西部謙司 フットボール・ラボ

これがイニエスタを活かす道。2006年のアルゼンチン代表と類似するヴィッセル神戸の古くて新しい戦い方とは?

一人ひとりのメンバーの強みを存分に発揮させ、弱点は組織で補うべしと説いたのはかのドラッカーだが、イニエスタ復帰後のヴィッセル神戸はまさにそのバランスをうまく見つけつつあるのかもしれない。イニエスタを活かし、エース古橋を活かす神戸の可変システムと戦い方にフォーカスする。

今やヴィッセル神戸は完全に古橋亨梧のチーム 

なんか久々にイニエスタを見たなーと思ったら、まだ今季5試合目なんですね。第17節のサガン鳥栖戦は90分間フル出場でした。

今季のヴィッセル神戸はアンドレス・イニエスタを負傷で欠いたままスタート、5月まではイニエスタなしでやってきました。今や古橋亨梧が完全にエースです。Jリーグが誇るスピードスターですね。日本代表にも入っています。A代表では浅野拓磨とスピード枠争いでしょうか。五輪代表含めると前田大然も競合相手ですね。ただ、テクニックや戦術眼では古橋が1枚上な気はします。

さて鳥栖戦、神戸は前後半で並びを変えています。前半はドウグラス、古橋の2トップでイニエスタがサイドハーフの左、郷家友太が右の4-4-2でした。後半は古橋が左、イニエスタがトップ下の4-2-3-1。

ただこれ、フォーメーションがもう1つあります。サンペールが菊池流帆とトーマス・フェルマーレンの間に下りてきてビルドアップをする形。可変システムなんですね。

神戸はイニエスタの弱点をどう補っているか? そして、山口蛍はなぜ代表に選ばれないのか? 

サンペールの“リベロ”は面白いと思いました。ビルドアップが落ち着くだけでなく、サンペールからトップの古橋にアメフトの“タッチダウンパス”みたいなロングパスが出ます。ポゼッション指向の神戸ですが、今季の武器はサンペール→古橋のライン。鳥栖戦の同点ゴールもこれでした。

1分で鳥栖に先行された後、28分に追いつきます。サンペールから裏へ走った古橋へ。GK朴一圭が飛び出して間一髪で先に触りますがクリアしきれず、こぼれ球をドウグラスが無人のゴールへ入れました。

サンペールが落ちて3バックになると、全体は3-5-2になってイニエスタは左のインサイドハーフになります。最も得意とする場所に入れるわけです。ただ、ずっと3-5-2ではなくて守備は主に4-4-2なので、イニエスタには左サイドの守備というタスクが生じます。ここは神戸の弱点になります。

(残り 1348文字/全文: 2323文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ