「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【武丸の目】J1リーグで初の宿敵鳥栖撃破!プレスのハマりを促進させた「アグレッシブさ」こそ最大の勝因

2021明治安田生命J1リーグ 第30節
2021年9月25日(土)19:04キックオフ
会場:ベスト電器スタジアム/4,996人
結果:アビスパ福岡 3-0 サガン鳥栖
得点:[福岡]フアンマ(41分)、山岸祐也(68分)、渡大生(90+4分)

サッカーは上手いチームが勝つのではない。強いチームが勝つ。どこかで耳にしたような言葉が、この試合をスタジアムで目にしながらハッと頭に浮かんだ。アビスパが絶対に負けたくない相手。ましてやここはホーム。そんな九州ダービーでより「強さ」を引き出したのは間違いなくチーム全員の「アグレッシブさ」だった。

今シーズン、鳥栖との対戦は5度目。互いに確固たるスタイルを確立しているため、手の内を知り尽くす両者の戦いは予想通りの構図となった。鳥栖は守備時の5-3-2のシステムからボールを持つと可変。局面で数的優位を作り出しながら低い位置から丁寧なビルドアップで「上手さ」を発揮してくる。アビスパも連動したプレスで対抗。メリハリをつけながらボールホルダーに対して球際で激しく行く。ここまではいつも通り。ただ、迷いなく行き切る。ボールを奪い切る。ここの強度、姿勢がより強かった。

それは41分の先制点の場面に凝縮されていたように感じる。始まりは鳥栖のGK朴一圭のゴールキックから。その長いボールを志知孝明がヘディングで跳ね返し、相手の背後の広大なスペースへ。そこに諦めずに走りこんだフアンマが相手ディフェンスを吹っ飛ばしゴールに強烈なシュートを突き刺した。

チームとしての狙いが発揮されたこの場面、筆者は鳥栖のGK朴一圭のゴールキックを長いボールにさせたことが大きなポイントだと思う。低い位置からビルドアップするスタイルを持つ鳥栖はゴールキックをショートパスから始めることが多く、この試合でも立ち上がりからそうだった。ただ、アビスパが前線からアグレッシブに連動してプレッシングを掛け続けたことによってパスのズレが多発。相手にプレッシャーを与え続けたからこそ先制点の場面、リスクを回避するために長いボールを選択させたように感じる。

そのプレッシャーを与えることができたのもチーム全員の「アグレッシブさ」が根底にあるからのように思う。「アグレッシブに戦うチームを作る」。これは長谷部監督が就任してからずっと言い続けている言葉だ。サッカーはチームスポーツである以上、一人だけが頑張るのではなく、チームとして頑張る必要がある。言葉で言うのは簡単なのだが、実際にそれを実現するのはサッカーに限らず、どのチームスポーツでも容易なことではない。ただ、アビスパはチームとして同じ絵を描くために全員がその姿勢で日々のトレーニングから臨む。ミスをしてもすぐさまチームメイトが声を掛けてサポートし、良いプレーをした時にはみんなで褒める。称え合う。アグレッシブさを促進させるそんな仕組み、チームマネジメントができているからこそ、ダービーという緊張感の高まる試合でもその力は発揮される。

そして、何よりもサポーターの存在も欠かせない。「この相手には負けられない」。この日のベスト電器スタジアムにはそんな想いが満ち溢れていた。それはいつも以上に途切れない手拍子とアグレッシブなプレーが起きるごとに大きくなる拍手で表現され、選手たちの背中を押し続けたことは間違いない。チームとサポーターが一体となって掴んだJ1での九州ダービー初勝利。勝点3以上のものを手にした勝利となった。

[武丸善章=文/中倉一志=写真]

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