「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【レポート 天皇杯3回戦 筑波大-福岡】敗戦を問われているのではなく、ここから何ができるかが問われている。

第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦
日時:2017年7月121日(水)19:33キックオフ
会場:ケーズデンキスタジアム水戸/1,326人
結果:筑波大学 2-1 アビスパ福岡
得点:[筑波]中野(69分、79分)、[福岡]石津(89分)

アビスパ福岡は12日、天皇杯3回戦(ケーズデンキスタジアム水戸)で筑波大学と対戦。2戦連続でJリーグ勢を破って勝ち進んできた筑波大学に対し、Jリーグの力を見せつけるべく臨んだアビスパだったが、試合は立ち上がりから筑波大学のペース。システム変更を実らずに69分、79分と立て続けに失点。終了間際に1点を返すのが精一杯だった。大学生相手の完敗に「筑波大学の方が勝ちに値した」と井原正巳監督は厳しい表情で話した。アビスパは16日、アウェイ・正田醤油スタジアム群馬でザスパクサツ群馬と対戦する。

躍動する筑波。閉塞感漂うアビスパ
厳しい内容、そして結果だった。ジャイアントキリングというよりも、筑波大学の順当勝ちと言える試合。井原監督も「我々が隙を見せたとか、入りが甘かったとか、そういうものではなく、筑波さんの方か上だった。90分を通して、そういうゲームだったと思う。彼らは非常に戦っていたし、球際、セカンドボール、チャレンジするところ、そういう部分というのは、我々を確実に上回っていた。勝ちに値するのは筑波さんだった」と試合を振り返った。

試合は筑波大が4-2-3-1、アビスパの4-4-2という形で始まった。筑波は全員守備、全員攻撃が戦うスタイル。自陣に引いて堅固なブロックを形成してアビスパの侵入を防ぐ守備と、足下に入れるパスに対して激しくプレッシャーをかける守備を使い分けてアビスパの攻撃のリズムを消す。そして、奪ったボールはシンプルに前へ。1トップの中野誠也が巧みな動き出しで背後に抜け出して起点を作り、そして、後方から全員が押し上げてゴールを目指す。

特にアビスパが手を焼いたのは、1トップの中野をはじめ、トップ下の戸嶋祥郎と左サイドに陣取る西澤健太。中野に簡単に裏へ抜け出され、中野をサポートする戸嶋を捕まえきれず、西澤には好き勝手に左サイドを使われた。途中から冨安をアンカーに置く4-1-4-1にシステム変更して、守備は、若干、落ち着きを取り戻したが、攻撃のリズムは作れないままだった。前半は0-0。だが、ミスが多く、閉塞感ばかりが募るアビスパに対し、筑波大は思い描いたサッカーを展開していた。

認めざるを得ない敗戦
ハーフタイムでは井原監督から相当な檄が飛んだのだろう。後半に入るとアビスパが前への意識を高くする。だが、それも長続きしない。前半同様に、運動量、球際の激しさ、戦う姿勢、局面の争い、攻守の切り替え等々、戦う上での前提条件ともいうべきところで筑波大に後手を踏んだ。

「向こうの方がピッチの中で戦っていた。そこで負けてしまうと、どれだけ技術で勝っていたとしても負けてしまう」(亀川諒史)
「相手に『やれるんじゃないか』と自分たちで思わせてしまった。相手がどうこうというよりも、自分たちに問題があった」(石津大介)
やがて、筑波大が試合を支配し始める。

57分、61分、64分と筑波大の決定機が続く。いずれもゴールネットが揺れてもおかしくないシーン。中盤を支配され、ボールを回され、なす術もなく崩された。そして69分、その流れのままに鮮やかなパスワークからゴールを奪われると、79分には、一度は跳ね返したボールを拾われて二次攻撃を許し、易々と2失点目を献上した。その後、筑波大が守りへの意識を高めたこともあり、アビスパが攻撃に転ずる場面が増えたが、それも時すでに遅し。89分にCKから1点を返すのが精一杯で、アビスパは天皇杯から姿を消した。

もちろん、筑波大はいいチームだった。アビスパは手を抜いたわけでも、隙を見せたわけでもなかったが、この日のメンバーのパフォーマンスで太刀打ちできる相手ではなかった。井原監督が振り返ったように、実力で上回った筑波大の勝利。そういう印象が残る試合だった。

敗戦を糧に何ができるか
さて、この日のメンバーは、リーグへの出場機会が少ない選手たちが中心。それぞれが必死になって戦っていたことは間違いない。誰もが、自分の力を存分に発揮してリーグ戦への出場をアピールするつもりだったはずだ。だが、結果として、その気持ちをプレーで表現できず、戦う以前の問題で敗れた。その悔しさや、情けなさは想像に難くないが、それも実力。まずは現実を認めなければ次に続く道は見えてこない。そしてJ2の戦いは総力戦。1人、1人が自分と向き合わない限り、チームの成長もない。

「ここでもう一度スイッチを入れ替えられれば、間違いなく上に行けると思うが、このまま何も変えられなければ、このまま落ちて行って、連敗を止められないチームになってしまう恐れもある」(亀川)
敗れたという現実からは決して逃れることはできない。だが、どんな時も大切なのは、足りない何かを得るために、足りていない自分を変えるために、何ができるのかということ。まずはいまの自分と向き合うこと。天皇杯に敗れたいま、取り組まなければいけないのはそういうことだ。

【中倉一志=取材・文・写真】
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