「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【プレビュー 天皇杯3回戦 札幌-福岡】J1コンサドーレ札幌に挑む3回戦。チャレンジャーとして勝利を目指せ!

天皇杯第98回全日本サッカー選手権大会 3回戦
対戦:コンサドーレ札幌vsアビスパ福岡
日時:2018年7月11日(水)19:00キックオフ
会場:レベルファイブスタジアム

アビスパ福岡は11日、レベルファイブスタジアムにコンサドーレ札幌(J1)を迎えて天皇杯3回戦を戦う。現在J2に所属するアビスパにとっては、上位カテゴリーのチームと対戦する数少ないチャンス。そして、15日に控えたJ2第22節讃岐戦につなげる大事な試合でもある。第21節の京都戦は中止になったとはいえ、長時間の移動による疲労が残る中で中3日で迎える試合で、井原正巳監督が、どのようなメンバー、どのような戦い方で臨むかが注目される。

特別な想いが交錯する対戦
私事で恐縮だが、札幌との対戦はいつも特別な想いを抱く。福岡で生まれ、福岡を終の棲家にすることを選んだ私だが、中学校から大学卒業までの10年間と、社会人になってから最初の勤務地として3年半を札幌の街で過ごしたからだ。今でも札幌の街は目をつぶってでも歩くことができる。いわば福岡が産みの親なら、札幌は育ての親。どちらの街にも思い入れは強く、それぞれの街をホームタウンに置く両チームの対戦には、何とも複雑な思いに襲われる。

また、1998年シーズン終了後に行われたJ1参入決定戦の最終戦で、アビスパと札幌が戦ったことも特別な想いを抱く理由の一つになっている。J1参入に残された1枠を巡っての戦いは、当然のように、どちらかがJ2への降格を余儀なくされる。そしてアビスパはJ2降格ならば行政からの支援が見直されるかもしれないという状況の中で、いわばクラブの存続がかかった試合でもあった。どちらがJ1に残るにしても、素直に喜べない自分がいた。

そんな気持ちを知ってか知らずか、通算対戦成績はリーグ戦で12勝7分12敗、カップ戦は1勝1敗とまったくの五分。だが、そんな関係も2016シーズンを境に変わりつつある。アビスパはJ2降格が決まり、1年での復帰を目指した2017シーズンも目標は叶わず。今シーズンは「J2優勝、J1昇格」を目標としながら前半戦を5位で終えた。一方、札幌は2016シーズンにJ1昇格を果たすと、2017シーズンは11位でJ1残留を果たし、今シーズンは5位と好位置につけている。そんな中で迎える天皇杯3回戦。ここはしっかりと勝っておきたいところだ。

チャレンジャーとして勝利を目指す
まず注目されるのは互いにどのようなメンバーで臨むのかということだろう。1週間後にJ1が再開する札幌はフィジカル的な問題はないが、W杯期間中は公式戦から離れているという事情があり、アビスパは天皇杯から中3日でJ2第22節讃岐戦が控えているため、天皇杯だけではなく、天皇杯と讃岐戦の2試合をトータルで考えた上でのメンバー選考になる。それでいて、勝利という結果を得て次に控えるリーグ戦につなげたいのは両チームに共通するところ。両監督がどんな決断を下すのかは興味深いところだ。

そして、アビスパが現時点では格上と呼ばざるを得ない札幌に対して、どのような戦いを仕掛けるのかが次のポイントだろう。もちろん、相手の嫌なことをするというのがアビスパの基本的な戦い方だが、それを継続しつつ、J1に対して自分たちの力を試すという意味では、相手というよりも、自分たちが何をするのかという部分への比重が高くなるのではないか。井原監督は次のように話している。

「けが人も戻ってきているので、チームの底上げを図るとともに、勝負の世界である以上、勝ちにはこだわりたい。ポイントは暑い中でいかにゲームをコントロールするかということ、ミスを少なくすること。けれど点を取りにいくためには、どこかで無理をしなければならない。そのメリハリをつけられるかどうかがポイント」
細心の注意を図りながら、どこで果敢に自分たちから仕掛けることができるのか。敗戦を恐れずにチャレンジャーとしてぶつかっていけるのか。それが勝敗を分けることになりそうだ。

天皇杯はリーグ戦につながっている
Jリーグと並行しながら戦う天皇杯は過密日程との戦いでもあり、Jクラブにとっては難しい大会であることは間違いない。目の前の戦いに勝つことにこだわりつつ、リーグ戦への影響も考えながらの戦いでは、完全にメンバーをターンオーバーさせて戦うチームもある。だが、どんなメンバーで戦うことになっても、それがクラブとしての力であることに変わりはなく、天皇杯での戦いぶりは、いい面でも、悪い面でも、確実にリーグ戦の勢いに直結する。

アビスパにとって好影響をもたらしたのは2010シーズン。J1勢との戦いを次々と制してベスト8に進出したアビスパは、このシーズンで5年ぶりのJ1復帰を果たした。他方、昨シーズンの天皇杯では3回戦で筑波大学に敗れたアビスパは、その後のリーグ戦で勢いに乗ることができず、最終的にJ1昇格を逃している。

「札幌はいいメンバーで来ると思うので、その中で自分がどれだけできるのかというのを試したいという部分がある。同時に、天皇杯は公式戦なので負けてはいけない試合。チームとして勝ちにこだわって、自分自身としても結果にこだわっていきたい」(平尾壮)
いつもと変わらぬ戦いで3回戦突破を果たしたい。

[中倉一志=取材・文・写真]
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