「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【フットボールな日々】多くの人たちへの感謝の気持ちとともに迎えた節目の日。アビスパライフは、まだまだ続く。

恥ずかしながら齢を重ねて、今日、60回目の誕生日を迎えた。社会に出てから37年。会社を辞め、フリーランスのライターになってから12年。改めて振り返れば、あっという間の出来事だった。新調したばかりのスーツに身を包んで、新宿西口にあった安田生命本社の通用口を初めて通った日も、一泊2500円のウィークリーマンションに泊まり、スーパーの見切り品のパンを食料にしながら過ごした初めての宮崎キャンプも、まるで昨日のことのように思える。

さて、実際に還暦を迎えて、なんだか妙な気分の自分がいる。そもそも、私の60歳のイメージは、辛いことも、悲しいことも、もちろん嬉しいことも、すべて飲みこみ、何事にも動じず、優しく、穏やかで、欲を持たず、あらゆることを包み込んでしまう広い心の持ち主というもの。私が新入社員の時に、同じ職場で60歳定年を迎えた方がそうだった。人生が順風満帆に行くことなどあるわけもなく、様々な経験をするだろうが、そうしたものを積み重ねた末に、その方のような60歳を迎えたいと思っていた。

ところが、翻っていまの自分を見た時、そんな性格は、ただのひとつも持ちあわせていない。それなりの時を過ごし、それなりの知恵は身に付けたものの、物事に一喜一憂するばかりか、譲れないことにはムキになり、物欲もいまだに旺盛。節制などする気もなく、好きな物を好きなだけ飲み食いする生活は、いまだに体を成長させ、町で綺麗な女性を見かければ、当然のように目で追う。大学時代と、ほとんど変わっていないことが、なんとも情けない。

だが、手に入れたものもある。それはサッカーを通して知り合った多くの仲間。そして、個人的なお付き合いはなくても、私を支え続けて下さる多くのアビスパファン、サポーターのみなさんの存在だ。どうしていいのか分からないこともあった。これが潮時かと考えた時もあった。むしろ、その繰り返しだったように思う。けれど、支えてくれるすべての人たちの存在が、いつも私に勇気をくれた。練習場へ、スタジアムへ行くたびに、まだまだ頑張れるという気持ちになった。

そして60歳を迎えたいま、これから何ができるのかと考える自分がいる。アパマンショップホールディングス社の経営参画により、アビスパ福岡は変わった。昨シーズンの悔しい想いを胸に、選手たちも変わろうとしている。では、自分には何ができるのか。日々、そんなことを考えている。会社勤めを続けていれば、今日をもって退職。おそらく、綺麗な女子社員から豪華な花束をもらい、自分の人生を感慨深く振り返っていたことだろう。だがいまは、感慨にふけるのではなく、これから何をすべきなのかと考えられる環境に幸せを感じている。そして、そんな自分を支えて下さるすべての人たちへの感謝の気持ちは尽きることがない。

日本人男性の60歳の平均余命は23.55年。長いのか、短いのかは何とも言いようがなく、人生の時間の終わりに近づいているのは間違いない。それでも23年あれば、自分のような人間であっても、ひとつや、ふたつは、やり遂げられるものがあるはず。それが何なのかを追い求めながら、アビスパ福岡と、アビスパ福岡を愛する人たちとともに、今日よりも明日、明日よりも明後日というように、日々を重ねていきたい。何も持たない自分にとって、それが自分の人生に関わってくれる人たちへの恩返しなのではないかと考えている。

まずは、1年でのJ1復帰を目指すアビスパの力になること。力のない自分に大きなことはできないが、ほんの少しでも力になれることができるのなら、こんなに幸せなことはない。そして近い将来、アビスパがJ1の舞台で大活躍する姿を、多くのみなさんと一緒に見ることを夢に描いて、アビスパを追いかけたいと思う。これからも、よろしくお願いします。

アビスパを愛するすべてのみなさんに感謝の気持ちを込めて 中倉一志

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