「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【武丸の目】昇格組同士の勝負を分けた「プレー強度の差」。自分たちの成長を示したアビスパが徳島に圧勝

2021明治安田生命J1リーグ 第27節
2021年8月29日(日)19:03キックオフ
会場:ベスト電器スタジアム/3,951人
結果:アビスパ福岡 3-0 徳島ヴォルティス
得点:[福岡]金森健志(53分)、ジョン マリ(87分、90+6分)

対するは昨シーズン勝点84と同じ、わずかに得失点の差でJ2優勝を譲った徳島。そんな昇格組同士の相手にも昨シーズン直接対決では2戦2勝、今シーズンもアウェイでは逆転勝ちしており、相性の良さが際立つ。この日もポゼッションにフォーカスを置き、ショートパスをつないでビルドアップをしてくる徳島に対して、アビスパは立ち上がりから躊躇なく、特長である連動したプレスを積極的に仕掛けていく。試合前の予想と同じ構図の中で、これまでの対戦と違ったのは「ボールを奪い切るプレー強度」と「ボールを奪われないプレー強度」だ。

これは明確なデータとして表れないと思う。ただ、どちらのチームに転ぶか分からないフィフティ・フィフティのボールはもちろん、相手有利な態勢に見えるボールもチャンスと見るやボールホルダーに対して激しくアタック。一人がダメならもう一人。徳島のパス回しをアビスパは連動したプレスで網にかけ、ことごとく奪い切る。その数はいざ知れずと感じるほどの多さだった。

奪い切るだけで終わらない。各選手が攻守の切り替えを素早くし、瞬く間に相手の嫌な位置へとポジショニング。フィジカルの強さも活かしながら、前へとボールを運ぶ。簡単にロストしない。対応に後手を踏んだ徳島は堪らず手を使ったファールを犯す。同じような形で徳島の鈴木徳真とカカに立て続けにイエローカードが出されたことは必然の流れ。前半のうちにゴールこそ奪えなかったが、“自分たちのゲーム”にした。

待望の先制点もプレー強度の高さが表れたシーンだった。時間は54分。相手陣深くまでボールを運び、マイボールにすると、中村駿のクロスのクリアは相手のボールになりかけたが、山岸祐也が落下時点を素早く予測。相手ディフェンスよりも先に体をぶつけながら飛び、ヘディングで触ってボールをつなぐ。それを受けた金森健志は素早く反転し、右足を振り抜いた。仕上げは途中出場のジョン マリ。同じく途中出場の重廣卓也のパスを受けると、持ち前のフィジカルの強さとテクニックの高さを見せつけ、2つのゴールをゲット。終わってみれば3-0の圧勝劇となった。

スコア以上に差をつけた。そんな印象が強いゲーム。それはアビスパの成長の証のように感じる。開幕戦、名古屋相手にこれでもかと言うほどのJ1での力の差を見せつけられた。あらゆる面でもっとやらないとJ1のチームには勝てない。そこから自分たちのやるべきことをブラさず、課題に対して実直に向き合った。そして、波いる強豪と対峙しながら着実に力をつけていった。それがプレー強度の高さに象徴された一戦だった。

[武丸善章=文/中倉一志=写真]

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