点したことへの反省の言葉が聞かれた。

「どうしようもない失点ではなく、自分たちが油断しての失点。残り5試合で同じことをやっていたら痛い目を見る。チームとして修正したい」(鈴木惇)
結果に一喜一憂せずに、常に自分たちを客観的に見つめて、出来たことと、出来なかったことを整理して、試合直後から次の試合に向けて準備を始める。それも、今シーズンの福岡の特長であり、それが今の成績を支えている。福岡は変わらぬ姿勢を貫いて、残り5試合で自動昇格を目指す。

【中倉一志=取材・文・写真】
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