「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【レポート 天皇杯2回戦 福岡-鹿児島】鹿児島ユナイテッドFCの挑戦を退けた城後の一発。3回戦進出を決める

天皇杯第98回全日本サッカー選手権大会 2回戦節
日時:2018年6月6日(水)19:00キックオフ
会場::レベルファイブスタジアム/1,5052人
結果:アビスパ福岡 1-0 鹿児島ユナイテッドFC
得点:[福岡]城後(33分)

アビスパ福岡は6日、ホームレベルファイブスタジアムで行われた天皇杯2回戦で鹿児島ユナイテッドFCと対戦。立ち上がりから主導権を握るアビスパは、この日FWで先発出場した城後のヘディングシュートで先制。後半は鹿児島が前へ出るシーンも増えたが、落ち着いてゲームを進めて無失点。天皇杯3回戦へ駒を進めた。アビスパの天皇杯3回戦は7月11日。コンサドーレ札幌と対戦する。

城後のゴールで先制
この日のアビスパは山ノ井拓己、平尾壮、木戸皓貴、田村友ら、リーグ戦への出場機会が少ない選手を中心にメンバーを編成。システムは3バック。最終ラインは中央に田村友を置いて右に實藤友紀、左に堤俊輔。ウイングバックはユ インスと平尾壮。ボランチには鈴木惇と山瀬功治が構え、前線には右から城後寿、木戸皓貴、石津大介が並ぶ。その狙いを「鹿児島の分析、メンバーの特性を考えて、リーグ戦とはシステムを変えて臨んだ」と話す。

開始直後の2分。アビスパはいきなり決定機を作ると、その勢いのままに試合を支配する。「走ることもそうだが、切り替え、球際、セカンドボールのところは特に意識して、我々が上回っていなければいけない」とは試合前の井原正巳監督の言葉。高い位置からプレスを仕掛けて鹿児島の自由を奪うアビスパは、井原監督の言葉通り、鹿児島を上回るハードワークを見せて試合を進めていく。カテゴリーが下のチームとの対戦では、ややもすると相手を受けてしまいがちだが、この日のアビスパは非常に集中した立ち上がりを見せた。

そして33分、左サイドからの平尾のクロスに城後が頭で合わせて先制すると、その後も、ほとんどの時間を鹿児島陣内で過ごし、鹿児島の反撃を許さない。リーグ戦同様に、3バックで戦う時に攻撃面での距離感が悪いという傾向に変わりはなく、3トップの連携が見られず、そのためにユ インスが飛び出していくスペースを見つけられないなどの課題もあったが、それでも鹿児島との力の差を示して前半を1点リードで折り返した。

順当に3回戦進出を決める
前半は守備に追われて何もできなかった鹿児島だったが、後半の頭から田中秀人に代えて平出涼を、西岡謙太に代えて永畑祐樹を投入。チームにリズムが生まれる。鹿児島のスタイルはマイボールを大事にした「つなぐサッカー」。経験したことのない素早いプレスにも慣れたのか、ボールをつなぎながらアビスパ陣内でのプレーが増えていく。それでもアビスパは慌てない。前へ出てくる鹿児島の勢いを受けながらも守備網を崩さずに冷静に試合を進めていく。

そして最終スコア1-0でアビスパの順当勝ち。天皇杯の早い段階では、ややもすれば、上位のカテゴリーのチームを破るという高いモチベーションで臨んで来るチームに対し、上位のカテゴリーのチームがバタバタとする展開が見られるものだが、この日のアビスパは最後まで緩むことなく、そして下位のカテゴリーに対して力の違いがあることを示した。欲を言えば、2点目、3点目が欲しかったところだが、トータルで見れば危なげなく3回戦へと駒を進めた。

これでアビスパはリーグ戦を含めて3連続完封勝利。天皇杯は戦うカテゴリーの違う相手との対戦であったとは言え、チームにとっての最大の薬は勝利という結果。自分たちが目指すスタイルに対しては、まだまだ積み上げていかなければいけないことは少なくないが、勝利を重ねることで、前向きの姿勢で課題と向き合うことが成長への近道でもある。そして3回戦ではコンサドーレ札幌との対戦(7/11)が決定。今度はジャイアントキリングを狙う立場としてJ1勢に挑む。

貴重な経験を積んだ若手選手
さて、この日の収穫は、左WBとして先発フル出場を果たした平尾だろう。先制点のアシストを記録したことはもちろん、持ち味である高いテクニックを存分に見せて、左サイドで存在感を示した。「千葉戦、岡山戦とチャンスをもらって、でも自分の思うようなプレーができなかったから、いまの現状があると思うので、ラストチャンスというくらいに死ぬ気でやるつもりで臨んだ」とは本人の言葉だが、その気持ちが表れたプレーはリーグ戦出場に向けてのアピールになったことは間違いない。

同じく先発出場の山ノ井は、無失点で終えられたことは収穫。ハイボールの処理に何本か問題があったことは課題。そして木戸は、木戸らしいプレーや惜しいシュートも放ったが、前線でボールを収めて起点を作るという役割に対しては不完全燃焼の終わった。それでも若い選手たちにとっては貴重な経験の場になったことは間違いなく、この日の課題と収穫を整理して、日々のトレーニングに落とし込むことで未来が開ける。若い選手にとって成長の足掛かりとなった試合でもあった。

[中倉一志=取材・文・写真]
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