「football fukuoka」中倉一志

【フットボールな日々】待ちわびていた感動と熱狂の日々。僕たちのJリーグが帰ってきた。~アウェイへ行こう:沖縄編2

一晩明けて2月24日。いよいよ2019シーズンが始まる。Jリーグにとっても、私にとっても27回目となる開幕は年中行事のようなものなのだが、それでも前日はほとんど眠れず。何年たっても特別な日であることに変わりはない。期待と不安が入り混じった何とも言えない気持ちになるのもいつものことだ。そんな気持ちを落ち着かせるために首里城へ。独特な沖縄建築と壮大な景色を眺めながら今日の戦いに向けての鋭気を養う。同じ気持ちなのか、ちらほらとアビサポの姿が見える。

気持ちを高めたら約束していた友人と合流。レンタカーで戦いの舞台であるタピック県総ひやごんスタジアムへと向かう。その途中で目に飛び込んできたのが「最強食堂」と書かれた大きな看板。昼食にスタグルを楽しむか、ソウルフードを楽しむか一瞬迷ったが「最強」の名につられてチェックイン。駐車場は車であふれており、ここも地元の人気店の様だ。「敵を倒すためには、まずは敵を食え」の鉄則(?)に従ってソウルフードを食らう。

広々としたスペースに無造作にテーブルが並べられた店内は、まさに大衆食堂。ここも観光客の姿はなく地元の人たちでにぎわう。黒板に書かれている今日のおすすめの中から「そば定食」をチョイス。供されたのは、沖縄そばに唐揚げ3個、スパムミート、玉子焼き、そしてライスが付いたボリューム満点の一品。13年前に恩納村にあった「なかま食堂」で食べたそば定食の圧巻のボリュームに驚かされたが、ボリュームは沖縄大衆食堂の代名詞のようなものらしい。

さて、タピック県総ひやごんスタジアムに到着。アビサポの姿が目立つ。メディア受付を済ませたら早速アウェイ側スタンドへと向かう。既に大勢のサポーターが陣取っていたが、さらに次から次へとアビサポが集まってくる。聞くところによると前売りで500枚以上発券しているらしい。目の前に広がる緑の芝を眺めながら、顔見知りの仲間と言葉を交わし、僕たちの日常が帰ってきたことを実感する。この空気感こそが僕たちが待ちわびていたもの。Jリーグが帰ってきた。そんな気持ちが強くなる。

ウォーミングアップのために選手がピッチに姿を現すと一斉にサポーターから声が上がる。選手名のコールに続いてチャントが始まる。スタンドに翻る数々のフラッグ。スタジアムに響き渡るチャントを歌う声。身体の中心からゾクゾクとしたものが沸きあがってくる。福岡の誇りを胸に、ともに戦う強い意志を込めて発する声は、選手たちを後押しするだけではなく、自らをも奮い立たせ、さらに大きな声になっていく。その声はやがてサポーターを一つにし、さらにはピッチに立つ選手とサポーターを一つにしていく。

だが、ファビオ ペッキアの下で変わったアビスパを見たいという想いは叶わなかった。開幕戦の緊張感からか選手の動きが重い。先制点も奪われた。松田力のゴールで追いつき、後半に入ると、ようやくアビスパらしさが見られるようになったが、今度は決定機を決められない。逆にFC琉球に確実にチャンスを決められて1-3で敗れた。悔しさ。情けなさ。いろんな思いが交錯する。しかし、結果に一喜一憂しても何も始まらない。リーグ最終戦は必ず満面の笑顔で迎える。そんな思いを強くしてスタジアムを後にした。

勝利の時も、そうでない時も、試合が終われば次の試合に向けて切り替えるのが、アビスパに関わる者のあるべき姿。久しぶりに会う仲間と国際通りに繰り出す。そして「にんじんしりしり」「ラフテー」「海ぶどう」などの肴を泡盛で流していく。ゆったりと流れる沖縄民謡を聞きながらかわす会話は、福岡のこと、アビスパのこと、サッカーのこと等々、話題に尽きることはない。3人だった仲間が5人になり、6人になり、そしてまた1人と増えていく。沖縄の宴は尽きることなく続いた。

さて、沖縄という空間は思っていた通りに楽しい時間をくれた。だが、試合は結果も内容も残念なものだった。正直、「キャンプでやっていた通りにプレーしてくれれば」という想いは強い。だが、何事も思った通りにいかないのが世の中の常。上手くいかなかったことを嘆くだけなら何も生まれない。大切なことは上手くいくために何をすればいいのかを考え、行動することだ。そう自分に言い聞かせて飛行機に乗り込む。最後には必ず笑う。そんな決意と共に。

[中倉一志=文・写真]
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