「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【武丸の目】見えてきた2022年型アビスパの骨格。J1定着へ向けて求められる攻撃の「アップグレード」

1月8日、2022年シーズンのアビスパ福岡が始動した。「J1定着」を目指す今シーズン、集ったのはこの日時点で29名の選手。うち5名が新加入選手となった。ここまでのチーム編成から今シーズンの戦い方を推測してみたい。

新体制発表会で柳田伸明強化部長は今シーズンのチーム編成のテーマを「アップグレード」と口にした。確かにその通りだ。アグレッシブなサッカーを体現する今のアビスパで、昨シーズン、主力として活躍した選手がほぼ契約を更新し、自分たちのスタイルにぴったりで尚且つ攻撃・守備両面で戦術の幅を広げる選手が加入。昨シーズンの堅守をベースに攻撃の質と強度をより上げることが大きなテーマになる今シーズンのアビスパにとって、まさに「ピンポイント」な補強となった。

昨シーズン、失点数は37で総合順位を上回る7位を誇ったが、得点数は42のリーグ12位と総合順位を下回った。その「改善」のために白羽の矢が立ったのが、CFのルキアンであり、攻撃的なサイドプレーヤーの田中達也。ルキアンは昨シーズン、ジュビロ磐田で裏への抜け出しやクロスからのゴールなどでJ2得点王に輝き、決定力も申し分ない。浦和レッズから加入したアビスパ福岡U-15出身の田中達也はスピードがあり、突破力もある。アビスパのストロングであるサイド攻撃をより活性化してくれるはずだ。

もっと広い目で見るとモンテディオ山形から加入したCBの熊本雄太はビルドアップ能力にも定評があり、横浜FCから新加入のSBの前嶋洋太はクロスの質の高さも持っていることから、守備が最重要タスクである最終ラインの2選手にも攻撃に厚みを加えてくれることへの期待が伺い知れる。

開幕までに追加で選手が加入することは十分に考えられる。だが、新加入選手がいくら増えてもそれだけでは攻撃力を上げることはできない。問題は既存の選手とどう融合し、さらに攻撃の質と強度を上げられるかだ。

「能動的にボールを奪い、ボールを回すのではなく、ゴールに向かっていく」と長谷部茂利監督が話すように昨シーズンまでと基本的な考え方は変わらない。チーム全体で連動したプレスを仕掛け、奪ってから素早く攻守を切り替えることは必要不可欠であり、ポイントはその先にある。

ボールの保持率を高めることが目的ではなく、ゴールを奪うためにどう効果的にボールを動かすのか。チームの根底にある考えを基に状況判断の質を上げることが求められる。もちろん、ボールを奪ってからのファーストチョイスは直線的にゴールに向かうこと。すなわちカウンターを打つことだ。そのためには奪ってからの1本目のパスの質によりこだわらなければいけないし、カウンターが難しい場合は遅攻に移行しなければいけない。ここでも状況判断が求められる。低い位置からショートパスを使ってビルドアップするのか。はたまたロングボールを使うのか。相手の立ち位置を見て、自分たちの意図する形でボールを動かし、アタッキングサードに侵入する回数を増やしながらゴール前のフィニッシュの精度を高められるか。そこが今シーズンの大きな注目ポイントになるであろう。

特定の選手に依存するのではなく、チーム全体で攻守においてハードワークと連動性が求められるのが長谷部サッカー。だからこそ、一朝一夕でプレーの強度や質を上げることは容易ではないが、厳しいJ1リーグを勝ち抜くには乗り越えていかなければいけない壁であろう。開幕戦までは約1ヵ月。ここから雁ノ巣でのトレーニングや宮崎キャンプを経て、日々どうチームがアップグレードしていくのか楽しみに見ていきたい。

[武丸善章=取材・文/中倉一志=写真]

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ