西部謙司 フットボール・ラボ

川崎Fはもうアンタッチャブルな存在ではない。絶対王者を真っ向から押し込んだ浦和レッズの「ロジック」

一時の勢いに陰りが見えるとはいえ、川崎フロンターレを真っ向から押し込んだ浦和は見事だった。一見「不運」に見える展開にも浦和レッズの理にかなった戦術と用兵がある。そのロジックを読み解いていく。

劇的なゲームの3つのポイント 

ルヴァンカップ準々決勝、浦和レッズが川崎フロンターレを下してベスト4進出を果たしています。第1戦が1-1、第2戦が3-3、合計4-4というがっぷり四つですが、アウェイゴールで浦和が勝ち抜けています。

第2戦はスリリングな展開。8分に江坂任のゴールで浦和が先制、これで最低2点が必要になった川崎が前半30分すぎに4-3-3から4-4-2にシステムを変えます。戦術的にはこれが第一のポイントでした。そして39分に川崎らしいワンタッチパスの連続からレアンドロ・ダミアンが決めて1-1で折り返します。

後半に入って川崎は77分、83分とCKから山村和也、ジョアン・シミッチがヘディングでゲットして3-1。これで勝負ありかと思いました。

ところが、ここから浦和が追い上げます、87分にキャスパー・ユンカーのゴールで1点差にすると、終盤の放り込みから得たCKから交代出場の槙野智章が値千金の同点ゴール。

戦術的な第二のポイントは80分の浦和の3枚代えですね。この後に2点差に開いていているのですが、交代出場の西大伍のパスからユンカーが2点目を決めています。第三は槙野のFW起用。これもズバリでした。

W杯優勝したブラジル代表のペレとトスタンを彷彿させる浦和のWエース 

戦術的なポイントの説明の前に、江坂の先制ゴールについて。岩波拓也のロングパスを山村と橘田健人の間に走り込んだ江坂が胸でコントロール、左側から寄せてくる橘田をブロックしつつ1回コントロールしてからシュートを決めています。

この一連の江坂の胸トラップ→2タッチ目でボールを足下に置いて橘田をブロック→シュートという動作はまさに流れるような滑らかさでした。やはり只者ではありません。この江坂と小泉佳穂がダブル偽9番のような関係だったのが面白かったですね。

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