「football fukuoka」中倉一志

【フットボールな日々】間もなくやってくるJリーグの春。その中でどのように変化できるか。その先にアビスパの未来がある

自宅近くのイオンで、ひな祭り用のディスプレイに思わず目にとまった。コロナ禍の生活で季節の移り変わりに鈍感になっている私に、桃色に彩られた「雛あられ」が春がそこまでやってきていることを教えてくれているような気がして、少しばかり温かな気分になった。

そして、Jリーグに29回目の、アビスパにとって26回目の春がやってくる。2019年の最終戦セレモニーでの川森敬史代表取締役社長の「大改革」宣言を受けて4度目のJ1復帰を果たしたアビスパにとって5年ぶりのJ1の舞台。それはアビスパの新しい未来を築くための大切な1年と言えるもので、その成否がアビスパの未来に大きな影響を与えることを思うと、今まで以上に身が引き締まる想いでいる。

その中でアビスパがどう変化できるのか。それは「リーグ戦10位以上、勝点50、ルヴァンカップベスト4以上」というチームの目標と並ぶ大きなテーマだ。初めて降格した2002シーズン以降に限れば、アビスパがJ1でプレーしたのは3シーズンだけ。誤解を恐れずに言えば、アビスパはJ2の風土、常識にどっぷりつかっている。本当の意味でJ1のクラブになるためには、そこから抜け出して、クラブに所属する全員がJ1のクラブにふさわしい立ち居振る舞いが求められるからだ。

変化が求められているのはクラブだけではなく我々メディアも同様で、既にアビスパを取り巻くメディア環境は大きく変化している。分かりやすいところで言えば、報道陣の数が飛躍的に増えた。昨年の宮崎キャンプに取材に訪れたペン記者(新聞・雑誌等)は、私以外には1社が2日(半日×2)、TV局は3局だけだっだが、今年は地元メディアが勢ぞろい。その熱はJ2時代のメディアとは比較にならない。

そして新型コロナの影響もまたメディアに大きな変化を求めている。取材方法がzoomによる共同取材に限られるようになったことで、誰もが、どこにいても情報を共有できるようになった反面、非公開練習が増えたことも重なって現地にいる優位性が薄くなり、記者固有の情報を得ることが難しくなった。その中で「自分らしさ」をどう表現するのか。メディアとしての役割を果たすためには追求しなければいけない大きなテーマだ。

もちろん、変化が求められているのはクラブ、メディアに限ったことではない。川森社長は新年感謝の集いで「変化をキャッチする敏感さ」「物事にこだわりすぎない柔軟性」「常に前向きな問題意識を持つこと」を今シーズンの3つのテーマとして挙げたが、それは、アビスパに関わるすべての人たちにも求められることでもある。クラブの総力とは、アビスパとアビスパに関わるすべての人たちの力の総和。一人ひとりの変化はクラブが変わる大きな力になる。そして、その先にすべての人たちが望むアビスパの新しい未来がある。

[中倉一志=文・写真]
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