「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【レポート 天皇杯2回戦 福岡-宮産大】宮産大に2得点を許すも中原貴之のゴールで突き放す。2回戦へ進出。

第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦
日時:2017年6月21日(水)19:00キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム/1,249人
結果:アビスパ福岡 4-2 宮崎産業経営大学
得点:[福岡]三島(3分)、城後(25分)、石津(56分)、[宮産大]野川(76分)、山下(87分)、[福岡]中原(90+2分)

アビスパ福岡は21日、ホーム・レベルファイブスタジアムで、宮崎産業経営大学と天皇杯2回戦で対戦。アグレッシブに、はつらつと戦う宮産大に対し、アビスパは3分の三島勇太のゴールを皮切りに、25分の城後寿、56分の石津大介と着々と得点。3点のリードに集中力が緩んだのか、終盤は受けに回って2失点を喫したが、409日ぶりに公式戦に復帰した中原貴之がアディショナルタイムに4点目を奪って粘る宮産大を突き放した。アビスパは25日、再開するJ2第20節を、アウェイ・ニンジニアスタジアムで愛媛FCと戦う。

地力の違いを見せた2回戦
アビスパの布陣は3-4-3。公式戦初出場となるGK山ノ井拓己をはじめ、前節のリーグ戦の先発から9名を入れ替えて臨む。対する宮崎産業経営大学(以下、宮産大)は4-4-2。4年ぶり5度目の出場となる天皇杯でのジャイアントキリングを目指す。そんな試合は開始直後の3分、為田大貴のクロスボールを三島勇太がヒールで流し込んでアビスパが先制。試合は、アビスパのゴールラッシュを予感させる立ち上がりで幕を開けた。

だが、この先制点は、むしろ宮産大の目を覚まさせることになったようだ。人もボールも動くサッカーをコンセプトに戦う姿は、なるほど、九州大学サッカーリーグ5位ながら、2強である福岡大学、鹿屋体育大学と互角の戦いを演じているのもうなずける。攻守の区別なく全員が連動し、ボールホルダーを中心に常に三角形を作ってボールを回し、タイミングを見計らって裏へ飛び出す選手に縦パスを通す。「攻」から「守」への切り替えも早く、セカンドボールへの反応でもアビスパを上回る。

それでも地力の比較で言えばアビスパが上。思うように組み立てられず、20分前後には、システムを4-4-2に変更して宮産大に対応せざるを得なくなったものの、ミスが多く、最後の精度に欠いてゴールを奪えない宮産大に対し、効率よく得点を重ねていく。追加点は25分、CKにファーサイドで城後寿が頭で合わせ、56分には、三島勇太とのワンツーでフリーになった石津大介が右足を振り抜いた。内容的には納得のいくものではなかったが、結果を見れば互いの実力差は明らかだった。

中原貴之のゴールで締めくくる
「もっと相手を圧倒したかった。結果オーライ」と石津は振り返った通り、1人、1人は頑張っていても、ミスが多く、互いに微妙なズレのようなものを感じながらのプレーは、観客以上に、プレーしていた選手が感じていたのかもしれない。だがそれも、普段、出場機会が少ない選手たちを中心に戦ったことからすれば、細かな連携面や、試合の進め方にズレが生じるのはやむを得ないこと。最も優先されるべきは、そうした内容であっても結果として勝利することで、そういう意味では、3-0までは大きな問題はなかったと言える。

問題はそのあとだった。この試合では、ファーストディフェンダーを定めきれないという問題を抱えていたが、3点のリードで安心したのか、さらにプレッシャーが曖昧になり、ズルズルと後退。試合の主導権を宮産大に明け渡し、防戦一方の展開が続いていく。それでもシュートまでは持ち込ませずに防いでいたものの、76分に、いいようにボールを回されて完全に崩された状態から1失点。さらに87分には、人数はそろっていたものの、ゴール前中央からノープレッシャーで2点目を叩き込まれた。

まだリードしているとは言ってもアビスパにとっては嫌な展開。にわかにスタジアムを重苦しい空気が包む。だが、それもわずかな時間だけ。90分+2分に、この日、409日ぶりに公式戦に復帰した中原貴之が、為田の折り返しに合わせて4点目をゲット。中原らしい体ごとゴールに入れるような気持ちのこもったゴールで試合を締めくくった。

自分を見つめることで、個人も、チームも力をつけていく
「勝利という結果をモノにして次につながったというところでは、チームの目的は果たしてくれた」と試合を振り返ったのは井原正巳監督。トーナメントで争う天皇杯は勝利することが最優先。そういう意味では、まずはしっかりと初戦を突破したと言える。その反面、「個々のプレーに関しては、まだまだ物足りなさというのはたくさんある」(井原監督)とも。天皇杯を、リーグ戦にどのようにつなげるかということも大きな目的のひとつ。そういう意味で言えば、残念ながら物足りなさも残った試合だった。

「リーグ戦に出ていない選手が中心で出た試合だったので、個人、個人で課題を見つめて、練習からやっていきたい」とは末吉隼也の言葉。試合で結果を出すことはもちろん、結果だけにこだわらず、1人、1人が自分と見つめ合い、足りない部分を手に入れることで、個人はもとよりチーム全体の力が上がっていく。そして、昇格を果たすには、さらにチーム力を上げていくことが求められている。この日の試合を教訓にして、新たにチャンスを手に入れる選手が現れることを期待したい。

【中倉一志=取材・文・写真】
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